データ改竄


 素材企業のデータ改竄問題が次々と明るみに出て来た。自動車業界の完成車検査問題が発端の様に思うが、こちらは別問題だ。法規に違反する事は問題だが、問題の本質は無意味な検査を継続させている監督官庁の既得権保護に有る様に思える。

データ改竄問題は素材メーカの「おごり」と言ってしまうと言い過ぎかも知れないが、顧客企業に対する欺瞞・不遜と言うそしりは免れないだろう。

顧客設計者は、材料メーカから提示された仕様に基づき一定の余裕度を加味し、設計する。それが顧客要求仕様として購入契約が成立する。メーカの都合で顧客要求仕様を満足出来ない場合「特採願い」を提出し、顧客設計者の検証を経て、合意の上で出荷するのが常道であるべきだ。
通常「特採」は一度だけ許される。「特採」出来るのであれば設計変更せよ、と言う考え方が一般的だと思う。

データ改竄が恒常化していたのは、材料メーカ側の質的生産能力が不足していたためと考えられる。その場合は特採ではなく「仕様変更願い」を提出し、顧客設計者の設計再検証を経て、仕様変更を合意するのが手順だ。

川中産業である加工メーカは、材料メーカの一方的な値上げ、仕様変更要求に対して唯々諾々と従うしかない。そのような力関係を利用して、データ改竄が横行している様に思えてならない。

日本の素材メーカの力は、世界的に一定の地位を得ていると考えている。それは新素材の開発、素材の高品質に支えられている。日本のモノ造りが労務費の高騰で競争力を失っている中で、設備集約型の素材産業が日本のモノ造りを支えて行かなければならない。大手の日本素材メーカが世界市場から信頼を失う事になると、日本の製造業全体の問題になりかねない。

仕様逸脱を誤摩化すのではなく、仕様に適合する様生産能力を改善する事が本来の姿だ。


このコラムは、2017年12月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第598号に掲載した記事です。

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