知行一致


 先週日本で録画のまとめ見をしたNHKテレビ「仕事学のすすめ」から気付きをシェアしたい。

建設機械のコマツ会長・坂根正弘氏のダントツ経営

坂根氏は、人材育成のポイントは以下の4点だと、指摘している。

  • 基本から学ぶ
    コマツの加工機は全てNCマシンになっているが、新人の技能研修には敢えて手動式の旋盤を使用している。手動操作をした方が、旋盤という加工機械の原理が理解しやすいからだ。NC機では機械が勝手に動いてしまう。
    手で加工することにより、頭だけでなく体に切削を覚えこませる。
  • 学びの場を与え、モチベーションを与える
    坂根氏は、コマツの教育機関・小松高専を復活させている。
    在職中の従業員も、ここで勉強しなおすことが出来る。「自己成長機会」は、モチベーション向上の大きな動機付け要因となる。
    その他にも、ここで学んだ同級生は、社内に、横・斜め方向のネットワークを持つことになる。上下方向の関係しか持たない組織と比べ、縦・横・斜めの関係を持つ組織の優位性はいうまでもないだろう。
    大きな企業ほど、このような非公式組織の存在が必要となる。
  • 競争力を高める教育
    坂根氏は、コマツの競争源泉はアフターサービス力にあると考えている。
    そのため社内研修もアフターサービスに重点が置かれている。教育は、予算が決まっているから、ISOの年度品質目標に入っているからやるのではない。
    企業の事業戦略にフォーカスした、教育研修をしなければならない。
    市場の景気が悪くなり、売り上げが減ると真っ先に教育予算を削るような会社は、これが理解できていない。このような会社は、活況時にも忙しい事を理由に教育研修の時間を削る。
  • 後継の育成を意識する
    コマツでは、課長職からトップリーダとしての選抜教育をしている。
    当然各部署から優秀な人材が集まってくる。しかし毎月丸一週間、50日間に及ぶ研修に、ナンバーワンの部下を出すのをためらう上司もいる。こういうところから、後継者育成の仕組みが崩れてくる。
    研修対象者の選抜方法を工夫する。研修対象者の人事権を所属上司から取り上げる。などの仕掛けを用意し、仕組みがうまく機能するようにしている。

これらのポイントは「知行一致」に収斂する。
つまり、単に知識を教え込んだだけではだめ、その知識に基づいて、行動するところまで育てなければだめだ、という意味だ。

上述のトップリーダ選抜研修の最後は、現場で行った研修発表をすることになっている。

  • 学びにより知識を得る。
  • 知識を行動に移す能力を得て自信を持つ。
  • 行動により成果を得る。
  • 成果と過程に対し誇りを持つ。

というステップで人は成長する。

誇りを持たせることで成長が血肉となる。
競争力源泉に集中することにより、業績に直結させる。
これが「戦略的人財育成」だと考えている。


このコラムは、2011年10月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第226号に掲載した記事です。

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