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矩を踰えず

yuē:“shíyòuérzhìxuésānshíérshíérhuòshíérzhītiānmìngliùshíérěrshùnshíércóngxīnsuǒ。”

《论语》为政第二-4

素読文:
いわく:“われじゅうゆうにしてがくこころざす。さんじゅうにしてつ。じゅうにしてまどわず。じゅうにして天命てんめいる。ろくじゅうにしてみみしたがう。しちじゅうにしてこころほっするところしたがいて、のりえず。”

解釈:
孔子曰く:“我十五歳にして学問に志した。三十歳で自分の立ち位置を決め。四十歳にて惑うことは無くなった。五十歳で天から与えられた使命を理解し、六十歳にして全てを受け入れる余裕ができた。七十歳で心の赴くままに行動しても道理を踏み外すことは無くなった。”

十五歳:志学、三十歳:而立、四十歳:不惑、五十歳:知名、六十歳:耳順、七十歳:従心

六十代最後の一年で、なんとか耳順の境地に至りたいものです。

派遣をきるな!

 82号のコラム「『うちは派遣を切りません』と言え」と怒るあるメーカーOB」にご感想をいただいた。

Z様からのご投稿
 「『うちは派遣を切りません』と言え」には、反論、大いにあります。派遣社員とは、本来、景気が悪くなるなど、生産を縮小するときには、きれるもの、きられるものだと思います。そういった正社員とは異なるポジション(雇用形態)として存在価値があるものです。
会社のために派遣社員も貢献してきたのも事実です。しかし会社のために貢献しているのは、社員だけでなく取引先(様々なサプライヤー、販売代理店・・・・・)も同じことです。
正規社員と派遣社員では、雇用体系が違うように給与体系も違います。高校新卒の場合、短期的には派遣社員の方が高収入であることは、少なくありません。多くの場合、結果として低賃金なだけで、本来は正規社員と同じ能力、同じ仕事であれば、リスク分高給でなくてはならないのです。
 多くの派遣社員は言います。「本当は正社員になりたい。」その気持ちはわかります。しかし、それと派遣社員の雇用が不安定であると言う処遇は別物です。これを取り違えると「派遣切り=悪」の図式になってしまいます。
「××の正社員になりたい。」と言う気持ちだけに肩入れしすぎると、多分優良企業は、数年すると過剰雇用のため没落する図式ができてしまいます。
 「ものづくり」に関して現実的に考えると、派遣社員の比率を上げるということは、それだけ正社員への負担は重く、正直なところ正社員は誰でも務まる職種でなくなります。
 以前工業高校を卒業して、現業に配属になった新入社員に話したことがあります。「以前なら君らの内のひとりが班長になればよかった。あとのメンバーは班長の指示通り、まじめに仕事してくれればよかった。しかしこれからは違うよ、全員が班長になって、指導や監督をする立場になってもらわなければならない。ただまじめに黙々と仕事するだけの人材を正社員として置いておけない時代になったんだよ。」と。
 かなり冷徹な意見ととられるかもしれません。君はバイヤーとして、ものを買うように人を扱おうとしていると批判されるかもしれません。しかし、僕の反論は、人を扱うようにものを買っています、と。(まったく屁理屈ですね。)
 それであっても、「『うちは派遣を切りません』と言え」と怒るOBのような方を僕は敬愛します。本文を読みましたが、一本筋が通っていますよね。このような方とは、意見が食い違ってもいっしょに仕事できると楽しいですし、勉強になります。

再びZ様からのご投稿だ。

バブル崩壊後に経営者が日本的な経営(長期安定雇用による現場力の向上を目指す)に自信をなくし、アメリカ流の経営手法に盲目的に飛びついたのが、元凶だと思う。

現場の人員を変動経費型にするため、派遣社員、契約社員という需要ができた。需要があるからそれを商売にする会社ができる。と言う訳だ。

派遣会社は安直に人さえ集めれば即経営が成り立つということで、志のない経営者がどんどんそういう商売に参入する。言ってみれば、人を集めて顧客企業に派遣すればそこで現場教育も経験も与えてくれるわけだから、自分達は
人をぐるぐる回しているだけで利益が出る。「モノ造りはヒト造り」の基本が忘れ去られた状態が続いていたわけだ。

またそういう働きかたを選んだ人たちにも責任はあるはずだ。背に腹を変えられなかった人たちもあるだろうが、特に若い人たちが刹那的にその日暮の仕事として派遣労働者というスタイルをとった人たちも有るだろう。

3者共に責任のあることを、人道的な切り口だけで批判したり同情したりするのは意味がない。むしろ口当たりの良い言葉だけで現実を覆い隠す結果になる。


このコラムは、2009年2月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第83号に掲載した記事です。

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「『うちは派遣を切りません』と言え」と怒るあるメーカーOB

 「バカ野郎! なんで派遣社員を切るんだ」。
あるメーカーA社で長年技術者を務めたOBの方が、取材の冒頭で怒り始めた。
取材のテーマは派遣社員に関するものではなかったのだが、たまたまそうした話に及んだのだ。

というのも、A社は2008年後半に派遣社員の雇い止めをすると発表したからだ。
その決定について、このOBの方は非常に不満に感じていたからである。
「X社長は分かっていない」と強い口調だ。
  

(日経ものづくりのコラムより)

こういう時期に痛快なコメントだ。しかもA社は消費者向けの製品を生産している。派遣社員も顧客の一人だ。派遣社員の雇用を守りロイヤリティの高い顧客を確保すると言う考え方もあるだろう。

しかし経営者は別の考え方をしているに違いない。
90年代のバブル崩壊後、経営者はこぞって従来の経営方針に自信をなくし、米国流の経営手法を取り入れていった。
成果主義。株主優先の短期利益主義。そのため現場の固定経費を変動経費化するために正社員を契約社員、派遣社員に置き換えていった。
その結果、現場の力が衰えなかなか立ち直れなかったところへ米国発の金融危機である。

米国流経営手法の表面だけを真似た結果だ。

米国は70年代から日本の追い上げを受け次々と力を落とし始めた。実はこの時米国は、戦後急速に力をつけモノ造り日本の経営手法を研究したのだ。その際に日本に品質管理を伝えたデミング博士の存在が再評価されている。
米国の多くの経営者は、日本に品質管理を導入し日本式経営を熟知したデミング博士の教えを受けたのだ。

米国は製造業のみならず、政府、行政、教育、サービス業などあらゆる業界がデミング博士の教えを受けて国力を回復した。

バブル崩壊後90年代に日本が見た強い米国は、実は日本式の「競争と調和」を取り入れた企業だったはずだ。
そのもっとも日本的な「調和」の部分には目が行かず「競争」の部分のみを取り入れてしまったのではないだろうか。

日本の経営者はもっと自信を持ってよいのだと思っている。


このコラムは、2009年2月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第82号に掲載した記事です。

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パナソニックのレンジ、発煙・発火事故18件

 経済産業省は20日、松下電器産業(現パナソニック)製の電子レンジ(NE―AT80)から煙が出る事故が7日に宮城県で起きたと発表した。事故の恐れがあるとして同社が07年5月からリコール(部品交換など)しているレンジ12機種のうちの一つ。一連の発煙・発火事故は18件目で、いまだに169万台が部品交換していない。

 7日の事故は、レンジ裏側の吸気口にほこりが詰まったまま使い続けたため、内部のはんだ付け部にひびが入って火花が飛び、周りの樹脂に火がついたとみられる。一連の事故でけが人は出ていないが、リコールの実施率は昨年末
時点で12%にとどまり、リコール後も今回を含めて8件の事故が起きている。同社は昨年11月から折り込みチラシを全国で4500万部配って注意を促している。

(asashi.comより)

半田クリープによる事故であろう。
半田クリープと言うのは、半田結合点に機械的ストレスがかかった状態で長期間の間に半田がひび割れてしまう現象だ。温度、機械ストレスの大きさが加速要因となる。

半田クリープが発生した場所が高電圧回路だと今回のようにスパークが発生し、発煙事故につながることもある。

重量部品のリード、半田付け後の機械ストレスなどに気をつけないといけない。

特にPC電源のようにトランス、コイルなどの重量部品があり、かつ部品がプリント基板にぶら下がる形でPCに組み込まれていると、簡単に発生する。リードをクリンチして半田結合点に直接機械ストレスがかからないようにする。重量部品はリードを増やし、リード一本あたりの重量を減らす。ハトメを使い半田接合強度を上げる(片面プリント基板の場合)
半田盛をする。などの対策で半田クリープ発生を回避しておかなければならない。

また作業で、半田付け後に半田結合点に機械ストレスをかけることは禁物だ。

半田クリープこちらも参照ください


このコラムは、2009年1月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第80号に掲載した記事です。

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