連合モノ造り


 一つの製品を生産するのに、素材を購入して全て一から作るというのは困難であり、合理的ではない。
例えば電源装置を生産するために、プリント基板、プラスチックケース、金属シールド版、金属放熱器、トランス、ワイヤハーネス、主銘版の印刷、梱包材料などを全て素材から加工すれば、高い付加価値を付けられる。しかしそれに必要な生産設備や人員を考えれば賢明な選択とはいえない。

そこでそれぞれの製品の生産に特化した工場が、水平分業してひとつの製品を完成させることになる。しかし「水平」とはいっているが、往々にしてパワーバランスで上下関係のようなものが出来上がってしまう事が多い。

以前電源装置を生産していたときに、自虐的な戯言として「士農工商電源屋、その下を行くトランス屋」などと言っていた。もちろんこれは戯言であり本心ではない。時としてパワーバランスが崩れると、トランス屋の言い値でトランスを購入しなければ供給を止められることもある。

しかしこのような構造はいかにもいびつである。
水平分業している工場の目的は同じはずである。協力して一つの製品を完成させ顧客、更にその先のエンドユーザの満足を得て利益を上げるのが目的だ。そのような共通目的によって結びついた理想的なモノ造りを連合モノ造りと勝手な名前を付けてみた。

元請が下請けの利益を圧迫して利益を上げるのではなく、それぞれに協力研鑽して利益が出る体質を作り上げる。
今お手伝いしている新製品立ち上げの仕事がまさにそういう仕事だ。部品を生産する工場に出かけると、「顧客監査」という姿勢で構えられてしまう。そうではなくお互いの利益を得るために来ているということから説明することになる。

元請がリーダ的存在となり、協力工場の改善指導ができればお互いにwin-winの協力関係が強くなる。

新規プロジェクトの立ち上げの時は、量産開始まで頻繁にこうした活動を行うことになる。

通常時も協力工場が集まり異業種改善活動をすれば、連合モノ造りの力をつけwin-win関係を深める事が出来るはずだ。


このコラムは、2009年5月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第98号に掲載した記事に加筆しました。

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