早い。高い。美味い。


 普通は「早い。安い。美味い。」という所だ。
飲食店が繁盛するコツと考えられていた。しかし本当にそうだろうか?

業態によっては「遅い。高い。美味い。」の方が繁盛する。
料亭などを考えれば、ご理解いただけるだろう。徹底的に材料や加工技術にこだわり、美味いものを出す。客の方もゆっくりと料理を味わいたいから、「早い」はセールスポイントにはならない。

売り上げ額より、利益額を考えれば、たくさんのお客様に来ていただく必要はない。当然広告費も必要なくなる。

こう言う話は、飲食業だけではないと思う。
我々製造業でも「早い。高い。美味い。」をUSP(Unique Selling Proposition)として成功している企業はある。圧倒的な小回りの良さを実現してしまえば、「安い」を要求される事はない。

例えば、部品を注文したら翌日必要な数量だけ納品される。

お客様に部品を買っていただくと言う発想ではなく、お客様の生産をサポートするサービスを提供していると言う発想に立てば、必要なモノを必要な数だけ必要な時に納入する、と言うサービスになるはずだ。

こう言う小回りの利く部品メーカがあれば、値段で比較され淘汰される事はないだろう。

パナソニックが3Dプリンターを使って、樹脂成型品の金型を作り、家電製品の量産に使うそうだ。

家電製品は既に飽和状態であり、同じ製品が大量に売れる事はないだろう。こう言う成熟製品は、機能競争の次は、デザインなどの嗜好生の方にシフトして行く。つまり多品種少量の方向に行くはずだ。

新製品投入時に、金型製作の期間を短く出来るのは、競争優位の要因になる。また金型が安くなれば、複数のデザインをシリーズ化出来る。

同じ製品を大量に生産するために必要だった金型の寿命は、意味が無くなる。

高くても買っていただけるための方法の一つが、業界で非常識な小回りを達成する事だ。
他にも製品を高く買っていただける方法を、真剣に考えてみよう。


このコラムは、2013年6月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第315号に掲載した記事に加筆しました。

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