台湾脱線事故の車両に設計ミス 製造元の日本企業が発表


 台湾東部の宜蘭県で先月起きた脱線事故で、事故を起こした「プユマ号」をつくった日本車両製造(名古屋市)は1日、車両の安全装置「自動列車防護装置」に設計ミスがあったと発表した。本来は運転士が装置を切ると、その情報が運行を管理する指令員に自動で伝わるはずだったが設計ミスが原因で伝わらないようになっていたという。

(以下略)

全文

(朝日新聞デジタルより)

 10月21日に発生した脱線事故の映像を何度も見た。福知山線の脱線事故を思い起こされた方も多かったのではなかろうか。

福知山線脱線事故

ウィキペディアにはすでに本件の情報が上がっている。
(タイトルは変更提案が出ているらしいので、URLは変更になる可能性あり)

新聞の報道やウィキペディアの記事を参考にすると、事故列車は度々ブレーキがかかり予定時刻より運行が遅れていた。ブレーキがかかる原因は不明だが、自動列車防護装置 (ATP) をオフにすることによりブレーキがかかる不具合は解消された。しかし速度オーバでも自動ブレーキは効かない状態となり、速度オーバーで事故現場のカーブを曲がりきれず脱線した。

本来ATPを解除すると運行指令で把握できる仕様になっていた。しかし朝日新聞の報道では、日本車両製造の設計ミスにより通知機能が実装されていなかった。
しかしウィキペディアの記事には、2010年に全列車に通知機能が取り付けられていたが、実装段階で指令員に使い勝手の悪さを指摘され、当時入札中だったプユマ号のTEMU2000型には搭載しなかった。という記述がある。

ATPを切ってでも運行を継続していたことについては、故障が常態化していた。
遅延時には指令から運転手に対しATPを切ることも含めた回復運転を図るよう日常的に要請されていた、という元運転手の証言があるそうだ。

いずれにせよ、本事故の根本原因はATPオフのまま運転をしたことではない。しばしばATPが(誤動作により?)作動しブレーキがかかったことだ。故障原因を特定しないまま、対処療法としてATPをオフにしたため速度オーバでカーブに突入してしまった。

その上、台湾鉄道の組織文化が誘因になったと思われる。
台湾鉄道では、2018年より列車の遅延が30分以上となった場合運賃全額を払い戻すことになっている。(日本の場合は2時間以上遅延で特急・急行料金のみ返却)

また運転手は、乗務時間と運行距離は点数として累積され、一定点数に達すると報奨金が与えられるが、一度の遅延で点数はリセットされる、という評価をうける。

安全運転より定刻運転を優先する組織文化が今回の事故誘因となったのではなかろうか?

組織事故


このコラムは、2018年11月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第742号に掲載したコラムです。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】