月別アーカイブ: 2021年3月

在庫の削減

 例えば、完成品倉庫が狭くなったので何とかしたい、という課題を持ったお客様に、自動倉庫やMRPシステムを提案してはいけない。

それはなぜ完成品倉庫が狭くなっているのか、という本質問題を解決していないからだ。本質問題を解決せずに、システムや自動倉庫を導入してもムダを機械化してしまうだけだ。

いきなり自動倉庫を導入しなくても、今まで2段だった棚を3段、4段に増やす。その結果フォークリフトが必要になる。不必要な管理が増える。その実問題は何も解決されておらず、遠からぬ将来また倉庫が足りないという問題が浮上するはずだ。ただ問題を先送りしただけとなる。

完成品倉庫が狭いという問題の本質的原因に対策を打たねばならない。

なぜ完成品倉庫が狭いのか?
完成品が多いから。なぜ完成品が多い?
出荷量以上に作りすぎるから。なぜ出荷量以上に作る?
まとめて作ったほうが効率が良いから。なぜまとめ造りが効率が良い?
段取り換えに時間がかかるから。なぜ段取り換えに時間がかかる?
……

という具合に完成品倉庫が狭くなってしまった原因を調査し改善しなければならない。

上述のお客様は、段取り換えに時間がかかる、不良率が変動し歩留まりが読めない、などの理由により出荷量に大きな安全係数をかけて生産投入している。これが完成品倉庫が手狭になる根本の原因だ。

この問題を解決しなければ、どんなに良いMRPを導入しても、自動倉庫に投資をしても問題は解決しない。


このコラムは、2011年6月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第210号に掲載した記事です。

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【中国生産現場から品質改善・経営革新】

全てにYESという

 ポジティブな発言が、ココロをポジティブにし、行動をポジティブにする。そして成果がポジティブになる。単純なことだが、これを意識しなくても自然と出来ているかというと、少々自信がない。

少し前に“YESMAN”という映画をDVDで見た。

銀行の融資係に勤めるカール・アレンは、仕事にもプライベートにも「ノー」「嫌だ」「パス」と答える極めて後ろ向きの男だった。だから友達もいなく、夜は一人でレンタルビデオを見る生活だ。唯一の友人も失いそうになったのがきっかけで、怪しいセミナーに参加する。
それ以降何事にも「Yes」としか言わないと決めた。たったそれだけのことで、自分の行動が変わり、周りが変ってゆく。

「自分が変わると、自分の周辺まで変わる」そのメカニズムを考えてみた。
自分の周りで発生していることは、「相対的」なものだ。つまり自分の周りで発生している事象を評価・認識するのは自分の心だ。従って自分の心が変われば、周辺も変わる。このメカニズムを「相対性理論」と名付けてみた(笑)

一見何の変哲もない、アメリカのコメディドラマだが、私に「相対性理論」を思いつくきっかけを与えてくれた。

実はこの映画、イギリスのBBSラジオディレクターの実体験が原作だそうだ。
“イエスマン-”Yes”は人生のパスワード”
原作:ダニーウォレス 翻訳:寺西のぶ子


このコラムは、2010年9月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第170号に掲載した記事です。

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品質改善

 先月の定例セミナーにご参加いただいた方に、生産委託先の品質改善をどうしたら良いかという相談を受けた。

例えばネジを4点締めなければならないところを3点しか締めてない物が見つかり、日本で全数再検査したと言う。大変な品質損失コストである。

工場で検査をさせても無駄なコストが発生する。
品質とコストがトレードオフ関係になる対策はうまく行かない事が多い。工程できちんとネジ4本が締めてある事を保証するようにしなければならない。

作業前にネジを4本取り置き、作業後過不足なくネジが使われている事を確認する。もしあまっていれば締め忘れ、足りなければ製品の中に落ちている可能性がある、ということだ。

問題がおきてから考えるのではなく、事前に問題が起きそうな工程でこういう品質作りこみの仕掛けを用意する。
このような不良未然防止活動で品質損失コストは大幅に減らす事が出来る。


このコラムは、2008年7月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第43号に掲載した記事です。

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生産委託先の指導

 先週のメルマガに読者様からご感想をいただいた。

いつも楽しく「技術者のための中国語講座」を拝読させていただいておりましたが、「中国生産現場から品質改善・経営革新」を登録してからは、身につまされる思いでいっぱいです。

この読者様は一ヶ月中国の生産委託先を指導され、別のメンバーに交代してまた何ヶ月か後に出張されるそうだ。出張指導者がころころ変わってしまいなかなか指導が徹底できないとお感じのようだった。

私も会社勤務時代は、何人かのメンバーで交代に指導をして回っていた。
一時期中国の広東省だけで4社同時に指導していた時があり、とても一人では回りきれなかった。

その時のやり方がご参考になるかもしれないと思い、メールに書かせていただいた。

毎年期末になると翌年の生産委託先の指導計画を作る。
まずは翌年度の出張予算の策定が必要なので、それとあわせて指導計画も作ってしまうのだ。

新製品の立ち上げの時は出荷判定会議を開催、その他の定例指導ではリストアップした指導項目が一年間で一巡するように計画を立てた。

毎回の出張では指導先に指導結果のレポートを残して帰ってくるのだが、これは委託先の工場経営者や幹部に次回までの改善の宿題を伝えるためである。一方内部的には出張者同士の指導レベルの向上に使っていた。出張から戻ると、このレポートをネタにメンバーでミーティングをする。
写真などを元に指摘した内容と、改善結果をディスカッションする。これがメンバー相互で結構勉強になる。

私も部下に、今回も前回と同じ指摘をしているが歯止めがうまく利いていないのではないか、などと指摘を受けていた。こういうディスカッションがお互いのレベルアップにつながる。

次回出張指導する時はこのレポートを持参してゆくので、改善が維持できているかどうかすぐに確認ができる。別のメンバーが指導に行ってもも大丈夫だ。


このコラムは、2008年7月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第44号に掲載した記事です。

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失策は0にできる

 この季節になると、新聞は甲子園一色になってしまう。夏の高校野球を主催している新聞社なのでしばらく我慢するしかない。野球が嫌いというわけではない。高校生の頃は野球をやっていた。通っていた高校には硬式野球部はなく、軟式野球をやっていた。そんなわけで甲子園球場には全く縁がなく、硬式野球に対してコンプレックスさえ持っていた。当時はコンプレックスとは思っていなかったが(笑)

そんな新聞の記事に、履正社・岡田龍生監督の言葉が紹介されていた。

「打率10割は無理でも失策は0にできる」

監督の正確なノックの技術でチームの守備力を高め、無失策で試合に勝つのが履正社高校のチームカラーなのだろう。(打撃力もあると書いてあるが……)

ところで「打率10割は無理でも失策は0にできる」は当たり前だと思う。

相手ピッチャーの力量によっては、バットにボールを当てることすら難しい。ヒットなど望むべくもない。ということはありうる。力量に差はなくとも、打率10割を達成した選手はプロ野球にもいない。

しかし失策ゼロは、簡単に達成できる。
取れそうもない打球は取りに行かなければいいのだ(笑)ボールにグラブが触れなければエラーとはならない。

岡田監督がおっしゃっているのはそんな低レベルの話ではないことは確かだが。

ところで我々製造業にとって「失策」を不良と考えてみると、簡単でなくとも失策はゼロにできると考えるべきだ。「失策」を安全事故と考えれば、失策をゼロにするのは必須である。

ギリギリのところで捕球できるノックを何度も練習する。
我々製造現場では、一度発生した不良は確実な再発防止対策をする。
思考実験であらゆる潜在不良を洗い出し未然防止対策をする。
ヒヤリ・ハットをきちんと表に出し対策をする。
製造業にとってのノックはこうした再発防止対策や未然防止対策を検討する事だ。

野球ではノックは監督・コーチの仕事だが、製造業では従業員全員の仕事だ。


このコラムは、2019年8月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第859号に掲載した記事です。

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暴君・紂王

gòngyuē:“zhòu(1)zhīshànshìzhīshènshìjūnxiàliú(2)tiānxiàzhījiēguīyān。”

《论语》子张第十九-20

(1)纣:殷代最後の王。後に放蕩、暴政の暴君と言われる。
(2)下流:窪地で水が集まる場所。転じて道徳的に不利な地位を意味する。

素読文:
こういわく、ちゅうぜんは、くのごとくはなはだしからざりしなり。ここもっくんりゅうることをにくむ。てんあくみなこれすればなり。

解釈:
子貢曰く:暴君と言われる殷の紂王の悪行も実際はさほどでもなかったらしい。それが後世暴君のように言われるのは、道徳的に不善な環境にいたからだろう。だから君子はそのような場所にいることを憎むのだ。

本当の君主であれば、時代や周囲の環境に流されることなく、不道徳な世の中を改善するのではないでしょうか。子貢の紂王に対する評価は少し甘いように感じます。