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従業員教育

 直接ご相談を受けた訳ではないが、先週いただいたメールの中に、多くの読者様が直面していると思われる課題があったので、皆さんとシェアしたい。

“従業員の教育育成は重要だと分かっているが、大手企業と違って中小企業はしっかりした教育体系も無く、日常業務に忙殺されて十分教育が出来ない。”
多くの方が、このような問題点を抱えておられると思う。

私が知る範囲では、大手企業と言えどしっかり教育システムが機能している所ばかりではない。
日本本社には、社内研修を専門にしている部署があり、別会社として独立している。日本本社にグローバル品証部門があり、世界中の拠点の教育企画を立てている。その様な会社も存じ上げているが、必ずしもうまくいっていない。

もっとも大きな問題は、日本本社と現地工場経営者の温度差だ。日本本社はよかれと考えて色々な施策を提供して来るが現地の感覚とずれており、現地経営者から受け入れられない、と言う事例を何度も見た。

現地生産工場のトップについている方は製造のプロである事が多く、本社から出て来る教育企画を有効に落とし切れていない、と言う事例もよく見る。

例えば、昇格者に研修をすると言う規定がある。毎年の品質計画に昇格者研修も入れてある。しかしその目標が「参加率100%」となっていると、本来研修の目的である効果を保証する事が難しくなる。

元々大手企業の経営者・経営幹部は、4,5年の任期を終えれば帰任出来る。その間大過なく過ごす、などと言う「大企業病」もあるだろう。

中小企業の場合は、違う意味で、難しいところがある。
絶対的なリソースが少ないので、一人何役もこなさなければならない。特に日本人幹部に対する負荷が高くなっている。また中国工場に赴任して来ている方は、製造部門のプロばかりだ。

余談だが、中国に工場を出して初めて品質保証部門を作ったと言う方もあった。
日本本社では、製造部門の品質係で十分だったが、独立した品質保証部がないと中国では機能しないと、気が付かれた様だ。

その様な背景があり、人材育成は重要だと実感しているのだが、どうしたら良いか、そのための時間をどう捻出するかが分からない。こういう問題を抱えておられる方は、多いだろう。

私が独立して最初にお手伝いした台資工場での事例をご紹介しよう。
当時、他にお客様がなかったので(苦笑)毎日この工場で指導をしていた。
経営者には、半年で顧客不良を半減、一年で三分の一にすると言う目標を示していた。指導を始めて感じたのは、まず現場の班長のレベルをあげなければならないと言う事だった、

この会社には教育システムはない。むしろ教えてもムダだと考えているフシがあった(苦笑)ISO上必要なので、技能認定の教育と、新入社員に会社の規則を説明する半日の入社時研修があるだけだった。従って、朝採用された新人達は午前中の研修(会社や寮の規則説明会)を終えると製造現場に新しく貰った作業服を持って上がって来ると言う状態だ。
(念のために申し上げておくが、今はちゃんと個人スキルに合わせた教育計画がある……はずだ)

従って現場の班長さんと言っても、他の女工さん達と同じ様に採用され、作業が他の人より上手に出来るので班長さんに抜擢されているだけなのだ。
班長としての知識は何も教わっていない。

この班長さん達を二班に分けて、毎朝30分ずつ研修した。
二班に分けたのは、現場に班長さんがいなくなると問題が起きた時に面倒を見る人がいなくなるからだ。一度に一テーマ、30分以内で終わりにする。
初期は、5S、ホウレンソウ、識別管理、4M管理などの基本が理解出来る様に、簡単に事例を多くして教えた。
その後は、毎日現場で見つけた問題点をフィードバックする方式で指導を継続した。

「教育研修」と大げさに考えると、一歩が踏み出せない。毎朝始業前の30分幹部を集めて話をする、こういう感覚で始められたら良いと思う。幹部は教えられた内容を部下に教える。
そして、毎朝の話題をA4一枚にまとめておく。これが蓄積すれば、立派な教育資料となる。これを使って中国人幹部が社内研修をすることができる様になる。

大変な様に見えるかも知れないが、毎日1テーマなので、隙間時間で十分準備出来る。夕食後の時間で準備すると決めてしまえば、習慣になる。
何よりも、班長さん達の熱心な態度や、自分に対する信頼感を感じることができ、自分自身のモチベーションが上がる。

こちらもご参考に
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このコラムは、2013年12月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第339号に掲載した記事に加筆しました。

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