失敗を推奨


 メルマガ609号で製造業は創造業にシフトにするのではないだろうか、と書いた。その後たまたまテレビ東京・カンブリア宮殿のアーカイブにバルミューダの番組があるのを発見した。

バルミューダ・寺尾玄社長は自社のグリーンファンを、3万円の扇風機ではなく「3万円でひと夏の涼しさを買っていただく」と言っている。モノではなくコト(体験)を提供する。これが創造業だと思う。

寺尾社長は「開発とは予定通りいかないのが予定通り」とも言っている。
新しいモノ、世の中にないモノを開発しているのだ。当然失敗はつきものだ。失敗を恐れていれば、凡庸なモノしか開発できない。番組ではバルミューダの朝礼風景を紹介していた。寺尾社長はどんどん失敗をせよ、と言っている。

失敗をしない最善の方法は、何もしない事だ。挑戦的な失敗を繰り返す事によってしか革新は生まれない。失敗を叱責するのではなくどんどん失敗せよと推奨する。失敗した当事者は新たな方法を考え挑戦を続ける。失敗と挑戦の繰り返しによって成長する。

多くの大企業では、失敗した者に「出世」という梯子が外される。失敗しないように仕事をする、失敗は他人に押し付ける、そんな企業文化しか生まれない。

失敗を推奨すると言っても、凡庸な失敗を繰り返す者を賞賛せよ、という意味ではない。挑戦的な失敗を許容し推奨するという意味だ。

QCC活動を指導しているある企業では、資材の入出庫を担当しているサークルが入出庫作業者3名を2名に削減する、というテーマに挑戦している。しかしよく話を聞いてみると、入出庫作業者は全部で40名いる。その中の特定部品を担当している3名の作業効率を改善したいというテーマだ。初めてQCC活動に取り組むメンバーには、上手くいくかどうか不安もある。楽なテーマにしたいのだろう。

寺尾社長は「楽なことは楽しくない。楽しいことは楽ではない」と言っている。3名を2名に削減するより、40名を30名に削減する方が楽ではないが楽しいはずだ。QCC活動は今回で終わりではない。まずは3名を2名に削減することにより改善手法を覚えてもらい、彼らの耳元で「挑戦は楽しいぞ」と囁き続け次の挑戦に取り組む勇気を持ってもらおうと考えている。


このコラムは、2018年1月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第610号に掲載した記事です。

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