品質保証」カテゴリーアーカイブ

続・旅客機滑走路逸脱事故

 2019年6月5日配信のメールマガジン832号で、山形空港で発生した旅客機が滑走路を逸脱する事故をご紹介した。

「旅客機滑走路逸脱事故」

当時のメルマガで、事故原因を推察してみた。
運輸安全委員会の正式調査結果が既に出ているのを発見し、答え合わせ(笑)をしてみた。

運輸安全委員会の事故調査結果↓
「エンブラエル式ERJ170-200STD型JA11FJ滑走路からの逸脱」

調査報告書をざっくりまとめると、地上走行時の操舵方式には二種類ある。
左操縦席の左側のハンドルを手で操作する「ハンドルモード」
左右のラダーペダルを足で操舵する「ペダルモード」

「ハンドルモード」はハンドルを押し込むことにより、左右に回すことで操舵が可能となる。低速でタクシングするときに使う。
「ペダルモード」は離陸時など高速で真っ直ぐ走行するときに使用する。
ハンドルを引き上げたときに内蔵のマイクロスイッチが働き、ペダルモードに切り替わる。

今回の事故原因はハンドルモードからペダルモードに切り替わらずラダー操作ができなかったことによる。その原因はハンドルを引き上げたときに内蔵のマイクロスイッチがONにならず、ペダルモードに切り替わらなかった。(マイクロスイッチの不良原因は不明)

現在の操舵が、ハンドルモードかペダルモードかを表示されていれば事故は避けられたと思われる。

製造現場の設備も現在の「モード」を表示する機能を追加すると同様の問題を回避する事ができる。

例えば製品検査でX線を使用する装置はX線が外部に漏れない様になっている。
しかし装置内のメンテナンス中はX線が出ない様にしたい。同時に点検時は装置内のX線強度を測定したい。これらの相反する目的のために暫定的にX線をON/OFFする必要が発生する。これを作業後元に戻すのを忘れるとX線に被曝することになったり、検査ができていなかったりする。点検・運用のモードを表示すれば、事故は防げるだろう。


このコラムは、2022年3月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1264号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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チェックリストの使い方

 何らかの不具合(特に人為ミスに起因する不具合)の対策として「チェックリストを作成しました」という事例を多く見ると思う。

人為ミスの対策として「ポカ避け」「チェックリスト」「ダブルチェック」が三種の神器の様に信奉されている。

私自身この考え方に異論はない。
しかしよく考えると「ポカ避け」はミスの原因が起きない様にする発生原因対策だ。一方「チェックリスト」「ダブルチェック」はミスが流出しない様に検査をする、という流出対策だ。「ダブルチェック」に至っては付加価値を産まないチェックを二度もする。

それでも過去の失敗事例を集め、その集大成としてチェックリストを作成することを推奨している。それはチェックリストには、仕事が終わってから問題がないことを検査するという役割の他に、使い方があるからだ。

本来ミスが起きない作業方法(ポカ避け)を採用すれば、チェックという付加価値を生まない作業をする必要はないはずだ。しかし設計作業でポカ避けを組み込める場面は限られる。コンピュータ支援の設計作業には比較的簡単にポカ避けを組み込める(例えばPWB設計のCADでは、部品の間隔、位置などのルールを自動的にチェックできる)が、その手前の基本設計などではポカ避け機能を導入することはそうは簡単ではないだろう。

チェックリストは設計が終わってから確認するのではなく、設計開始時に何を確認して設計を進めるか考えるために使う。

設計完了後にチェクリストをリーダとともに確認をする。この時のリーダの役割は、設計者がチェックリストの意味を正しく理解していることを確認することだ。


このコラムは、2018年9月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第724号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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指差喚呼

 「指差喚呼」とは鉄道の運転手がやっている指差し点呼確認動作のことだ。
例えば列車運転手は出発前に前方にある信号機を指差し「出発進行」と発声。これは出発(信号)進行(緑)という意味だ。出発時の指差喚呼だ。出発信号等が赤色点灯ならば「出発停止」と点呼し発車しない。

運転手、車掌、駅職員皆がこの指差喚呼を行なっている。万が一事故があれば何百人、何千人の命が危うくなる。従って危険なところだけで指差喚呼をするのかというと、そうではない。習慣とするためにあらゆる動作で指差喚呼をしていると思う。

工場でも指差喚呼を取り入れると良い。
プリント基板に部品を挿入する作業員が、一斉に指差喚呼をしていては騒々しくていけない(笑)しかし自分が挿入した部品は指差し心の中で数を数える。

部品の出庫・準備、設備の準備・設定など生産に重大な影響を与える作業は型通りに指差喚呼をした方が良いだろう。

ヒューマンエラーに対して作業者に対し「再指導・注意」などという対策より「指差喚呼」導入のほうが効果がありそうだ。


このコラムは、2022年2月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1259号に掲載した記事です。

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失敗学

 今週の《ニュースから》「大阪市の電車型おもちゃに不具合 電池が60度まで過熱」では他社の失敗事例を自社の失敗未然防止に役立てようという趣旨で書いた。

たまたま先週は「失敗の予防学」という本を読んでいた。
著者の中尾政之氏は元々エンジニアだった人で、今は東大工学部の教授である。

失敗から予防保全につなげないと、毎回同じような失敗ばかりしていることになる。良く失敗は授業料だと思えば良いというが、授業料だけ払っていてはいけない。今回のように他人が支払った授業料で予防保全ができれば大変お得である。

同じ現象を見てもそこから改善のヒントや、そこにある失敗のリスクを見分ける事が出来る人と、できない人がある。この能力は天性の能力ではなく、訓練で身につく能力だと思っている。
書物からも勉強できるがこの手の能力は実践訓練が一番身につきやすい。


このコラムは、2008年8月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第48号に掲載した記事です。

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米FDA、中国に初の海外事務所 食の安全問題に対応

 【シカゴ=毛利靖子】米食品医薬品局(FDA)は16日、今年末までに中国に初の海外事務所を開設する計画を明らかにした。インドや中南米にも事務所を新設する。新興国から輸入した食品や薬品に有害物質が混入する事件が相次いでおり、議会が安全対策を求めていた。

 中国ではまず北京に設け、来年には上海と広州にも拠点をつくる。係官を常駐させ、中国政府の協力を得ながら現地の工場を監視し、衛生管理が米国の安全基準に適合しているか調べる。インドにも複数の拠点をつくる方針で、ニューデリーへの進出を決めた。

(NIKKEI.NETより)

輸入時の抜き取り検査で保証するのではなく、現場に出向き保証をする体制を作ろうという考えであろう。

すばらしい考え方だと思う。
品質保証も同じ考えが適用できる。受け入れ検査を実施しても抜き取り検査であり、どんなにがんばってもAQL=0.45%の検査をするのがせいぜいだろう。これは言い方を変えれば、0.45%の不良は許すということだ。

製品の安全に影響を与える部品は不良率0%を保証したい。例えば電気製品の安全規格関連部品や自動車に使われる部品などに不良があれば、火災事故、人身事故につながりかねない。このような部品を0.45%まで不良を許容するという考え方そのものが相容れないモノだ。

それを防ごうと思うと全数検査となり、大きな検査コストがかかる。
そのため生産現場に行き、製造工程が品質を保障できるものになっている事を保証する、という考え方を取った方が合理的だ。

具体的には定期的に生産現場を監査し、生産工程が品質を作りこめる様になっていること、不良を流出させない仕組みが機能している事を確認・保証することになる。


このコラムは、2008年10月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第56号に掲載した記事です。

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トヨタリコール問題・部品共通化について

 今度ばかりはさすがにヤバイ。
世界一の自動車メーカ、超優良企業のトヨタといえど、今トヨタは存続の危機に直面している。1950年労働争議により直面した経営危機以来の大ピンチだ。

世間では、一連のリコール問題の深層を探り、問題の真因を捉えようとする動きが活発になっている。

今回目にしたコラムは、部品の共通化とリコール問題について検討している。『「大型リコールの原因は部品共通化」のウソ、真因は製品の品質検証体制』では、筆者の日野氏は部品共通化擁護の立場でコラムを書いている。

トヨタは、設計効率の向上、生産効率の向上のために部品の共通化を強力に推し進めて来た。今回のリコール問題の拡大は「部品の共通化」にありとする一部の議論に対し、日野氏は「部品の共通化」は表層の問題点であり、真の問題点は「部品の共通化を品質保証できていない点にある」と評論している。

私流に言わせてもらえば、品質保証が出来ていない部品の共通化などありえない。ただ同じ部品を使いまわしているだけである。部品の共通化というのは、適用できる設計要件を明確にした上で、その品質を保証できるということだ。共通化は、設計の標準化、部品の標準化のプロセスを経て達成される。

元々部品・モジュールは特定の動作環境の下で設計され、検証・評価されている。それをそのまま共通化部品として取り扱うわけには行かない。当然動作環境の変動により、見えていなかった問題点が顕在化することがありうる。

部品・モジュールの機能に着目してブラックボックス化してしまうと、大きな過ちを犯す。動作環境、製造環境などの設計要件を明確にしておき、共通部品を選択する設計手順を標準化しなければならない。

この様な過程を経て、部品の共通化は設計ミスの排除、設計効率の向上、生産効率の向上、在庫量の削減、コストダウンに貢献することが出来る。

しかし極度の共通化は、設計の自由度を奪う。
また共通化をするということは、進歩をいったん停止するということである。

車を嗜好品として考えたとき、部品の共通化はデザインの自由度を奪うことになる。車は単なる移動手段ではない。所有する喜び、運転する喜びをユーザに与えるべきものだ。

元々トヨタはそのような車造りが下手だ。レクサスからトヨタの名前を排除しているのもその現われだろう。
トヨタよりはホンダ、Panasonicよりは(昔の)Sonyの製品の方が、ワクワクするのは私だけではないだろう。

インドや中国メーカによる車の価格破壊に付き合う必要はない。
消費者の価値観に対しきちんとコストをかけるモノ造りをすれば、高くても売れるはずだ。

トヨタは量の追求で大きくなった。一定の量を生産していないと利益が出ない構えを作ってしまった。残念ながら、低価格車にも対応してゆかなければならない体質が出来てしまっている。

車が単なる移動手段であったときは、安い車を市場投入すれば右肩上がりに売り上げも利益も伸びる。しかしそのような市場で利益を上げ続けるのは困難だ。コストダウンに明け暮れ疲弊する。そしてある日金属疲労が限界点に達したように、ポキッと折れてしまう。品質不良による損失は、直接利益の部分をマイナスする。それをカバーするための売り上げは10倍以上は必要だろう。

日本の時計メーカは、高品質・高機能な時計を大量に生産し、同時に貧乏も量産してしまった。その間スイスの高級時計メーカは、顧客の価値観にしっかりコストをかけ、高級品を少量だけ作り生き残っている。

日本はこの様なモノ造りがうまくできていない。
大量同一規格製品の市場は中国にくれてやり、魅力的品質製品のモノ造りに転換してゆかなければならないだろう。


このコラムは、第143号2010年3月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第143号に掲載した記事です。

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バッテリー積み忘れ

救急車にバッテリー積み忘れ電気ショックできず

 東京消防庁は1日、救急車に載せた除細動器のバッテリーが取り付けられていなかったため、心肺停止状態に陥った男性に電気ショックを施せなかったと発表した。

 男性はその後、搬送先の病院で死亡が確認されたという。同庁は「病院の医師は除細動器を使えたとしても効果が期待できなかったと説明した」としている。

 コロナ禍で救急出動の要請が増えており、同庁によると、男性が搬送された1月31日は管内の救急隊の98%が出動していた。このため、救急隊の経験者らによる非常用の救急隊を編成しており、今回の隊もその一つだったという。

 この隊は31日午前10時35分ごろに通報を受け、丸の内消防署から出動。東京都新宿区の70代男性宅に到着した時には、呼吸と脈があったという。

 搬送中に男性が心肺停止状態に陥ったが、バッテリーが装着されていなかったため、除細動器が使えなかった。搬送先の病院の医師に引き継ぐまでの約12分間、心臓マッサージや人工呼吸などの蘇生措置を施したが、電気ショックはできなかったという。男性はこの日、死亡が確認された。同庁は「事前点検が不十分だった」としている。

 丸の内消防署の斉藤悦弘署長は「二度とこのような事案を発生させないよう、再発防止対策を講じるとともに信頼回復に努めてまいります」とのコメントを出した。

朝日新聞(2月1日朝刊)より

 AED(除細動器)が使えてもこの男性が助かったかどうかはわからない。
しかし遺族としては残念な思いを持っただろう。当然再発防止を行い、全国の消防署に徹底してほしいモノだ。

私たちの仕事で同様なリスクは無いかも知れないが、○○がなくてラインが止まった、とか不良が発生した、というトラブルは発生する。

AEDの写真を見ると本体の内部に電池が入っている様に見える。
記事の「バッテリーが装着されていなかった」というのは実際に電池が入っていなかったのだろう。さらに電池が入っていても、電気の残量が足りていないという場合も想定しなければならないだろう。

生産現場でも同様なことは発生する。
組み付ける部品が足りなくなりラインが止まる。部品が間違っている。などを想定すればよかろう。

製造現場ではミズスマシなり班長工程を巡回して確認・補給している。

消防署も同様に、予備のバッテリーを携行する。始業時の点検でバッテリー残量を確認する。という手順を追加すればよさそうだ。予備のバッテリーを違う機種のものを携行しない様に、予備バッテリー専用の袋を用意し写真でも貼り付けておけば万全だろう。


このコラムは、2022年2月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1255号に掲載した記事です。

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小林製薬:その後

 ジェネリック薬製薬・小林化工が、水虫薬生産時に睡眠導入剤を使用した事件が昨年発生した。
この事故に関して考えたことを、以前メルマガに書いた。
水虫薬に睡眠剤誤混入

サワイグループホールディングスが小林化工の工場、従業員を買収するというニュースが出ていた。

「睡眠剤混入の小林化工、サワイに後発薬全工場を譲渡」

 サワイグループホールディングス(GHD)は3日、品質不正問題が発覚した小林化工(福井県あわら市)から後発薬の全工場と関連する部門の人員を譲り受けると発表した。物流や研究開発の拠点も譲り受ける。

以下略

全文

この様な人為ミスを防ぐにはどの様なアプローチを取ったら良いか、という観点で対策を考えてみた。

しかし対策を実施するよりも、企業の存続が危うくなってしまった様だ。
万全の対策を実施しても、経営が成り立たなかったら意味がない。

製薬作業を間違えてしまった従業員はどうされたのだろう?
会社には居づらくなってしまっただろう。
経営者は身売りをして仕事を失ってしまっただろう(企業の売却により金銭を得たかもしれないが、薬害を受けた方や亡くなってしまった方への賠償が有るのではなかろうが?)

法令に従わない作業をした(作業指示した)責任は当然重い。

わたしたち過去の事件から「法令遵守」とお題目を唱えるだけでは足りない。
職場環境、作業方法を整備し、作業そのものが法令違反が起き得ないようにしなければならない。


このコラムは、2021年12月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1225号に掲載した記事です。

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指差喚呼

 「指差喚呼」とは鉄道の運転手がやっている指差し点呼確認動作のことだ。
例えば列車運転手は出発前に前方にある信号機を指差し「出発進行」と発声する。これは出発(信号)進行(緑)という意味の出発時の指差喚呼だ。出発信号等が赤色点灯ならば「出発停止」と点呼し発車しない。

運転手、車掌、駅職員皆がこの指差喚呼を行なっている。万が一事故があれば何百人、何千人の命が危うくなる。従って危険なところだけで指差喚呼をするのかというと、そうではない。習慣とするためにあらゆる動作で指差喚呼をしていると思う。

工場でも指差喚呼を取り入れると良い。
プリント基板に部品を挿入する作業員が、一斉に指差喚呼をしていては騒々しくていけない(笑)しかし自分が挿入した部品は指差し心の中で数を数える。

部品の出庫・準備、設備の準備・設定など生産に重大な影響を与える作業は型通りに指差喚呼をした方が良いだろう。

ヒューマンエラーに対して作業者に対し「再指導・注意」などという対策より「指差喚呼」導入のほうが効果がありそうだ。


このコラムは、2022年2月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1259号に掲載した記事です。

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ベルトコンベア信仰

 生産現場の改善で「ベルトコンベアを使う」という方法を考える人が多いと感じる。一方でチェーンソーを持ち込んで顧客生産現場のベルトコンベアを切り刻む、というパーフォーマンスをされるカリスマコンサルタントの話を聞いたこともある(笑)

私はそんな過激なことはしないが、ベルトコンベアの効果はあまり感じない。

昔(20世紀末)に指導していた台湾資本の生産委託先は、全てベルトコンベア式の生産だった。大勢の女工さんがベルトコンベアの前に座り、コンベア上に流れてくるプリント基板に電子部品を何点か挿入する、というスタイルだ。この方式が有効になるのは、コンベアからワークを下ろさずにコンベア上で部品挿入ができる場合だ。この方式の特徴は一人当たりの挿入部品点数は少数となり、作業員は大勢となる。

例えば昔のデスクトップPC用の電源ユニットのように、多くの出力ケーブルを挿入する工程がしばしばボトルネックとなり、多くの問題を引き起こす。

ベルトコンベアの利点は,ワークの取置きが不要となること、タクトタイムが守られることくらいしかない。従ってコンベア上で作業できない場合、タクトタイムをうまく設計できない場合などはベルトコンベア生産は不利となる。

例えば複数の検査員で検査する作業のように,ワークを手に取って裏表を見る作業はコンベア方式は向かないだろう。
その他にもコンベア方式は、
検査済み・未完の識別をする必要がある。
不良発見の例外処理が発生すると未検査ワークがどんどん流れてしまう。
コンベアからの取置きの無駄。
などの問題が発生する。


このコラムは、2021年7月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1158号に掲載した記事です。

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