月別アーカイブ: 2017年3月

現場監督職の育成

 中国の生産現場を指導する様になって、20年になる。業種にも依存するだろうが、この間の生産現場における班長の役割が変わってきている様に思う。

90年代は、中国のモノ造りは同一規格大量生産のローコスト生産が主流だった。大量に人を投入し同じモノを作り続ける生産だ。安価な労働力が簡単に集まる環境下で、工程分割を細かくし作業員の熟練に依存しないようなモノ造りを目指した。現場の監督職にも、高度な管理能力は要求されなかった。作業者の中から、筋の良さそうな者を昇格させただけ、昇格時の研修もなし。そんな班長が多かった。

作業は上手にできるが、作業員をどう扱えば良いか分からない。
ミスが多い作業者をどう指導してよいか分からず、コピー用紙に「注意して作業します」と何度も何度も書かせる。
夏休みの臨時工として働きに来ている男子学生にすごまれ、指導ができない。

10年ほど前から、現場監督職のレベルアップが必要だと感じる企業が増えてきた様に思う。班長研修に関する相談が少しずつ増えて来た。

さらに最低賃金の上昇や採用難、市場要求変化などによりますます現場監督職の役割は重くなっている。少ない人数で多品種少量生産を実現しようとすれば、作業員の多能工化が必要になる。せっかく育てた多能工に簡単にやめられては困る。
現場監督職はこのような要求に応えなければならない。

作業員の管理が困難なので生産を自動化したいと言うご要求で、お手伝いした工場が有る。同一規格大量生産であり、検査を自動化できる生産であれば、自動化の投資さえできれば、不可能ではないだろう。

しかし人材の育成を放棄してうまく行く企業が有るとは思えない。
どんな業種・業界であろうと最後は人財力の差で業績が決まる。

そのような業界の要求で、中国でTWI(企業内職業訓練)の導入が始まった。
日本産業訓練協会が中国でTWI公開研修を始めたのは2010年だ。
この辺りが、現場監督職育成の重要性が認識され、実際に育成努力が始まった時期ではないだろうか。

TWI-JR公開研修


このコラムは、2015年10月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第444号に掲載した記事に加筆したものです。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

顧客工場監査

 前職時代に、営業職の仲間にお客様を工場見学に連れて来てくれたら受注を確定してやる、と豪語していた(笑)

実際にそういう成果が上げられたのは、自社工場や生産委託先工場で顧客監査を、延べ二、三百回は受けたと言う経験があるからだと考えている。
顧客監査を受ける立場と、生産委託先・部品メーカを監査する立場の両方の仕事をしていた事も大きい。開発設計をしていた頃から、周辺装置メーカ工場を頻繁に訪問していた。述べ回数にすれば、顧客監査の数倍は監査訪問している。

ここ数ヶ月、3社のお客様から同時に顧客監査のご相談を受けている。

実は、顧客工場監査には「コツ」がある。
このメルマガの読者様の中には、顧客監査を受ける立場の方もあり、逆に監査をする立場の方もおられると思う。「コツ」などと書くと、監査官を騙して監査合格を貰う方法の様に思われるかもしれない(笑)
しかしそういう方法であれば、監査官も被監査者も読んでいるメルマガには書けない(笑)
どちら側の方にも参考になる様に書いてみたい。

監査を成長の機会と考える。自分自身の成長もあるが、メンバーの成長機会とする。何でもかんでも一人で監査対応をしない。現場のリーダに説明をさせる。
現場の作業員が直接答えられる様にする。
こういうことができる様になると、メンバーが自信を持てる様になる。

一方監査官は、対応するあなたが何でもすぐに答えることができれば、工場の隅々まで把握出来ていると理解してくれる。しかし少し頭の良い監査官ならば、あなたが帰任した後大丈夫か?と考える。

監査官は対立する相手ではなく、共通の目的を持ったパートナーとして考える。
つまりQCDが整った部材・製品を供給する・調達すると言うのが、双方の最終目的のはずだ。ここに焦点を当てて、監査に望む。
分からない事があれば、教えを請えば良いのだ。

監査官は、監査先に対する尊厳を持ってあたらなければならない。
まずは相手の良い所を探す。悪い所を見つけてダメ出しをするのが仕事ではない。良い所が見つからないのであれば、時間のムダなのでさっさと見切りを付けて帰る。例えば、5Sがきちんと出来ていない、しかし設計力があり安いコストを提案出来る。こんな工場があれば、5Sの改善を条件に採用をすれば、良い部品を安く購入することができるはずだ。
先方の事情を無視して、自分たちの考え方を押し付ける様な事は慎むべきだ。自分たちのやり方が最高だと思って、指導したつもりになっていても、先方の現場に適応出来るとは限らない。ただ相手を混乱させることになるだけとなる。
例えば先入先出の方法は、スペース、在庫品の大きさ、数量、品種の多さ、出庫の頻度など工場ごとに最適のやり方は変わるはずだ。

監査をする側もされる側も、きちんと理論武装をしておく。
少なくともISO9001/14000などの規格に出て来る単語は説明なしで通じる様になっていないと駄目だ。

以前、仕入先のプリント基板工場に顧客監査が入ったことがある。
たまたま品証部門のリーダが休暇中で、組長が対応した。「設備台帳を見せてくれ」と言う監査官の要求に対し、総務部から資産台帳を持って来てみせた。監査官は設備の校正管理状況を知りたくて、設備台帳を持って来いと言っている、と言う事を理解出来なければならない。従って持って来るべき台帳は、資産台帳ではなく、校正台帳だ。
リーダが休んでいた事を悔やんだが、お客様からは教育が不足と叱られた。

監査準備は必ず現場でやる。
監査官になったつもりで現場を見る。現場の責任者に説明をさせる。この様なリハーサルと、その後のフォローを最低でも1回はしておくべきだ。


このコラムは、2014年7月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第372号に掲載した記事に加筆したものです。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】