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一気通貫生産

先週の「データは現場・現物で理解する」に対し読者様からこんなメールをいただいた。

 玩具工場は、生産の95%以上を手作業に頼っている業種ですので、その時々の生産実績や、毎日の生産実績を把握するには、時間がかかり、下手をすると、2-3日後に漸く数字で実績が上がってくることもあり、その時には、出荷日であったりもします。出荷数量が不足すると、あわてて不足数量を生産することになりますが、生産 は当然のことながら、雑になります。また、検品会社の検査員を何時間も待たせることになったりもします。

中国の玩具工場の経営者様からのメッセージだ。

生産実績把握が困難な理由として手作業生産を上げておられるが、本当の理由は工程ごとの「まとめ生産」だと考えている。

例えば生産工程が成型→塗装→組み立て→梱包となっていると、まず成型を全部やってしまう。その後作業員が全員で成型の検査・修正をする。それが終わったら塗装を全部やる。

こういう生産方式だと成型後の検査で「バリ」が多いのを発見すると全員でバリ修正をすることになる。これで一気に生産日程がスリップしてしまうはずだが、まだ製品は完成していないので生産実績の把握は不可能だ。

成型検査時にバリが多いことが分かった時点で成型条件を修正すれば、バリは少なくなる。しかしまとめ作りの場合、検査時にはすでに成型作業は終わっている。改善のチャンスをなくしているわけだ。

組み立て時に成型不良が見つかった場合などは最悪だ。
修正作業で対応できなければ、生産は一気に振り出しに戻ることになる。塗装工程にかけた労力は全部ムダとなる。

まとめて造ったほうが効率がいいという確信に近い誤解を多くの方が持っている。まとめ造りから脱却するのは勇気が必要だ。

一気通貫というのは工程ごとに分断してまとめ造りをするのではなく、少量ずつ一気通貫で最後の工程まで造ってしまう事だ。その究極の姿が「一個流し」といわれている生産方法になる。

一気通貫で生産をすれば、成型の検査でバリが見つかった時点でバリを少なくする改善ができる。さらに後工程の組立工程で不具合が見つかっても被害は工程間の手持ち台数だけとなる。

工程間でのまとめ生産の待ち時間や、取り置きがなくなるので、生産リードタイムも短縮できる。生産実績の把握も、出荷可能日の予測も簡単かつ精度が上がるはずだ。

別の工場では一気通貫を導入したために、10日かかっていたリードタイムが1.5日に短縮できた。

一気通貫を達成するために、乾燥工程での滞留、段取り換え(印刷色の調色)時間などの問題をひとつずつ改善することが必要となった。この改善はまとめ造りをしていたときには認識できなかった問題点だ。工程を一気に最後まで流動させることにトライしたために問題点として認識され、改善することができた。

これも一気通貫生産の大きな利点だと考えている。


このコラムは、2009年9月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第117号に掲載した記事に加筆しました。

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まとめ生産

 先週はある工場の訪問指導をした.

典型的なまとめ生産をしていた.
まとめ生産をすると効率が悪く,品質も改善できないと指摘をした.しかし経営者様は,ウチはまとめ生産をしていない.受注に合わせて生産していると反論される.

この経営者様に誤解をさせてしまったが,工程ごとにまとめて生産するという意味でまとめ生産という言葉を使っている.受注生産に対応するのは,計画生産だ.

この工場では,製品投入から組み立て完了までを工程ごとにまとめて生産.生産が完了したら,まとめて検査・梱包をする.
こういう生産方式をまとめ生産といっている.まとめ生産に対応するのは,一気通貫生産だ.

この工場の例では,部品投入から組み立て,検査・梱包までの各工程をドミノ倒しのように一工程ごと次々に生産するのを,一気通貫生産といっている.

まとめて作ると,取り置のムダが発生する.
工程間で一度製品をコンテナなどに入れて溜めておく,そしてそれをまたコンテナから出して,次の工程に投入することになる.この出し入れの手間と,モノを置いておく場所が取り置きのムダだ.

また半完成品を溜めて次工程に流すため,次工程で不良が発見された場合,大量に同じ不良が混入していることになる.一気通貫生産ならば,不良が見つかった時点で前工程の改善ができる.

以前別の工場で指導した事例では,電子部品のリードフォーミングを,翌日生産分をまとめて作業していた.このため翌日の組み立てで,この部品が基板に挿入できない不良が発生すると,昨日作った部品はほとんど手直しをしなければ基板に挿入できないことになる.このため大きな時間ロスばかりではなく,品質リスクも発生する事になる.

この時は組み立てライン横で,組み立てに合わせて電子部品の前加工をすることにした.当初現場リーダの強い反対にあった.前加工と組み立てラインのスピードが違うのでロスが大きいというのだ.

彼が言っていることは当然である.しかしそれは今までのやり方をしていたら,という前提がある.新しいやり方に合わせた改善をすればよいだけだ.

その他にも,10日以上かかっていた工程を,一気通貫生産で1.5日にしたことがある.また別の事例では,乾燥のためのまとめ生産していたのを,インライン乾燥を導入し24時間かかっていたリードタイムを4時間にしたこともある.

工程リードタイムが短くなれば,不良を発見した時に,原因工程がまだ生産中である.すぐに改善ができる.まとめ生産をしていると,不良を見つけても既に原因工程は作業が終わっており,その場で改善ができない.

まとめ生産を止めて,一気通貫生産をすればQCD全てにわたって改善することができるはずだ.
従来どおりのやり方に慣れてしまっていると,なかなか気が付かないものだ.更に生産方式を変える勇気を持たなければならない.勇気を持つためには,うまく行っている事例を見たり,聞いたりするのが一番だろう.


このコラムは、2011年7月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第213号に掲載した記事です。

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