求道心


 いささか大仰なタイトルになってしまった。
中国人経営者を見ていると、「即効性のあるモノ」をありがたがる傾向があるように思える。

彼らと話をしていると、良く「系統」(システム)という言葉が出てくる。
ここでいう系統は、MRPのようなコンピュータシステムだけではない、会社の仕事のやり方などの仕組みなどもさす。

現場リーダの管理能力が足りない。何か良い系統、工具(ツール)はないか?

ISOのマニュアルもどこかから貰って来る、または買って来る。
随分昔の話だが、S社のグリーンパートナー監査を控えた委託先は、既にグリーンパートナー監査に合格している会社から、関連規定一式を手に入れた。
同時に指導していたもう一社は、工場の前の歩道の掃除から始めた。

手っ取り早く問題を解決できれば、効率が良いのは確かだ。しかし即効性のあるモノは、失効性も早い。それは苦労して築き上げたものではないからだ。

「真理」というものは、空の彼方または海の深遠のどこかにあるものだ。真理とは手に入れられるものではなく、手に入れようとする努力に価値があるモノだ。

永遠に手に入らないかもしれないモノを追い求める。その努力が本物の成長と成功を手に入れる過程だ。

どこかから手に入れた社内規定は、「お飾り」以上の役割を果たさない。苦労して作り上げた社内規定は、ココロを込めて運用されるだろう。結局成果を上げられるのは、効率を求めるのではなく「道を究める」努力だ。

日本には、元々道を究める求道心があった。職人は一生掛けて、匠の技を磨く。これは死ぬまで続く求道の道だ。

人材育成も、品質改善も終わりのない求道だと思うのだがいかがだろうか。


このコラムは、2011年8月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第219号に掲載した記事です。

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