先週の記事「グーグルでないと作れない日本語入力ツールを作った」に読者様からコメントをいただいた。
※T様のコメント
今の日本では、いい品質で安いものでなければ売れないという、悪い風潮が浸透しています。そこにはコストも何もなく、みんな「安さ」にだけ目が行き、われわれは今後何を、どうしたらいいのか、戸惑っています。新商品の研究開発には、かなりの研究期間と開発費用がかかります。それら費用を捻出するだけの財源は、私ども中小企業にはありません。
私の記事が舌足らずのところもあり、多くの方がT様と同じ思いを持たれたのではないだろうか。
品質は良くて当たり前、安くなければ売れない、という商品を「当たり前品質」商品といっている。すでにモノがあふれている市場では、「当たり前品質」の商品を量産すれば、貧乏も量産することになる。
「魅力的品質」の製品をお客様の需要に合わせて生産すれば、コスト競争に巻き込まれずに済むはずだ。
当然商品開発には莫大なコストがかかる。
しかし工場のR&Dというのは商品開発とは違うものと考えている。
顧客の価値観を理解してそこを強化するのが工場のR&Dだ。
例えば顧客が、不良が少ないという品質に価値観を持っていれば、徹底的に不良を減らす。もちろん検査コストをかけて不良を除去するという意味ではない。工程で品質を造りこむ上流改善だ。
フレキシブルな納入体制に価値観を持っていれば、徹底的にリードタイムを短くする。
鍋屋バイテックという特殊ネジメーカは「すしバーコンセプト」を実現し、注文生産でネジ1本から翌日納入を可能とした。この様な非常識なリードタイムを実現してしまえば、顧客はコストのことで文句は言わなくなるだろう。
ある電気製品の成型工場では、廃棄処分済の金型を材料として再利用し、金型エンジニアに爪楊枝入れとか、作業員が腰を下ろす小さな椅子を作らせている。
元々金型のメンテナンスしかできなかったエンジニアに対し、金型設計の技能訓練になる。
こういう活動を通して工場の技術力、生産効率、品質を上げてゆくことが工場のR&Dだと考えている。
身近なところにたくさんテーマはあるはずだ。
このコラムは、2009年12月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第131号に掲載した記事です。
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