再発防止対策」タグアーカイブ

明治乳業のビン牛乳、さび混入 159万本回収

 明治乳業(本社・東京都江東区)は25日、大阪府貝塚市の関西工場で製造された瓶入りの牛乳とヨーグルトに赤さびが混入していたとして、関西2府4県の宅配用の5商品計約159万本を自主回収すると発表した。混入は微量で、健康への影響はないとしている。

 22日に顧客から指摘があり、関西工場を調べたところ、回収した瓶を洗浄する作業で、仕上げのすすぎに使う水のタンク内で赤さびが見つかったという。

(asahi.comより)

この手の事故の報道を見るたびに,どうして未然に防げなかったのかと思う.

生産設備は毎日点検しているはずだ.
すすぎ水のタンクの点検が行われていなかった.
または点検は行っていたが,赤錆を見逃した.

すすぎ水のタンクが点検項目から漏れていたのならば,点検項目に追加をすれば良い.
しかしそれだけでは不十分だ.製品に影響を与える可能性のある潜在事故を洗い出して,見直しをする必要がある.

点検項目に入っているが見逃した,この場合の対策はどうすれば良いであろうか.
「作業員に対して点検作業の教育訓練をする」という対策では不十分である.点検の基準はきちんとしていたのか,点検方法に問題はなかったのか,見逃した原因をきちんと解析をして対策を打たなければならない.

作業者が不慣れなためのミスだったとしても「教育をする」で十分とはいえない.
教育方法・資料,教育の時期・頻度について改善すべき事がないか検討しなくてはならない.

以上の対策が出来てもまだ不十分である.
これらは錆の発生を見逃すという流出に対する対策でしかない.
錆が発生するという原因に対する対策が足りていない.

あなたの工場では同様の問題が発生するリスクがないだろうか.
一度こういう問題を出してしまうと,回収のための費用損失が発生するばかりか,顧客の信頼を失うという致命的なダメージを受ける.

致命的な品質不良が発生する可能性のある事故を洗い出してFMEAなどを活用してあらかじめ対策を打っておく必要がある.
業種が違ってもこのような事故は社内を再点検する良いチャンスである.


このコラムは、4月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第31号に掲載した記事に加筆したものです。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

作業ミス対策

 単純な作業ミスによる不良の再発防止対策にお困りだったりしないだろうか.
「作業者に注意をした」「作業者に再教育をした」「作業者に罰金を課した」「検査の追加」など,対策の効果が実感できないような再発防止対策が報告されてくる事がままある.

一番驚いたのは掲示板にA4用紙一杯に「作業に注意します」と何度も繰り返し書かれた反省文?が張り出されているのを見たときだ.多分現場の班長さんが,作業者にどう指導してよいかわからず,学校で同じような罰を先生から課せられたのを思い出して,同じ事をしてみたのであろう.

笑ってはいけない,班長さんはこれでも真剣に考えたのであろう.
上位職者がきちんと班長を指導できていないのが問題だ.

まずは作業ミスがどうして発生するのかを分析する必要がある.

  • 疲労による作業ミス
  • ついうっかりミス
  • ついうっかり作業飛ばし

一般に1件の不良が顕在化する影には,工程内で見つける事が出来た不良が29件発生,300件の「ヒヤリ・ハット」する出来事があるといわれている.(ハインリッヒの法則)

顕在化した不良だけを見ていると,なかなか原因が分からない.これらの潜在不良に着目して分析する必要がある.

時系列で,曜日別で,作業員別で,生産機種ごとに,など色々な切り口で見る事が出来る.

こういう分析により作業員の疲労度やぼんやり度に法則が見えれば,対策を打つ事が考えられる.

どんなに注意していても所詮は人間である.ミスは必ずある.
疲労を軽減する作業になっているか.注意力に頼る作業になっていないか.
という着眼点で対策を考える.

またミスが発生しない仕組み,ミスが発生しても流出しない仕組み「ポカよけ・ダブルチェック」を導入する.

それでもどうしても作業者の技量に頼らざるを得ない場合はある.
こういう場合は「作業者の再教育」という対策にならざるを得ない.
「作業者の再教育」という対策が悪いわけではない.

  • 教育効果がきちんと確認できているか.
  • 教育効果が実感できるものか.
  • 新人作業員,別の作業員にも教育が確実に行われる様になっているか.

ということが保証できていれば,対策として合格点がもらえるであろう.


このコラムは、2008年10月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第56号に掲載した記事を修正・加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

電解コンデンサの発煙事故

先週インターネットのニュースを閲覧していて「製品評価技術基盤機構」(Nite)という独立行政法人を発見した.ホームページでは製品安全・事故情報を公開している.「安心を未来につなぐナイトです」というキャッチフレーズだ.過去の事故事例から未来に発生するかもしれない不具合・事故を未然に防ごうという趣旨である.

是非このサイトを時々ご覧になって,自社製品の不具合・事故の未然防止に役立てていただきたい↓
製品評価技術基盤機構(Nite)

今日はこのサイトにあった事故ファイルから事例を紹介したい.

【事故通知内容】

 CDプレイヤーを使用していたところ、電源アダプターから煙が出た。

【事故原因】

 電源回路の平滑用コンデンサー製造時に混入した異物がセパレーターに損傷を与え、電極間にスパークが発生し発熱したため内圧が高くなり、防爆弁が作動して内部の電解液が蒸気となって噴出したものと推定される。

【再発防止措置】

 コンデンサーメーカーにおいて、作業者の教育訓練を強化し、作業現場の温度管理を強化して環境の安定化を図るとともに、工程ごとの部品管理の改善を図っている。

アルミ電解コンデンサの不良事故である.
残念ながら事故原因の追及が甘い.コンデンサーに異物が混入した原因までさかのぼる必要がある.
どんな異物であったのかが特定できれば,どの工程で混入したのかが分かるはずだ.
例えばアルミ箔のくずが混入していたのならば,アルミ箔を一定の幅に切りそろえる工程でバリが発生していた事が考えられる.
非導電性の異物であれば,アルミ箔と絶縁紙を巻き取る工程で混入したと考えられる.

このように発生工程と原因を更に特定をしなければ,正しい対策は打てない.

したがって再発防止措置のところに「作業者の教育訓練」がトップに出てきたりする.もちろん作業者に対する教育訓練は必要だがこれだけでは不十分だ.

真の原因に対する対策が不足している.
例えばアルミ箔のバリが混入していたのならば,バリが発生しないようにする.
箔の巻き取り工程で異物が混入したのならば,異物が発生しないようにする.

皆さんの工場では再発防止対策に,
「従業員に注意をした」とか
「従業員に再教育をした」
などという言葉が並んでいないだろうか?


このコラムは、2008年9月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第51号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

サムスン、「Galaxy S8」を2月のMWCで発表せず

 MWCというのは毎年スペイン・バルセロナで開催されるスマホの展示会だ。この展示会でスマホメーカ各社の新製品が発表される。

CNET Japanの記事本文

Galaxy S8は今春発売が予定されている。MWCで発表がないということは、S8の出荷が遅れるのだろうか?当然昨年大騒ぎとなったNote7のリチウムイオン電池爆発事件が影響していると推測される。

リチウムイオン電池爆発の続報によると、最初のリコールは電池の設計問題。回収交換の電池により発生した事故は製造問題と発表されたようだ。記事を読んでも、問題の原因が何なのかよく理解できない(苦笑)

CNET Japanの記事本文

記事には再発防止対策として各バッテリをX線検査するほか、視覚的に調査するなどの「新たな検査基準」が適用されると記されている。

この対策は不良の流出対策だけであり、原因対策には触れていない。
設計に問題があったのならば、設計を変更しなければ解決はしないはずだし、製造に問題があったのならば、製造方法に改善がなければならないはずだ。
もし私がサムスンの品質保証責任者であれば、この報告書は担当者に書き直しを命じただろう(笑)


このコラムは、2017年1月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第513号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

帰宅難民

© freepic

 先週の大雪により、首都圏を相当混乱した様だ。帰宅時間帯にターミナル駅で入場規制が行われている映像を見た。若い頃金沢に住んでおり、太平洋側大都市の積雪に対する脆弱性を嗤って、雪かきの憂さ晴らしをしたものだ(笑)

帰宅難民に関して冷泉彰彦氏がメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』に面白い論考を書いておられた。

大雪の予報が出ていたにも関わらず多くの帰宅難民が発生したのは、目で見なければ納得しない、実際に何かが起きて実感しないと動けない、という日本人の悪しき習慣によるものだ、と冷泉氏は指摘している。

「雪が積もり始めないと退社の決断ができない」
「鉄道が運休になって初めて帰宅指示が出た」
など笑えない事例は、情報入手の速度、判断の速度以前の問題であり、「先走って判断したら外れた時に非難を受ける」という組織文化、「見える化しないと動けない」という心理的習性が日本の組織にある、と冷泉氏は指摘している。

三現主義は、現場で現物を手に取り現実をきちっと見て判断せよ、と教える。
したがって見える化しないと動けないという弊害を生むのだろうか?

私には別の日本的習性が帰宅難民問題を発生させたのだと思える。
それは「横並び習性」だと思うがいかがだろう。

「全員即刻退社」と指示をすれば、皆すぐに退社する。
「帰宅困難になりそうな者は早めに退社」と指示をすると、互いの顔を見合いなかなか退社できない。こういう習性がないだろうか?
つまり集団の中で、突出するのを避ける。個よりは群れを尊重する。農耕民族であり村社会の日本に、ありそうな習性だ。

しかしこれは日本人だけの習性ではない様だ。
米国心理学者・アッシュのは次のような実験をした。8人中7人がサクラで、簡単な問題に一斉に答える実験をする。7人のサクラがわざと間違った答えを示すと、被験者も間違った答えを選択する傾向にあるそうだ。これを「集団同調行動」という。

人為ミスと簡単に片付けてしまう問題・事故も人の心理に迫る分析をすれば、より有効な再発防止対策を見つけることができるはずだ。

参考:「ヒューマンファクター10の原則」


このコラムは、2018年1月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第622号に掲載した記事に加筆したものです。「今週のニュースから」は「失敗から学ぶ」と改題し同じ趣旨で継続執筆しています。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

空自の復唱「気づかず」 重複の可能性も 那覇管制官

 沖縄県の那覇空港で航空自衛隊のヘリコプターと民間機2機が絡んだ離着陸トラブルで、離陸許可が指示されたと誤認したヘリが指示を復唱したが、管制官が「気づかなかった」と話していることが分かった。直後にヘリは離陸して民間機の離陸を妨げており、国の運輸安全委員会は交信状況を調べる。

 国土交通省によると、トラブルは3日午後1時23分ごろ、滑走路脇にいた航空自衛隊那覇基地のCH47が管制官の許可なく離陸し、滑走路上空を横切ったため、離陸滑走中だった全日空機が急ブレーキをかけて離陸を中止。さらに着陸態勢に入っていた日本トランスオーシャン航空(JTA)機に管制官が着陸やり直しを指示したが、全日空機の後方に着陸した。

 管制官は全日空機を指名して離陸許可を出し、ヘリにはその直前に待機指示を出していたが、ヘリは「全日空機に出された離陸許可を自分に出されたものだと思った」と説明していた。

 国交省関係者によると、管制塔には9人の管制官がおり、3機との交信は同じ1人が担当。管制官は、全日空機への離陸許可に対する同機からの復唱は確認したが、ヘリからの復唱は「確認していない」と説明している。一方、防衛省関係者によると、ヘリの操縦士は自機の識別番号とともに「了解。すぐに離陸する」と英語で返答。管制官から訂正を求める返答はなかったため離陸したという。

 離着陸する航空機は同じ周波数の無線で管制官と交信している。安全委は、全日空機の復唱とヘリからの復唱が重なった可能性や、全日空機との交信に集中してヘリの復唱を確認できなかった可能性などがあるとみて、交信記録を調べる。交信記録を聞いた関係者は「復唱が重なったようにも聞こえる」という。

 また、JTA機に対して管制官が着陸やり直しを指示したとき、同機はすでに滑走路の進入端から内側に入っていた可能性があることが分かった。管制官は全日空機から離陸中断の連絡を受け、直ちにJTA機に指示を出したという。JTA機のパイロットは「管制官から着陸やり直しの指示があったのは滑走路に接地した後だった」と説明している。

(朝日新聞電子版より)

 重大事故に直結する「ヒヤリハット」だ。
人為ミスによる事故と考えていたが、記事を読むと構造的な問題が有りそうな気がする。

無線通信によるコミュニケーションは、復唱が必須だが、複数の通話が同じ周波数チャネルで使用していれば、指示や復唱が干渉して伝わらない事が有る、と言うのは前提条件として考えなければならないだろう。
例えば管制官からの指示に対し、機長からの復唱と管制官からの指示取り消しが同時になると、双方の通話は聞こえない。
復唱に対し管制側からの応答が有って初めて指示が有効になる様なプロトコルが必要なのではないだろうか。

時系列を考えてみると、ANA機が離陸したのを確認する前にJTA機に着陸許可が出ている様に見える。離陸機の助走時間、着陸機の下降時間を節約せねばならない程離着陸頻度が高いのかも知れないが、安全に優先すべき効率は無い。

離着陸機の数だけを考えれば、香港空港の方が遥かに多いだろう。しかし沖縄空港は、国防の要的位置にある。自衛隊機と民間機が共用する空港であれば、有事のイレギュラーなオペレーションも有るはずだ。今回のヒヤリハットを十分に検証し、潜在要因を洗い出しておかねばならないだろう。


このコラムは、2015年6月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第427号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】