8年前の若者は今?


 先週の編集後記に、昔一緒に仕事をした中国人が8年ぶりに電話をくれたと書いた。早速読者様からメールをいただいた。

※G様のメッセージ
 編集後記の話をもう少し聞きたかった。
 8年ぶりの彼がどう変わっていたのでしょうか。
 それとも変わっていなかったのでしょうか。

お言葉に甘えて、昔話をば。
彼は、生産委託先の工場で品質保証部のQCエンジニアとして働いてた。少し英語が話たので、我々日本の顧客が出張に来ると、サポートしてくれていた。

利発そうな面構えをしていたので、現場でいろいろ教えてみたら飲み込みが早い。そんなことがあり、出張のたびに何かと目をかけていた。

製品立ち上げの時に、本社から来た変更指示のFAXを彼に渡し、コピーを取って生産技術のリーダに渡すよう指示をした。
しかし彼は、指示を理解できなかったようで、コピーを取らずにFAX原紙を生産技術に渡してしまった。

変更指示として文件中心に渡し正式に配付してもらうため、FAXを持って来るように言うと、一言「無い」という。
無いはずがないだろう、渡したじゃないかと何度も確認して、コピーを取らずに原紙を渡してしまったことが漸く判明。じゃすぐ生産技に行って取り返して来いと言っても、何やらゴチャゴチャ言って腰を上げようとしない。

そこまでのやり取りで既にうんざりしていた私は、大きな声ですぐ取りに行って来いと叱ってしまった。
驚いたことに、彼は泣き出してしまった。
父親にも大きな声を出されたことが無かったそうだ。

そのころはまだ一人っ子世代(80后)が、とやかく言われる前だ。彼は70年代生まれのはずだが、兄弟はいなかった。きっと大事に育てられたのだろう。

その後フォックスコンに転職して行った。
2、3年間連絡もなくなったが、8年前突然電話がかかってきた。日本に出張に来ていると言う。会って見ると、日本の顧客に納品している製品の品質が悪く、不良品の選別に来ているところだった。

その日は自宅に招いて、夕食を食べさせた。
ずっと気になっていたことを聞いてみた。
「なぜ前の会社を辞めたの?」
「あの会社には夢想が無かった」
私は、彼のこの言葉を聞くまでは中国の若者は給与が少しでも良いところがあれば、すぐに転職して行くと思い込んでいた。
仕事を通して自らの夢を実現したい。自分のキャリアアップのために転職をする。そういう中国人がいることに気付かせてくれた。

そしてそういう目で周りを見てみると、実は殆どの若者がそういう思いで仕事に取り組んでいるのだと気が付いた。

別に特別かわいがったわけでもない。一緒に仕事をしたのは1年足らずだ。それでも私を覚えていて電話をくれた。嬉しくないはずは無い。

まだG様の質問に答えていないが、実は電話で話をしただけで、まだ会っていない。8年でどう変わっているかは、まだしばらくお預けだ。
いずれにせよ、彼のおかげで私の中国人の若者に対する見方・接し方が変わったのは事実だ。


このコラムは、2010年11月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第177号に掲載した記事に加筆しました。

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