鉄道輸出の誤算


“日本の技術の粋を集めた鉄道車両。国内需要は鈍り、車両メーカーは海外展開に力を入れる。だが最近は苦戦が目立つ。”

朝日新聞「経済+」の記事だ。
鉄道輸出の誤算:上 「あうんの呼吸」日本流通用せず
鉄道輸出の誤算:下 車両も保守も、総合力に課題

世界の列車メーカのシェアは以下のようになっている。
1位:中国中車(中国)
2位:シーメンス(ドイツ)
3位:ボンバルディア(カナダ)
4位:アルストム(フランス)
5位:ゼネラル・エレクトリック(アメリカ)
6位:日立製作所(日本)
7位:現代ロテム(韓国)
8位:シュタッドラー・レール(スイス)
9位:トランスマッシュ(ロシア)
10位:CAF(スペイン)
11位:川崎重工業(日本)

中国は中国国内のシェアが大きく、輸出は10%程度のようだ。

日本は国内市場が限られており、事業を維持・拡大するためには海外市場に出なければならないが、苦戦が続いているようだ。

川崎重工業は採算悪化に苦しんでおり、今後米国で取引の経験のある顧客向けに集中する。
日本車両製造は昨年、米国工場を閉鎖した。赤字の要因となっていた米国案件は独大手シーメンスが引き継いだ。
日立製作所は欧州での受注を広げてきた。今後は米国事業も強化する。

日本勢が振るわないのは、海外顧客との仕様の取り決めに遺漏がある。海外の仕入先、工事業者との意思疎通が不十分。などが大きな原因のようだ。

日本の製造業の強みは「すり合わせ」であると言われてきた。設計と製造、製造部門内あるいは顧客、仕入先、工事業者などとの協業が相互の溝を埋めるように出来ていた。ところが海外に出ると、言語的な障壁以上に「阿吽の呼吸」とも言える「すり合わせ」がうまくゆかず、手戻りによるコストロスや納期の遅延が発生し収益性が悪化しているようだ。

日本という国は「均一性」で調和するように出来ている。
「アレをいつもの様に」というだけで話がついてしまう。

しかし世界は「多様性」の中で調和しなければならない。
何ページもの詳細な仕様書で顧客の要求を確認しなければならない。
詳細な作業指示書がなければ、製造品質は保証できない。

残念ながら世界のやり方が標準であり、日本だけが特殊だ。
日本国内の市場は、どんどん小さくなっていく。その環境で成長するためには世界に出るしかない。日本の「特殊能力」を捨てることはないと思うが、世界標準で戦えるようにならなければならない。


このコラムは、2019年7月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第856号に掲載した記事です。

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