まとめ生産


 先週はある工場の訪問指導をした.

典型的なまとめ生産をしていた.
まとめ生産をすると効率が悪く,品質も改善できないと指摘をした.しかし経営者様は,ウチはまとめ生産をしていない.受注に合わせて生産していると反論される.

この経営者様に誤解をさせてしまったが,工程ごとにまとめて生産するという意味でまとめ生産という言葉を使っている.受注生産に対応するのは,計画生産だ.

この工場では,製品投入から組み立て完了までを工程ごとにまとめて生産.生産が完了したら,まとめて検査・梱包をする.
こういう生産方式をまとめ生産といっている.まとめ生産に対応するのは,一気通貫生産だ.

この工場の例では,部品投入から組み立て,検査・梱包までの各工程をドミノ倒しのように一工程ごと次々に生産するのを,一気通貫生産といっている.

まとめて作ると,取り置のムダが発生する.
工程間で一度製品をコンテナなどに入れて溜めておく,そしてそれをまたコンテナから出して,次の工程に投入することになる.この出し入れの手間と,モノを置いておく場所が取り置きのムダだ.

また半完成品を溜めて次工程に流すため,次工程で不良が発見された場合,大量に同じ不良が混入していることになる.一気通貫生産ならば,不良が見つかった時点で前工程の改善ができる.

以前別の工場で指導した事例では,電子部品のリードフォーミングを,翌日生産分をまとめて作業していた.このため翌日の組み立てで,この部品が基板に挿入できない不良が発生すると,昨日作った部品はほとんど手直しをしなければ基板に挿入できないことになる.このため大きな時間ロスばかりではなく,品質リスクも発生する事になる.

この時は組み立てライン横で,組み立てに合わせて電子部品の前加工をすることにした.当初現場リーダの強い反対にあった.前加工と組み立てラインのスピードが違うのでロスが大きいというのだ.

彼が言っていることは当然である.しかしそれは今までのやり方をしていたら,という前提がある.新しいやり方に合わせた改善をすればよいだけだ.

その他にも,10日以上かかっていた工程を,一気通貫生産で1.5日にしたことがある.また別の事例では,乾燥のためのまとめ生産していたのを,インライン乾燥を導入し24時間かかっていたリードタイムを4時間にしたこともある.

工程リードタイムが短くなれば,不良を発見した時に,原因工程がまだ生産中である.すぐに改善ができる.まとめ生産をしていると,不良を見つけても既に原因工程は作業が終わっており,その場で改善ができない.

まとめ生産を止めて,一気通貫生産をすればQCD全てにわたって改善することができるはずだ.
従来どおりのやり方に慣れてしまっていると,なかなか気が付かないものだ.更に生産方式を変える勇気を持たなければならない.勇気を持つためには,うまく行っている事例を見たり,聞いたりするのが一番だろう.


このコラムは、2011年7月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第213号に掲載した記事です。

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