11日午後1時ごろ、中部国際空港で、瀋陽行きの中国南方航空698便(エアバスA319型機、乗客乗員42人)が管制官の指示に反して滑走路に進入し、この滑走路に着陸を予定していた全日空機が着陸をやり直すトラブルがあった。国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は事故につながりかねない
「重大インシデント」と位置づけ、12日に調査官3人を派遣する。交信記録などによると、中部国際空港の管制官は午後1時4分、中国機側の求めに応じて滑走路途中からの離陸を許可。その上で、滑走路の手前で待機するよう指示した。中国機は「待機する」と復唱したが、停止線で止まらずに滑走路に進入。管制官は危険を避けるため、8キロ手前まで迫っていた全日空220便(エアバスA320型機、乗客乗員59人)に着陸をいったんやめるよう指示した。
(asahi.comより)
頭が痛い不適合である。
11月5日にご紹介した、
「スカイマーク機、着陸時にカートが動いて客が足を骨折」と同様に、「ついうっかり」事故は再発防止がなかなか難しい。
先回の記事ご紹介したように「ダブルチェック」と「ポカよけ」を仕込んでおく必要がある。
今回の場合「待機する」という復唱がダブルチェック対策として既に組み込まれている。それでもうまく行かなかった。多分復唱そのものが「習慣化」してしまっており、機能していなかったのではなかろうか?
プリント基板アッセイの組み立てでも、電気検査できない部品の極性を目視検査する場合がある。この場合検査漏れを防ぐために、検査済みの部品にマーキングをしたりする。これが一種のダブルチェックの役割を果たすが、マーキングそのものが習慣化してしまい極性が逆の部品にもしっかりマーキングしてある事がある。
今回の事故も「待機する」と復唱しながら滑走路に進入してしまったわけである。復唱そのものが条件反射的に行われ、頭の中は別のことを考えていたのであろう。
この復唱は自分自身によるダブルチェックである。当然自分自身によるダブルチェックよりは、他人によるダブルチェックのほうが効果が高い。
機長以外にも副操縦士がいるわけだから、管制塔の指示に対する復唱は機長、副操縦士の二名で行うようにする。と改善すれば、若干は改善できよう。
しかしこれだけでは不十分だ。
この手の不適合によって人命にかかわる事故が発生する可能性があるわけであるから、発生確率を減らすだけでは不十分である。ゼロディフェクトでなければならない。
「ダブルチェック」以外にきちんと「ポカよけ」を仕込んでおく必要がある。
いずれにせよ、機長が機長としての機能を果たせる健康状態、精神状態である事が前提である。一昔前になるが、日航羽田沖墜落事故の「逆噴射」のように故意に操作されてはどんな対策を仕込んでおいても効果は期待できない。
作業員、職員の健康状態、精神状態が品質に重大な影響を与えるにもかかわらず、意外とお座成りにされていないだろうか。
皆さんの組織では職員の健康状態、精神状態をどのように管理しておられるでしょうか?
このコラムは、2007年11月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第8号に掲載した記事です。
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