エアバック回収


 以前このメルマガで、タカタのエアバック回収問題を論じた事がある。

ホンダの竹内取締役「本業の改善、タカタが全て消した」
タカタ、納入価格の引き下げ見送り要請 車各社に

問題は一向に収束の気配がなく、ますますエスカレートしている様に見える。
メルマガには、タカタに対して厳しめのコメントを書いたが、いろいろな力学が働いているようで、タカタに対して気の毒な印象を持っている。

通常リコール責任は、完成品メーカにあるはずだ。そのためリコールに関してタカタは積極的な発言を控えて来た。これが米国消費者に「消極的な態度」と言う印象を与えたようだ。それが米国自動車業界(もしくはそれに肩入れしている人々)にとって絶好の攻撃対象になってしまったのではないだろうか。
米国にとって自国が自動車産業を生み出し、育てたと言う自負があるだろう。それが東洋の小国に取って代わられた、と言う忸怩たる思いがあるようだ。

巨額にふくれあがったリコール費用や、制裁金でタカタの経営が危ういと聞いている。
自動車部品から撤退して、本業に戻ると言う選択肢はもうないだろう。自動車部品に参入して、構えが大きくなってしまった。撤退は即倒産廃業の意味を持っている。

今更だが、このような事態に至らないために打つ手がなかったのか考えてみた。
タカタは後戻りできないかもしれないが、同じリスクを冒さないために他業界の経営者も考える必要があると考えている。

同じ自動車部品業界のBOSCH社は、顧客に提供する部品に関して「搭載要件書」を提示し、想定外の使用方法による事故から、自己防衛しているそうだ。

これは購入部品だけではなく、設計の再利用を目指す「モジュール化」にも必要な事だ。適用する製品と、設計モジュールのインターフェイスをきちんと定義しておかねば、設計不適合が発生する。インターフェイスとは、取り付け寸法だけの事ではない、環境条件、適用範囲など全てを含む。

以前システム製品の設計をしていた頃、あるメーカのCRTディスプレイを採用した事がある。採用が決定し、サンプル機の提供を受けた時に、先方の品証エンジニアが来社した。当方でCRTディスプレイを組み込む最終製品を見せてくれと要求された。まだ市場リリースしていない製品だ。即諾する訳にはいかない。理由を聞くと、想定外の使用(実装)がされていないか品質保証の立場で確認させてほしい、と言う事だった。
メーカ側の品質保証部門としては、当然の理由と判断し関連部署を説得し、要求に応えた。

品証エンジニアは、CRTディスプレイが組み込まれた状態を確認し、CRTのアノードキャップの端から25mm以内に金属の機構部品があるから、25mm以上の距離を確保してくれと要求して来た。

CRTのアノード電極は25kVの電圧が印火されており、空間距離を25mm開ける様にと言う要求だ。アノード電極には、半径25mm以上の絶縁キャップがついており、過剰な要求だと感じたが、メーカの品質保証の姿勢に敬意を評し、要求通り設計変更に応じた。

当然機構設計者は快諾する訳はない。既に設計は終わっているのだ。従って機構部品に追加工をする事になり、強度計算をやり直し、コストもあがる。そこをなんとか、と説得した(笑)

この時、先方の品証エンジニアから「最終製品の品質保証を確かにしたい」と言う姿勢を学んだ。後に自分自身が品質保証部門に異動した時に、基本理念となった。

セットメーカと部品メーカは、利益対立する存在ではない。顧客の顧客まで品質保証する、運命共同体だ。
セットメーカは、部品メーカを守る気概を持たねばならない。
部品メーカは、セットメーカを支える気概を持たねばならない。


このコラムは、2015年11月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第449号に掲載した記事に加筆しました。

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