米国でのPhilipsの人工呼吸器リコール


米国でのPhilipsの人工呼吸器リコール、周知も修理キット提供も進まず

Philips は 6 月に同社製 CPAP 装置・ASV 装置・人工呼吸器 20 機種以上のリコールを米国で発表しているが、周知も修理キット提供もなかなか進まない状況のようだ 。

(The Verge の記事)

リコールの原因となった問題は防音用部品のポリエステル系ポリウレタンフォーム素材が劣化して発生する細かい粒子や化学物質を患者が吸い込んでしまう可能性があるというもの。Philipsでは睡眠時無呼吸症候群治療用の CPAP / ASV 装置については即時利用を中止するよう求めている。しかし、このような装置は代替品が用意できなければ使用をやめることはできない。COVID-19 パンデミックで米食品医薬品局 (FDA) が緊急使用許可 (EUA) を出した E30 も即時利用中止の対象となっている。

財経新聞より

 タイミングの悪いリコールだ。コロナパンデミックで人工呼吸器が必要な患者が多くいる。そんな状況でのフィリップスの人工呼吸器使用禁止令は医療従事者にとって最悪の事態だろう。もちろん患者にとっては生き死にの問題だ。

この人工呼吸器がどのような構造になっているのかわからないが、私には設計不良のように思える。呼吸用の空気は病床に設置された専用の空気供給口から取られる。防音装置と、患者が吸入する空気は完全に分離できるはずだ。

人工呼吸器を必要とする患者が多くいる中で人工呼吸器の使用を差し止める指令を出すというのも理解できない。いっそ防音機能を停止してでも使用を継続する方法を模索すべきではないか?音がうるさいくらいで人は死なないだろう。

日本フィリップスは、医療機関に公表した文書で以下のように述べている。
「お使いの機器を使用して治療を継続することのメリットが本書に記載するリスクを上回るかどうか、ご判断ください。」
我々はリスクをちゃんと開示した、決断は医師の責任だ、と突き放しているようにしか見えない。


■■ 編集後記

最後まで読んでいただきありがとうございます。

本日ご紹介した事例を「設計不良」と断じましたが、私は患者の呼吸に必要な空気系統に、消音用ポリエステル系ポリウレタンフォームの微細粉末が混入する理由がわかりません。患者ではなく、医療従事者が吸い込む可能性がある、と言うなら、対応策がありそうです。


このコラムは、2021年8月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1177号に掲載した記事です。

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