田んぼでも証明されたトヨタ式、「豊作計画」の実力


 暑い日も寒い日も田んぼで農作業の助手をしながら、現場で親睦を深め、現地現物で農業を体感。やがて「カイゼン」の勘所をつかんでいった――。
農業と製造業。一見、共通点がなさそうな二つの産業だが、必要な作業を複数の工程としてきちんと定義すれば、トヨタ自動車のカイゼン手法を農業にも施し、作業の無駄を省くことができる。本記事は、このことを実証してみせた一人のトヨタマンの奮闘記である。

日本経済新聞電子版より)

 水田でトヨタ生産方式?と思われた方も多いだろう。しかしこの記事で紹介しているのは、モノ造りそのものではなく、モノ造りを支援するITシステムの話しだ。

トヨタには「マル書いてたってろ」と言う言葉が有る。生産現場の床にマルを書いて、そのマルの中に立って一日現場の作業を観察しろ、と言う意味だ。
田んぼにマルを書いたかどうかは分からないが(笑)まずは、現場を理解する事から改善は始まる。当然と言えば当然だが、往々にして過去のデータなどの分析を現場より優先したりする。

システム開発は、開発仕様を決定する際に顧客とミーティングを重ね、仕様を固めて行く。会議室で仕様が決まって行く訳だ。現場、現物、現実主義の観点から言えば、これでは駄目だ。

大雑把に言えば、システムとはデータを取り込み、そのデータを加工し、現場に有益なデータを出力する仕組みだ。この様な仕組みを作るのに、現場を見ずに仕様を決定して良いシステムになるとは思えない。

現場のどこでどんなデータが発生し、そのデータはどういう意味を持っており、そのデータをどう加工すれば、作業が改善出来るか考える。こういう工程は、現場でやらねば駄目だ。

顧客のシステム担当者から情報を聴取しても、担当者の理解以上の情報は手に入らない。改善は出来ても改革は不可能だ。なぜなら、社内や業界の人間の考えが及ばない改善をして初めて、改革と言えるからだ。

一見効率が悪い様にも見えるが、現場を理解する事に時間を割く事が重要と考えている。

現場で改善をしている人間にとって、現場から学ぶ事は多い。

もう一つトヨタのシステム屋さんから教わったことがある。
業務用のシステムを作る際に、その業務の「本質」を見極める事が重要だ。なぜならば、今の業務をそのままシステムにしてしまうと、すぐにシステムが陳腐化してしまうからだ。システムを作り込む時には、変わらない「本質」を作り込み、改善により変化してしまう手順などは柔軟性を残しておく。この様に考えると、システムのメンテナンスが容易になる。


このコラムは、2015年3月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第413号に掲載した記事です。

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