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【今週のお題】
皆さんは作業現場の工夫をどのように作業標準化しているだろうか.
Z様のご投稿
僕は現場の作業標準というものは作ったことがありませんが、製作指導書は日々作っています。多くの場合、日本工場の班長や熟練技能者にヒヤリングして工程のポイントとなる部分だけをピックアップしていることと、品質確保を重点に作ってことが作業標準との大きな違いです。
作る僕の語学力の問題もあって、図面追記型(=製作指導図)と写真中心型のいずれかですが、大抵日本語版を作ってから、翻訳して中国語版を作ります。上手くまとめられた時は、中国のサプライヤーから感謝されるだけでなく、日本の技能者からも自分のノウハウが、目に見える形になったことで喜ばれたこともありました。
Z様は機械加工部品の中国調達のお仕事をされている.
通常のバイヤーであれば,設計者が描いた部品図面を右から左に加工業者に渡しても仕事は勤まるであろう.品質とコストに対する飽くなき追及が,自ら製作指導書を作る原動力となっていると推察した.
部品図面にちょっと加工順を記入してやっただけでも,品質やコストに影響を与える事が出来るはずだ.
技能者というのはえてして文書化や図面化が得意ではない人が多い.
図面を見ただけで頭の中で加工順を考えられるのは,ベテラン技能者のノウハウだ.これを若い技能者に伝えるのはそうは簡単ではない.
一つ一つの製作指導書がノウハウ事例となり,日本での技能伝承にも役に立っているのであろう.
K様のご投稿
作業標準化ですが、弊社でのやり方は、
- 生産開始前に図面作成担当がサンプル基板と図面を見ながら、各工程毎に作業を割り振り、それぞれの図面を作成する。
- 実際の生産開始時、図面作成担当、管理者で作業現場に行き、現場での問題点、改善点を手書きで記入する。
- 手書き修正図面を電子データに展開し、図面が完成。
このやり方である程度完成度の高い図面は出来ていますが、まだ作業者の意見を取り入れるところが弱いと思っています。作業者が自由に発言し、管理者がそれを受け入れて図面に反映する環境を作っていく必要があると思っています。
また、1.の図面作成はベテラン(10年選手)が行なっているので、今までのノウハウなども最初から盛り込めていますが、その人が居なくなったことを考えると、今の内に後継者を作っておく必要があります。
あと、図面フォーマットの改善点として、右上に枠を作り、各工程での作業箇所数を見易く記入する様にしています。(はんだ付け箇所:9箇所、ねじ締め箇所:4箇所 など)
作業者に数を意識させることで、作業モレを防ぐのが目的です。
詳しい作業標準策定の手順を書いていただき,皆さんのご参考になったと思う.
私が生産委託工場で指導した時は,1.の段階を,現場班長クラスの作業員で構成された「試作製造チーム」と生産技術員が一緒に試作品を作ることで対応していた.
ベテランの生産技術員は,作業中にどんな不具合が発生するか読めるのであらかじめそれを回避する作業手順を作れるのだと思う.従ってベテランのノウハウを若手に伝承するのは,工程FMEAのフォーマットで潜在不良項目を伝承するのが良いと思っている.
最後の作業点数を作業指示書に書き出しておくというのは,すぐにでもベストプラクティス(まね)すべきポイントだと思う.
私も以前,電子部品の極性チェック工程で同じように作業指示書にチェック点数を書いた事がある.このときは点数が多すぎて作業者にカウンターを渡さなければならなかった(苦笑)
お二人のご投稿は,同じように文書化することで作業を標準化するというアプローチであった.
その他にもビデオ映像で作業を標準化する方法もありうる.
文章や図解では表現しにくい作業もある.こういう場合はビデオで撮影したモノを作業訓練に使い作業を標準化する事が出来るだろう.
例えば,段取り換え作業を効率よくしようと思うと,作業内容を箇条書きにしただけではなかなか表現しきれない.実際に作業をしている場面を撮影し,ポイントをナレーションで入れておく.
定期的に「段取り換え作業コンテスト」を開催し優勝者の作業がビデオ教材に採用される栄誉を得る.
作業標準は決めた日から改善対象になる.このようなイベントで作業標準を改定していくと,作業者のモチベーションアップも同時に狙える.文章による作業指示書は改善したら手書きでも良いから、すぐに書き込むようにすべきだ.
このコラムは、2009年1月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第79号に掲載した記事です。
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