中国の生産現場を指導する様になって、20年になる。業種にも依存するだろうが、この間の生産現場における班長の役割が変わってきている様に思う。
90年代は、中国のモノ造りは同一規格大量生産のローコスト生産が主流だった。大量に人を投入し同じモノを作り続ける生産だ。安価な労働力が簡単に集まる環境下で、工程分割を細かくし作業員の熟練に依存しないようなモノ造りを目指した。現場の監督職にも、高度な管理能力は要求されなかった。作業者の中から、筋の良さそうな者を昇格させただけ、昇格時の研修もなし。そんな班長が多かった。
作業は上手にできるが、作業員をどう扱えば良いか分からない。
ミスが多い作業者をどう指導してよいか分からず、コピー用紙に「注意して作業します」と何度も何度も書かせる。
夏休みの臨時工として働きに来ている男子学生にすごまれ、指導ができない。
10年ほど前から、現場監督職のレベルアップが必要だと感じる企業が増えてきた様に思う。班長研修に関する相談が少しずつ増えて来た。
さらに最低賃金の上昇や採用難、市場要求変化などによりますます現場監督職の役割は重くなっている。少ない人数で多品種少量生産を実現しようとすれば、作業員の多能工化が必要になる。せっかく育てた多能工に簡単にやめられては困る。
現場監督職はこのような要求に応えなければならない。
作業員の管理が困難なので生産を自動化したいと言うご要求で、お手伝いした工場が有る。同一規格大量生産であり、検査を自動化できる生産であれば、自動化の投資さえできれば、不可能ではないだろう。
しかし人材の育成を放棄してうまく行く企業が有るとは思えない。
どんな業種・業界であろうと最後は人財力の差で業績が決まる。
そのような業界の要求で、中国でTWI(企業内職業訓練)の導入が始まった。
日本産業訓練協会が中国でTWI公開研修を始めたのは2010年だ。
この辺りが、現場監督職育成の重要性が認識され、実際に育成努力が始まった時期ではないだろうか。
このコラムは、2015年10月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第444号に掲載した記事に加筆したものです。
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