続・人為ミスの再発防止


 先週取り上げ「ぴーかんテレビ」の不適切テロップ問題に関する検証番組「検証 ぴーかんテレビ不適切放送~なぜ私たちは間違いを犯したのか~」を東海テレビのホームページで見ることが出来た。

番組では、ミス発生の経緯が明らかにされていた。

直接原因は、タイムキーパがテロップ送出機の操作ミスをし、オンエア画面に不適切テロップを送出してしまったことだ。これは人為ミスの内の「行動ミス」に分類される。

流出原因は、仮テロップの不適切さに気が付いたアシスタントプロデューサの指示がテロップ製作者に対する修正指示が適切に伝わっていなかった。これは人為ミスの内の「認識ミス」に分類される。

また副調整室の誰もが、他の作業に気を取られ、オンエア画面に気が付いていなかったこと。最後の砦の主調整室では、次に送出するCMの確認作業に気を取られ、オンエア画面から目を離したことであろう。

そして問題を発生させてしまった遠因には、職員の放送倫理観、職業人意識の欠落を挙げていた。その誘因として、番組制作のコストダウンによる職員への負担の大さ、現場と経営層の乖離、利益優先の経営方針にも言及していた。

再発防止に関して、緊急対策と共に「再生委員会」を設け恒久対策を実施する、という内容となっていた。

今回の番組では、具体的な内容には触れていないが、今後再生委員会の活動により具体的な是正対策が明らかになってゆくことを期待する。

例えば倫理問題に関しては、社員、製作外注の職員全員に放送倫理研修を毎年実施している。放送倫理ハンドブックを配布してた。それでも不十分だったということだ。何が不十分だったかをきちんと分析し、具体的に研修の内容、やり方を変えなければならない。

放送倫理というものは、毎年変わるものではない。同じ内容を毎年聞かされるだけでは、効果はないだろう。受講者は何かと理由をつけ研修をサボる。会社側もそれを容認する体質が出来上がっていたのではなかろうか?知識を与える研修ではなく、放送倫理に沿った行動が取れるように、行動変容を起こす研修でなくてはならない。

今回の番組では、人為ミスに対する再発防止は全く語られていなかった。
今回の問題は、報道人としてあるまじき行為がまず問われており、人為ミスはさほど重要な問題ではないのかもしれない。

しかしモノ造りをしている我々にとって、人為ミス防止は重要な課題だ。
このコラムでは、ここを少し掘り下げてみたい。

タイムキーパの行動ミスについては、なぜ行動ミスをしたのか更に分析をする。テロップ送出機は2台あり、1台はオンエア画面、1台はスタジオモニターに送出するようになっている。左がオンエア、右がスタジオモニターとなっているだけで、一目見て区別がつかない。オンエアテロップであることが一目で分かるようにすべきだ。

テロップ制作担当者が、APの指示を認識ミスをしたのは、指示が不確かであったからだ。日本のように「あうん」の呼吸で仕事が成立してしまう組織では、軽視されがちだ。特に我々のように中国で仕事をしている者にとっては、軽視してはならない問題だ。

指示は具体的に何時までに、どう直す、ということと、直したら報告をすることを含めておかねばならない。

直したら報告、というのはアシスタントプロデューサの指示すれば、直してくれるだろうという「判断ミス」を補うものとなる。これは同時に、アシスタントプロデューサの報告を受けながら、最終確認をしなかったプロデューサにも当てはまる。

副調整室の誰もが気が付かずに、オンエアが流出した原因を慣れによる油断と片つけてしまうと、対策が難しくなる。
オンエア画面は副調整室の中央に一回り大きなモニターに出ている。これだけではなく、音声担当、スイッチャー、ディレクター、タイムキーパなど全員の手元に小型モニターを準備し、どんな姿勢をとっても目に入っているようにする。
専任の人間を置いて常時監視する、というのは良い方法ではない。

主調整室の業務は、オンエア画面の監視とCM送出の確認だ。
オンエア画面の監視は、人間が張り付く仕事だ。従ってこの作業に別の仕事を入れることが間違っている。CM内容の確認を機械化もしくは外段取り化する必要がある。

コストダウンにより、職員への負荷が多くかかっているというのは言い訳に過ぎない。本番中にやらねばならないこと(内段取り)、本番時間以外でもできること(外段取り)にきちんと分けて、本番時間に余裕のある仕事が出来るようにしなければならない。

コストダウンのために頑張れ、というのは本当のコストダウンではない。

私の推測と違い、当選者テロップは番組開始前に準備できなかったようだ。(たぶん番組中にプレゼント告知をし、番組中に応募を受け付ける形式だろう)しかしその他に、番組開始前にできることはいくらでもあるはずだ。例えば、収録済みビデオをオンエア中に、その後のスタジオ放送のリハーサルをしていたようだが、番組開始前に済ませることができるはずだ。

更に職場を、番組単位の大部屋制とする。
部門毎に別の部屋で仕事をするのではなく、番組スタッフが大部屋に集まって仕事をする。テロップ製作者も自分のデスクではなく、番組の大部屋で仕事をする。こうすることにより、部門間のコミュニケーション不足を解消することができるはずだ。

製造現場で言えば、機能別ショップフロア配置を止めて、ラインフローに合わせた配置にするのと同じだ。


このコラムは、2011年9月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第221号に掲載した記事です。

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