カテゴリー別アーカイブ: 品質保証

安全規定の遵守

 先週のメルマガで、次の様な安全規定の不遵守問題をご紹介した。
お客様の工場監査で耐圧検査員の感電防止対策が不十分と指摘を受け、作業員にゴム手袋を着用する様に作業手順書を改訂し、対策とした。お客様監査官は、この対策に満足していただけだが、現場はこの規定を守らない。手袋は検査台の引き出しにしまわれており、顧客監査がある時だけゴム手袋を着用する様になった。

耐圧検査は、3000Vの電圧を製品に印加する検査である。通常は検査作業者が高電圧に触れる事はないが、想定外の故障などを想定し危険回避しなさい、と言うのがお客様監査官の指摘だ。

極端な考え方をすれば、仕入れ先の従業員が感電しようがしまいが、ちゃんと良品が出荷納品されれば、顧客は問題ない。自社のメリット、都合だけに焦点を当てず、取引先工場の作業安全にも配慮する。物を買う・売るの力関係だけではなく、互いのメリットを考慮した監査をしコメントをする、監査官としてはこういう心がけを持たねばならない。

しかしゴム手袋着用の対策書に満足した所は、現場監査官としては感性が不十分と言わねばなるまい。私ならば、この対策書を突き返えす。

ゴム手袋の中は汗でびしょびしょになり、作業員は不快感に耐えられずゴム手袋を着用しなくなる。こういう事が容易に想像出来る。そして現場の班長・組長も作業者の気持ちが分かるので、安全規定違反と知りつつ容認することになる。

規定はあるが、守らない。こういう事態を許してしまうと、規定はお客様監査のためにあり、守る必要はないと言う、悪しき風土が蔓延することになる。

お約束通り、耐圧検査員の安全対策をどう考えたら良いか、事例を紹介しよう。

通常は、耐圧検査中は被検査製品に触ることができない様にカバー付きのフィクスチャー(被検査製品を検査装置と接続し、固定する治具)を作る。カバーにリミットスイッチを付けておき、カバーが閉じている時だけ検査電圧が出る様にインターロックを付けておく。こうすれば、耐圧検査中は誰も製品に手を触れる事は出来ない。

ただし、フィクスチャーを作るためにはコストがかかる。
基本部分は共用出来る様にするにしても、全ての機種にフィクスチャーを準備するためには相当のお金が必要だ。指摘を受けた顧客の製品だけ、安全フィクスチャーを使用するのは、上述の悪しき風土の一歩となり得る。

念のために申し上げておくが、従業員の安全は全てに優先する。費用と安全がトレードオフ関係になることがあってはならない。機種が少ない、類似の形態でフィクスチャーが統一出来る、などの事情が有れば、安全フィクスチャーを作る事を強くお勧めする。

しかし費用対効果は考えても良かろう。同等の効果で、もう少し安価な方法をご紹介しよう。

  1. 光電スイッチを使う方法。
     被検査製品と作業者の間に、エリアタイプの光電スイッチを設置し作業者の手が光電スイッチを横切ったら、検査電圧が落ちる様にインターロックする。
  2. 手を近づけない工夫をする。
     耐圧試験開始のスイッチを外部スイッチとする。大方の耐圧検査装置には外部スイッチを接続するコネクターが背面についている。外部スイッチは2個直列接続とし、検査台の手前、検査員が左右の手を置ける
    場所にスイッチを1個ずつ左右に配置する。プレス機の起動スイッチと同じ考え方だ。左右両手で操作しないと起動しない。従ってプレス機に手を潰される事は無くなる。耐圧検査も同様に、感電する事は無くなるだろう。
    検査開始スイッチが手元に来るので、検査装置まで手を伸ばしてスイッチを押す必要は無くなる。安全向上ばかりではなく、作業負担の削減にもなる。

作業者の安全意識を高めるために、検査中は左右のスイッチの所に手を置いておく様に指導をする。
こうしておけば、お客様監査官に対して、作業規律の良い工場と言う好印象を与えることができるだろう。

これらの方法をご参考にされ、独自の方法を考えていただければ光栄だ。
良いアイディアがあれば、ぜひ教えていただきたい。

本件にご興味がおありの方から、メルマガ配信後すぐにメールをいただいた。

I様は偶然同じ問題を抱えておられ、フィスチャーを作ってみたが装着のため作業がロスとなり、更に良い方法をご検討中だった様だ。

T様からは、具体的に蒸れないゴム手袋のアイディアをお寄せいただいた。
蒸れないゴム手袋を開発出来れば、耐圧検査員だけでなく、多くの人達の福音となりそうだ。手袋メーカの方がおられればぜひ蒸れないゴム手袋の開発をお願いしたい。


このコラムは、2013年12月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第338号に掲載した記事に加筆しました。

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JR北海道、データ改ざん「9部署で」 社長陳謝

JR北海道、データ改ざん「9部署で」 社長陳謝

 衆院国土交通委員会は22日、JR北海道の一連の不祥事を追及するため同社の野島誠社長らを参考人として招き、集中審議を開いた。野島社長は函館保線管理室など9部署でレールの検査データの改ざんがあったことを明らかにした。改ざんが全社的に行われていた疑いが強まった。

 野島社長は冒頭、「国民の多くに多大な迷惑をかけ、おわびします」と陳謝。「日々の安全を確認し、私が先頭に立って再発防止に努めたい」と述べた。委員からは安全意識の欠如や内部統制の不備を指摘する声が続出し、野島社長は「反省している」と繰り返した。

 JR北海道でレールを点検・補修する保線部署は44カ所あり、これまでに函館保線管理室で検査データの改ざんがあったことが判明していた。

 野島社長は答弁で、新たに8つの保線管理室で改ざんが見つかったことを認め、改ざんの背景には「業務の集中や若手社員の技術不足など様々な問題が絡んでいる」との認識を示した。ただ、動機や組織性は「調査中」と述べるにとどめ、詳細な答弁は避けた。

 同社には経営幹部らが輸送の安全確保を議論する「安全推進委員会」がある。野島社長は「トラブルの報告にとどまり、十分な審理もしていなかった」と述べ、委員会が機能していなかったことを認めた。また、2011年の石勝線の脱線・火災事故を受け安全基本計画を策定した後もトラブルが多発したことには「計画を実行に移したが、スピードが足りなかった」と釈明した。

 同社では9月の国交省の特別保安監査で270カ所でレール異常の放置が発覚。追加監査も踏まえ、同省は2回の改善指示を出した。今月には監査の前に一部現場でレール検査データを改ざんしていたことが発覚し、同省は現在3回目の監査に入っている。

 JR北海道の経営陣が一連の問題で国会に呼ばれるのは初めて。国交省によると、JR幹部の国会招致は05年のJR福知山線脱線事故で、当時のJR西日本社長を呼んで以来。

 太田昭宏国土交通相は22日午前の閣議後の記者会見で「(参考人招致で)JR北海道が率直な報告をすることを期待している」と話した。

(日本経済新聞・電子版より)

 新聞記事だけで判断するのは公平性に欠けるが、野島JR北海道社長の衆院参考人質疑の応答はちょっとお粗末だと思う。

「日々の安全を確認し、私が先頭に立って再発防止に努めたい」と述べただけでは誰も安心出来ないし、問題の再発が防止出来ると言う確信も持てない。組織のトップが先頭に立って再発防止をするのは当たり前だ。「反省している」では無く、どのような対策を打つのかを明確にする必要がある。

原因の特定も出来ていないようでは、有効な対策など期待出来ない。
「安全推進委員会」が「トラブルの報告にとどまり、十分な審理もしていなかった」と言うのでは、何のための安全推進委員会なのか分からない。トラブル報告一つずつに、きちんと有効な再発防止が出来ている事を確かめて初めて安全推進委員会と言える。
この様な発言をすると言う事は、野島社長は安全推進委員会に出席していたのだろうかと言う疑念も出て来る。安全は経営のトップに掲げて達成しなければならない目的のはずだ。一番優先順位の高いはずの会議に経営トップが出席していないと言う事は、「安全第一」はただのお題目だと、従業員は理解するだろう。

このような問題は、工場の中でもしばしば発生している。
あなたも社内を見直してみてはいかがだろうか。問題が発生してからでは遅いのだ。

私が指導して来た中国工場の現場でも、データの改ざんはしばしばあった。
実例を紹介しよう。

  • 受け入れ検査の偽造
    板金部品の受け入れ検査記録を見てみると、いわゆるAQL検査による抜き取り検査をしているはずだが、各ロット2個分のデータしか記録されていない。
    作業員に理由を聞いてみると、記録用紙に抜き取りサンプルのデータを書くスペースが無いので、代表値(最初のサンプルと最後のサンプル)だけを記録していると言う。
    その説明を聞いて気が付いたが、作業員一人で検査出来る物量以上のサンプルを検査しなければならない様になっていた。作業員は、AQL基準には従わず、各ロット2個だけ検査して作業を間に合わせていた。
  • IPQC(工程内検査)の検査データ捏造
    IPQCは2時間ごとに、半田ごての温度、絶縁抵抗を測定することになっていた。
    しかし現場に巡回して来たIPQC検査員は、絶縁抵抗測定器を持っておらず、全て10MΩ以上と記入していた。検査員に理由を問いただすと、自分が使っている絶縁抵抗計が壊れ修理中だと言う。
  • 安全規定の非遵守
    工程内検査で絶縁耐圧検査(3000Vを印可する検査)は安全のためゴム手袋を着用して作業をする規定になっている。しかし検査作業員は顧客監査時以外は誰もゴム手袋を着用していない。それでも作業チェックリストにはゴム手袋着用の欄にレ点が入っている。
    これは作業員に聞いてみるまでもない、夏期にゴム手袋をして作業をすれば、5分もしないうちに手袋の中は汗まみれとなり、気持ち悪くて作業どころではない。

これらの「不正」に対しどのような対策を打ったら良いだろうか?
「従業員の品質意識を高め、再発防止に努めます」と言う対策で、再発しないと確信出来るだろうか?

勿論従業員の品質意識を高める事は必要だ。しかしこれらの問題は、品質意識が低いから発生したのではない。ちゃんと理由がある。
・時間が足りない
・必要な測定器がない
・汗で気持ちが悪い
これらの理由に対して、きちんと対策を打たねば必ず再発する。


このコラムは、2013年11月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第337号に掲載した記事に加筆しました。

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免震データ改ざん問題

東洋ゴム社長、月内にも「経営責任含め再発防止策」免震データ改ざん問題で衆院参考人招致

 東洋ゴム工業(大阪市)が免震装置に使うゴムの性能データを改ざんしていた問題で、衆院国土交通委員会は8日、同社の山本卓司社長らを参考人招致し、集中審議した。山本社長は再発防止策について、外部に依頼した調査結果を5月中旬にも受け取った後、「経営責任の明確化も含め1~2週間で取りまとめたい」と述べた。自身の進退についても検討する考えを示した。

 同委員会は開発担当の社員が不正に関わった経緯や、性能不足の免震ゴムを製造・出荷し続けた社内の品質管理などについて追及。山本社長は「建物の所有者ら国民の皆様に大変な心配とご迷惑をおかけした。おわび申し上げる」と改めて陳謝し、「企業風土の体質まで踏み込み、会社を立て直すという意欲で取り組みたい」と述べた。

全文

(日本経済新聞電子版より)

 中国で発生した四川汶川大地震の時は、学校が倒壊し多くの子供達が犠牲となった。日本の東日本大地震では被災者が学校で避難生活をしているのをTVで見た中国人達は、日本の耐震建築技術が高いのを羨んでいた。
台湾中部大地震後は、日本の制震・免震技術を導入する建物が増えたと聞く。
「地震大国」日本の技術は各国から尊敬を集めていたのだが、今回の事件で信頼を失ってしまったかも知れない。

今回は製品認可を受ける時に提出したデータに改竄が有った様だ。
同様な問題は、自動車のリコール隠しから期限切れ食材の使用まで色々な業界で発生して来た。そして多分全てのケースで、問題は明るみとなり、企業責任を追及されることになった。

実際には、我々が見聞きしている問題は氷山の一角だけなのかも知れないが、不正を隠したまま経営が繁盛する事はあり得ない。経営者にも従業員にも良心が有り、その後も清々と事業が発展して行く事は無いだろう。

安全、品質に優先する経営指標などは無い。
品質部門の責任者は、経営者と刺し違えても品質を守るくらいの気概が必要だ。

私は前職時代に品質保証部門長をしていた。
品質部長には、品質に疑義があれば出荷を停める権限が有り、それを覆せるのは事業部長だけだった。
当時の会社を今でも誇りに思っているが、全社員が品質に対して真摯な姿勢を持っていた。

当時、新製品の第一ロット生産の後に「出荷判定会議」を実施していた。
この会議の目的は、初回量産の出来映えから継続的に生産が可能かどうか、品質保証が可能かを判定する事に有る。

品質保証部長は、出荷判定を合格とし初期流動管理のフェイズに移行するか、又は不合格とし初回出荷を停めるかの二者択一の判断をしなければならない。
この出荷判定会議で、私は一度だけ出荷停止をしたことがある。
直行率(全ての工程内検査を一発で合格する率)が99.3%であり、合格基準を満たしていたが、0.7%の不良が全て同じ部品の同じモードの不良だった。

出荷判定不合格とし、翌日の初回出荷を停止した。そしてその足でお客様の工場に出向き事情を説明した。お客様に迷惑をかけられないので、該当部品は全てセカンドソース品と交換して再検査し出荷の準備を整えていた。
当然叱られる事は覚悟していた。しかしここまで説明し終えたら、お客様から「良くやった」と褒められた。

その後、部品メーカから不良解析報告があり、不良のトランジスターは設備の不調により、チップがリードフレームにきちんとボンディングされていない物が混入していたと言うロット不良だった。

このトランジスターは、製品の過電流保護回路に使用しており、我々の製品検査合格品の中にも不良のトランジスターは混入しており、環境温度によっては、早めに保護回路が働いてしまうことになる。
安全上は問題ないが、エンドユーザから見ると夏場に空調が壊れたオフィスで製品を長期間稼働させた時に、突然電源が切れた様な動作をすることになる。

出荷判定時には、不良原因もリスクの大きさも不確かだったが、私の出荷停止判断に異を唱える者は一人もいなかった。一番出荷したいはずの工場長も私の判断を支持してくれた。

この愚直さが品質を保証する者の姿勢だと思う。
どうせデータを少しくらい改竄した所で分からないだろう。
少しくらい賞味期限が過ぎていても味は変わらないだろう。
と言う考え方は、絶対に上手く行かない。
お客様は騙せるかも知れないが、自分は騙せないからだ。


このコラムは、2015年5月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第423号に掲載した記事に加筆しました。

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新幹線緊急停車、1人けが 時速285キロ、部品落ち停電

新幹線緊急停車、1人けが 時速285キロ、部品落ち停電 福岡

 山陽新幹線の小倉(北九州市小倉北区)─博多(福岡市博多区)間で8日、停電が起きて列車が緊急停車し、乗客1人がけがをする事故があり、福岡県警は9日、業務上過失傷害容疑での立件も視野に、車両を実況見分した。JR西日本によると、停電の原因は車両から落下した部品が架線に接近してショートしたためで、部品の固定が不十分だった可能性があるという。

(以下略)

(朝日新聞電子版より)

 事故車輛の写真を見ると、落下した部品が窓のすぐそばにぶつかっている。少し間違えば、落下部品は窓を直撃し乗客に大怪我をさせたかもしれない。

落下した部品は車輛下側に取り付けられたアルミ製カバーの一部。車輛下部のモーターやブレーキを守るため車輛下側を覆っている。カバーが外れ、風圧で車体にぶつかりながら送電線まで舞い上がった様だ。

カバーはネジ2本で固定する構造になっており、ネジは見つかっていない。となりのカバーのネジも1本なくなっており、1本は緩んでいたと言う。

保守点検作業に何らかのミスが有ったのかもしれない。JR北海道では点検作業データ捏造事件が昨年発覚しており、JRの保守点検作業に対する信頼感が揺らぐ事故だ。

事故後の調査で、事故車輛は試験走行に使っている事が判明している。
試験走行後に行われた確認作業でカバーを外し、それが正規の手順で復旧確認されなかったのではないだろうか?

実は工場でも同様の事故はしばしば発生している。
工程内不良品を、班長が修理し正規の工程を通さずに、直接梱包工程に戻した。
開発部門が手造りした、エンジニアリングサンプルをそのまま顧客に出荷した。

上述の2例共に、工程内でQA検査をすると言う正規の手順を外れたため、顧客に不適合品を流出させることになる。

この不適合品の流出は、手順の不適合だけでは発生しない。修理品、サンプルに不適合がなければ何事も起きない。従って手順に不適合が発生していても気が付いていない場合もありうる。

非定常作業にその様な潜在リスクが有る。
対策は「非定常作業を定常作業化する」ことだ。逆説的な言い方だが、例外的作業にリスクが有るので、例外作業を正規作業に乗る様にルール化すれば良いのだ。

工程内不良を修理した場合、再投入する工程を決めておき、工程内QA検査を通る様にする。
顧客に出荷する製品はサンプルと言えど、製造部門で製造する。
この様にルール化しておけば、正常に生産した製品と同等の検査が行われる事になる。


このコラムは、2015年8月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第437号に掲載した記事に加筆しました。

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続・四川航空機事故

 先週のメルマガで四川航空機の緊急着陸事故をお知らせした。概要は以下のとおり。

中国・重慶からチベット自治区ラサに向かっていた四川航空エアバスA319型機(乗客・乗員計128人)が、高度約10,000m上空を飛行中に操縦室の窓が突然、破損して脱落。副操縦士が外に吸い出されそうになり、成都・双流国際空港に緊急着陸。副操縦士と女性乗務員が軽い怪我、乗客に負傷者なし。

まだ事故原因となった窓ガラス脱落の原因は発表になっていない。先週私はメンテナンス時の問題を推定した。その後のニュースによると、事故機体は11年に同航空が導入。飛行時間はのべ1万9912時間で、落下した窓ガラス周辺を含め、最近15日間に修理した記録はなかったという。それでもメンテナンス時の作業ミスの可能性は残っているだろう。

今回再び取り上げたのは、以下のような記事を見かけたからだ。
米華字メディア『多維新聞』は以下のように指摘している。

“ネット上ではこの出来事を「中国版ハドソン川の奇跡」と称し、乗客乗員の命を守った機長に対する絶賛の嵐が吹き荒れていると紹介。そのうえで「よくよく考えると、恐ろしい。最近の飛行機は手動操縦の機会が少なくなっているからだ。もし機長に空軍での操縦経験がなかったら、大惨事になっていたかもしれない。事故の原因を究明し、四川航空の責任を追及せよとの冷静な声は、ネットユーザーの大絶賛の前に隠れてしまっている」と指摘している。”

『多維新聞』は反政府系のメディアなのだろうか(笑)
ネットでの大絶賛が、真の原因追求を阻害している。そしてそれを演出しているのが政府筋だとすると、私が期待する原因調査の公開はないのかも知れない。

しかし上記の記事には承服しかねる。
「事故の原因を究明し、四川航空の責任を追及せよ」というのが冷静な声だとしているが、事故原因がまだ判明していないのに「四川航空の責任を追及」という言葉が出てくるのが奇異だ。こういう声が冷静だとは思えない。事故原因の究明は、事故原因の責任主体を明らかにすることも含まれる。その責任主体をあらかじめ明示して事故原因究明を行う、という点に全く承服できない。

大げさに言えば「魔女狩り」だ。あいつは魔女だ、と決めて証拠を集める。
こういう手法では、有効な再発防止を考えることは不可能だ。

同様に「事故機は天津の工場で組み立てられた」という意見(真実かどうか判定できないので「意見」と表記する)も、原因分析にバイアスをかける作用を持つ。

原因分析に対して、なんら仮説を持たずに立ち向かうことはなかろう。しかしその仮説が「漏れなくダブりなく」で列挙されており、事実に基づいて採否を判断しなければならない。

私たちの製造現場で起きている問題の原因分析や、改善活動の現状把握も同様だ。予断を持って事に当たれば正しい判断や分析はできない。


このコラムは、2018年5月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第673号に掲載した記事に加筆しました。

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四川航空機事故

 

「中国機、1万メートル上空で窓脱落 体の半分が外に」

 中国メディアによると、中国・重慶からチベット自治区ラサに向かっていた四川航空のエアバスA319型機(乗客・乗員計128人)が14日、成都に緊急着陸した。高度約9800メートルの上空を飛行中に操縦室の窓が突然、破損して脱落。副操縦士が外に吸い出されそうになり、操縦室内の気温も零下20~30度に急低下したという。

 中国メディアの取材に応じた機長の話によると、窓が割れたのは成都まで100~150キロの地点。副操縦士の体の半分が操縦室の外に吸い出されたが、シートベルトをしていたため、転落せずに済んだ。副操縦士は顔と腰を負傷した。

全文

(朝日デジタル)

 重慶や四川の中国企業の指導で四川航空は何度か利用したことがある。他人ごとではない事故だ。
5月14日に発生した事故なので、まだ事故原因などの発表はない。

最近同種の事故が発生している。
「女性の上半身が機外に、乗客ら引っ張り戻す 米国機事故」

こちらの事故は、1万m上空を航行中のノースウェスト機で客席の窓が割れ女性乗客が吸い出され死亡している。国家運輸安全委員会(NTSB)が調査中だが、エンジンが金属疲労を起こしていた可能性が指摘されている。

四川航空機の場合は操縦席の窓が破損しているので、ノースウェスト機の事故とは違う原因だろう。また1万m上空を航行中だったので、バードストライクも考えにくい。

過去の同様事故を探してみると、1990年6月10日に発生したブリティッシュ・エアウェイズで操縦席の窓が割れ機長が機外に吸い出された事故があった。
この時の事故は、メンテナンス時に規格外のネジ(正規品より短い)で窓枠を固定したことが原因だった。

航空機事故の事故原因は「メンテナンス」に関連するものが多いという印象がある。上記米、英の事例も、御巣鷹山の事故もメンテナンスの問題だった。

我々製造業もメンテナンス直後の事故(災害だけでなく不良発生も含む)発生事例は多くある。この機会にメンテナンス手順、実際の作業、記録方法などを見直してはいかがだろうか。

今回の四川航空機事故は、中国民用航空局が事故原因調査をすると思われる。
公正な調査が行われ、原因が公表されることを期待したい。


このコラムは、2018年5月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第670号に掲載した記事に加筆しました。

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人的要因に対する改善

 5月から隔週で開催しているQCC道場が佳境に入っている。対策実施、効果確認のフェーズに入っている。目標を達成すると年間効果額が100万元、200万元と言うチームがある。大変楽しみだ。

今回は人的要因に対する改善対策のノウハウをメルマガ読者様にもお伝えしたい。例えば人為ミスで発生する不具合、技能の熟練不足で発生する不具合、を改善し不良削減や効率改善の対策を考える場合の考え方だ。

原因分析を「人為ミス」「技能不足」で終わってしまうと、往々にして「教育訓練の強化」「作業指導書に厳格に従わせる」などの抽象的かつ効果を実感出来ない対策となる。多分これでも効果は出るだろう。それは効果を測定する際に、サークルメンバーの思いがバイアスとなり作業員が頑張るからに他ならない(笑)この様な効果は長続きしない。

原因分析を「人為ミス」「技能不足」から更に一歩二歩深める事が、より良い対策を見いだすコツだ。

「人為ミス」がなぜ発生するのか?更に掘り下げると、作業方法が不適切とわかる。どのように不適切か?やりづらい、手間がかかる、と更に問題点を掘り下げる。そうすれば、作業方法を変える、治具を作る、自動化するなどのより具体的かつ効果が実感出来る対策を考えつく事が出来るはずだ。

「技能不足」も同様にどの作業のどういう技能が不足しているか、まで分析を深めれば、どんな作業訓練をすれば良いか、又は新人でも作業出来る様にするためにはどうすれば良いか、と言う具体的な課題を見つける事が出来る。


このコラムは、2017年7月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第535号に掲載した記事に加筆しました。

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データについて

 科学的なアプローチを取ろうと思えば,データが重要であることは皆さんよくご理解しておられると思う.

しかし何のためにデータを取っているのかが明確になっているだろうか?

班長さんが,本日の生産日報を書く.生産日報には生産投入数,生産完了数,不良数などが記入されており保管される.一ヶ月経つと一月分にまとめてファイルに閉じられる.一年経つとファイルから取り出し,紐で閉じ保管用の段ボール箱にしまわれる.

班長さんが毎日残業して日報を書くのは,段ボール箱に保管するためなのか?

活用されないデータはムダである.こんな極端な例はまれかもしれないが,ほとんど同じと言える例を何度も見てきた.なぜそのようなデータを取っているのかと聞くと「ISOのためです」という答えが返ってくるのが通常だ.

ISO9001には生産日報を記録しろと言う要求事項はない.

データを取る目的を明確にし,最適の方法でデータを残し,分析・活用をする必要がある.

例えば,半田槽の溶融半田の温度を測定するのは,設備が正しく運用されていることを確認する意味がある.しかしそれをエックスバー・アール管理図に書き込むのは全く意味がない.

同じくエックスバー・アール管理図を,部品の受け入れ検査に応用している例を見たことがある.具体的にはコンデンサの容量値を受け入れロットごとに抜き取り測定をし,エックスバー・アール管理図に書き込んでいた.一見統計的手法を活用して,データを管理しているように見える.しかし普通は部品工場での生産ライン・生産設備が毎回同じと特定出来ないので,エックスバー・アール管理図で問題を見つけるのはほとんど不可能だ.

不良手直し件数はあるが,不良内容の記録がない.これではデータは改善の役には立たない.

タッチアップ工程に,修正記録用紙があるがタクトタイムから考えて記録をしている暇がない.この様な工程から出てきたデータを分析に使えば,正しい判断は出来ない.

データを記録するのは,管理や改善のためである.
しかしデータだけを眺めているだけでは何も分からない.
データを採取している現場をよく観察しなければならない.


このコラムは、2010年6月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第157号に掲載した記事に加筆しました。

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生産現場の静電気管理

 先週お邪魔した電子応用製品の生産工場は静電気の管理が良くできていた.
導電材料で床が接地されており、作業員は(見学者も)導電性の靴を履いている.

しかしそこまで静電気対策ができているのに作業員はみな静電気防止用のリストストラップを着用している.

この工場はセル方式の生産ラインを組んでおり、作業者は立ち作業である.この場合リストストラップの接地線は、作業者の行動範囲を限定する.又機械取り扱い作業者はリストストラップをすることにより、接地線が機械に巻き込まれるなどの作業安全上のリスクもある.

導電床に導電靴を使用していれば静電気防止ができているのになぜリストストラップまで使用するのか尋ねてみた.管理者の方はお客様の指摘によりリストストラップを使用せざるを得ないとおっしゃっていた.

生半可な知識で生産協力工場の指導をするものではない.

私も前職勤務中にお客様の監査を受けたときに、不条理な要求・指摘を受けることがまま有った.その都度きちんと説明をして納得いただくよう努力をしていた.
中には自説を金科玉条とし聞き入れていただけない場合も有った.

時にはリストストラップの接地線の抵抗が1MΩもある、切れかかっているのではないか.というご指摘を受けたこともある(笑)その都度きちんと説明している.そういう積み上げで監査官の方との信頼関係ができてくるのだと思っている.

中国の工場を指導して回っていたときに、こちらの指摘に対し「すぐ改善します」と素直に受け入れるのだか、次回訪問してみると何もやっていないことがよくあった.「お客さんだから頭を下げておこう」的な発想だろうが、こういう工場は印象が良いだけで内容がまったくない.


このコラムは、2008年1月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第17号に掲載した記事に加筆しました。

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ISO9001導入

 ISO9001を導入したいという台湾資本の工場から引き合いをいただいた.

以前,他の工場をお邪魔したときに通された応接室にISO9001のシステム文書がファイルに入ってでんと飾ってあった.中を見せていただくと案の定一度も読んだ形跡がない.

コンサル会社がシステム文書一式を提供し,手っ取り早くISO9001の認証取得をしたようである.お客様から要求があるからISO9001の認証を取る.商売のライセンスと考えておられるのであろう.ライセンスの維持や更新にコストがかかるのはやむをえないという考えであろう.

しかし本来ISO9001は品質向上・顧客満足向上経営ツールとして活用してこそ導入の意義があると考えている.

この工場は生産現場を見せていただいても,品質に対するまじめな取り組みが見えてこなかった.

そんな経験があったので,今回の引き合いにもあまり乗り気ではなかった.
そんな気持ちで,先方の董事長と電話で打ち合わせをした.

しかし董事長の「ペーパーISOは要らない」の一言で私の心に火がついた.すぐに工場訪問の日程を決めさせていただいた.

問題は11月までに認証を取得したいということだ.
一ヵ月半で「魂の入った品証システム」を構築し,全従業員が魂をこめて運用できるようにするのはほとんど不可能である.
玉砕覚悟の仕事ではあるが,董事長の心意気に何とか応えたいと考えている.


このコラムは、2007年10月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第2号に掲載した記事に加筆しました。

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