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社外活動

 中国に住んでいると日本のTV放送は見ることができない。昨年の9月までは、中国の映画・TVドラマサイトで日本のTVドラマがアーカイブされていた。私としては珍しくNHKの大河ドラマを一気に見たりした(笑)しかし「島問題」以降、日本の映画・TVドラマは全て削除された。

最近偶然中国の動画サイト『優酷』に「カンブリア宮殿」がアーカイブされているのを発見した。当然著作権を無視した違法なモノだと思うが、情報難民(笑)の我々には、天の救いの様な存在だ。

多分中国国内からしかアクセス出来ないと思う。
カンブリア宮殿は、ただ娯楽としてみても楽しいが、アンテナが高い人には沢山の気付きを与えてくれる番組だ。製造業以外の事例も多いに参考になる。

前置きが長くなったが、カンブリア宮殿で取り上げた「ナカジマメディカル」が面白かった。私が着目した部分を紹介したい。

ナカジマメディカルと言うのは、人工関節を生産している会社だ。
元々船舶のプロペラを生産していた会社が、造船不況時の経営多角化戦略により生まれた会社だ。

プロペラの生産で重要な技術は金属の表面研磨だ。
現場の匠による研磨技術が、プロペラの性能を決める。こうした技術が人工関節生産の差別化要因となる。それを指摘したのは、プロペラの生産現場を見学した医療関係者だ。

人工関節の骨の部分に当たる金属の平滑度をあげれば、関節の軟骨として使用するプラスチックの摩耗を防ぐことができる。プラスチックが摩耗すると、交換のために再手術が必要となる。
そのため金属の鏡面仕上が、人工関節の寿命を延ばし、患者の再手術と言う苦痛から救うことになる。

しかしプラスチックの寿命向上には、耐摩耗性だけでは達成出来ない事が判る。体内に入ったプラスチックは、酸化することにより劣化してしまう。ナカジマメディカルには、プラスチックの酸化劣化に対応する技術はない。

そこで彼らは何をしたか。
異業種の研究者を集めて、研究会を始めたのだ。元々金属加工は本職だ。工学部、医学部の研究者を集めた研究会で、プラスチックの専門家から抗酸化のためにビタミンEを添加すると言うアイディアが生まれ、それを実用化した。

中堅・中小企業は全ての技術開発をする事は不可能だ。足りない技術は、外部から集める。こういう発想が重要だ。

私が会長を務める東莞和僑会では、異業種間での交流を目指し、工場見学会を企画している。そしてそれを一歩進めて「ソーシャルモノ造り分科会」も開催している。まさにナカジマメディカルの研究会と同じ目的だ。

実は「ソーシャルモノ造り分科会」はまだ具体的成果にはたどり着いていない。ナカジマメディカルの事例と比較して、成果が出せない理由を考えてみた。
分科会のテーマをまず絞り込む事が必要だと気が付いた。今の所メンバーの固有技術や、夢を語り合っているだけだ。早急にテーマを絞り込むフェーズに移行しなくてはなるまい。

この様に、社外にある技術やリソースとコラボして新しい価値を創造する。それにより、自社の新たな商品や事業に結びつける。こんな社外活動を組織化する、或は参加する事で中堅・中小企業が活性化することが出来たら最高だ。


このコラムは、2013年11月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第335号に掲載した記事です。

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企業交流

 毎週配信しているメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】の「今週のニュースから」のコラムでは、他社、他業種、他業界の事例を学び、自社の未然防止対策を考えようとしばしば申し上げている。
しかし「他社の事例を学ぶ」と言っても、そうは簡単ではない。私のコラムもニュース記事からの推測になっている部分も多い。(推測であっても、思考訓練として重要なので、自分なりにケーススタディを続けている)

ではどうすればより深く他社事例から学びを得られるか。多くの企業と交流するチャンスを持てば良いのだ。

私は職業柄、業種・業界を越えて色々な企業を訪問するチャンスがある。元は多品種微量生産の重電メーカの設計者、後に量産電源の品質保証だった私は、職業人生の中で、非常に多くの業種・業界の企業と交流があった。今の仕事になってそれが加速している。

今、顧問先で指導しているQCC活動で総務部門が「従業員満足の向上」と言うテーマで課題達成型のQCC活動に取り組んでいる。サークルメンバーに、まず従業員が満足して働ける理想状態を定義してみよう、と指導しているが、どうにも思い浮かばないそうだ。そこで、私の知り合いの工場にお願いして、工場見学交流会をしていただくことになった。

自社の専業に関わる技術については、そうは簡単に公開出来ないだろうが、従業員満足のためにどんな取り組みをしているのか、お互いに交流する事は可能だ。しかも業界が全く異なるので、お互いの利害関係は、害する所は極小となり、利する所が大きくなるはずだ。

この様な交流を上手くやるコツは、まずこちらから公開出来る情報を先に出す事だ。ジャンケンは後出しが必勝テクニックだが(笑)情報は先に出した方が上手く行く場合が多い。交渉ではないのだ。先方から情報がいただきたいのであれば、先に良質な情報を提供するに限る。

水は高いところから低いところに流れる。しかし情報は低い方から高い方に集まるのだ。私はこれを「逆エントロピー増大の法則」と呼んでいる(笑)(念のために申し上げておくが、熱力学にも、情報工学にも逆エントロピー増大の法則などと言う法則は無い)

現に私の周りにはその様な志しの高い人が集まっており、色々な交流が行われている。


このコラムは、2015年3月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第417号に掲載した記事に加筆したものです。「今週のニュースから」は「失敗から学ぶ」と改題し同じ趣旨で継続執筆しています。

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