ホンダが29日発表した2015年4~12月期の連結決算(国際会計基準)は、営業利益が前年同期比3%減の5672億円だった。同日の会見で竹内弘平取締役常務執行役員は「本業は改善したがタカタ(のリコール費用)が全て消してしまった」と述べた。主なやり取りは以下の通り。
(日本経済新聞電子版より)
ホンダの役員の発言「本業の改善、タカタが全て消した」をあなたはどうお感じになるだろうか?
私はホンダファンであり、今まで所有して来た車は1台を除いて全てホンダ車だ。先週もホンダのF1復帰にエールを送るコラムを書いたばかりだ。しかし日経新聞に取り上げられた竹内氏のコメントはいただけない。経営者として、業績の善し悪しを「他責」にすべきではない。他責にすれば単なる言い訳だ。
リコール費用がなければ増益だったはずだ、などと言っても何も生まれない。
リコールの責任はあくまでも自分たちにあるはずだ。直接的にはエアバックの不良であっても、それを採用したのは自分たちであり、顧客に販売したのも自分たちだ。
タカタは、異業種から自動車部品に参入し、自社の従来技術を使ってシートベルトを生産していた。ホンダがエアバックの開発を依頼したと聞いている。
ホンダには二重の意味で「自責」が有ったはずだ。
一方でタカタにも当然「自責」がある。
エアバックの開発技術、信頼性技術が不足していたことは否めない。
一番大きな責任は、経営判断だろう。
元々織物メーカとして創業している。織物の技術(生産設備も転用できた?)を使ってシートベルトを生産。自動車業界に参入。同じ自動車業界向けにチャイルドシートなどの新商品を投入。更にエアバックを投入。この時点で新規技術(エアバックの起爆)を開発している。
同じ技術で新規市場を開拓し、開拓した市場に製品のラインアップを増やす、その後同じ市場に対し新規技術で新製品を投入、と言う順序で定石通りに規模を大きくして来た様に見える。
会社を大きくしない「年輪経営」で成功している伊那食品工業の様な例もあるが、資本主義社会のルールは規模を追求し業績を上げることだろう。規模の拡大を急ぐあまり、新規技術の検証がおろそかになっていたのではないだろうか?経営者の判断と決断の責任は重い。
「リストラなしの『年輪経営』」塚越寛著
このコラムは、2016年2月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第461号に掲載した記事に加筆修正しました。
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