エアバッグの品質問題を抱えるタカタが、製品納入先であるホンダ、トヨタ自動車などの完成車メーカーに価格引き下げを見送るよう要請したことが分かった。年間で100億円規模の収益改善効果を見込み、リコール(回収・無償
修理)拡大による損失を一部穴埋めできるとみている。各社が応じれば取引先による本格的なタカタ支援の第1弾となる。(日本経済新聞電子版より)
リコールの対象となっているタカタのエアバッグは、作動時に異常に強い爆発が起きることで内部の金属片が飛散。運転手らを死傷させる事故が発生した。
この問題が、ここまで長期化し、リコール対象が拡大している原因は、異常爆発が起きる原因を特定で来ていないからだ。
ガス発生剤の「硝酸アンモニウム」が湿気に弱いようだ、と言う曖昧な推測が提示されているだけで、真因が分かっていない。少なくとも公表されていない。
硝酸アンモニウム+湿気が原因と推定したのならば、それを確認する実証実験をすれば良いはずだ。既に実証実験が済んでおり、硝酸アンモニウムの吸湿が原因ではないと特定出来ているのであれば、実験結果とともに公表すべきだ。
それがないから、リコール交換品にまで不安が発生する。
原因究明に一生懸命頑張っておられるであろうタカタのエンジニアの方々には敬意を表したい。しかし失礼を承知で、あえてネガティブな想像を申し上げる。これはタカタを非難するのが目的ではなく、貴重な経験として共有したいと考えている。製造業に携わっている方々も同様なリスクを背負っているはずだ。
第一:真実を隠さないこと。
リコール問題が発生し、真実を隠し通せたことはない。異常爆発のメカニズムを判明したが、これを公表すると更に自社に取って不利益となる、などの理由で秘匿しても絶対にうまくいかない。一時的に隠せても、必ずその報いは来る。
第二:全社を挙げて自主的に関わること。
タカタは異業種からシートベルトで自動車部品業界に参入している。シートベルトは自社技術が応用出来る商品だ。しかしエアバックは、新規技術が必要となる。新聞記事によると、完成車メーカからの強い要請が有り、自動車部品業界に参入したそうだ。これをイクスキューズとしてはならない。商品化したからには、自社に責任がある。購入原材料に関しても同じだ。
第三:新規、珍奇は慎重に評価すること。
ガス発生剤に硝酸アンモニウムを使っている大手エアバッグメーカーはタカタだけという。他社が使っていない優れた物を採用すれば、それが優位性を確保する要因になる。しかし同時に技術的な問題、調達性の問題が発生するリスクが存在していることを認識しなければならない。
このコラムは、2015年7月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第432号に掲載した記事です。
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