巧妙な手口、中国模倣品 政府と業者「いたちごっこ」


 長年、模倣品大国と言われ続けてきた中国。「世界の工場」で磨き上げた製造技術は、今や本物と区別がつかないほど精巧な模倣品を生み出す。価格は正規品より圧倒的に安く、海外にも流れ出る。中国政府は摘発を強化するが、模倣品業者の手口は巧妙化、いたちごっ
探偵に同行、最前線を歩いた。

日本経済新聞電子版より

 友人に中国で知財権の仕事をしている人がいる。その内一人は女性ながら、ニセモノ工場に摘発のために乗り込んだりすると言っていた。さすがに前面に出て摘発するのは、商工局の職員だが。

中国のニセモノには「ただのニセモノ」と「ホンモノのニセモノ」がある。

ただのニセモノは、いわゆるニセモノだ。例えば、中国の文具店で売っているホワイトボードマーカは「ゼブラ」を書いてあっても、ほとんどがニセモノだ。一見ホンモノそっくりに出来ているが、仔細に見てみるとペン軸に書いてある説明文がおかしかったりする。
ホワイトボードマーカは本体がプラスチック成型で出来ているので、模倣が比較的簡単だ。同じくゼブラの製品でも、銀色や白色の油性マジックは本体がアルミの絞り加工で出来ている。これは簡単には真似できないらしく、ペン軸の途中に段が付いていたりする(笑)

もう一方のホンモノのニセモノとは、OEMでホンモノを委託生産している工場が同じ材料で生産したモノを裏口から出荷する製品だ。支給材料をちょろまかし、余分に生産した製品を横流しする。
アパレルメーカーなどは、ブランド名が入ったタグを支給し、その数量を厳格に管理している。アパレルメーカで、タグの出庫作業を人手で員数確認しているのを見て、これが委託先工場からのニセモノ流出防止だと理解した(笑)
ちょっと頭の良い経営者ならば、製品を横流しして得る利益よりも。顧客の信頼を失なう損失の方が大きい事を知っている。しかし現場の人間が、目先の金欲しさに悪さをする事はあり得る。

金儲けだけが目的の人達には、手っ取り早くニセモノを作るのが近道に見えるのだろう。生産委託工場でなくても、3Dスキャナーがあれば設計図は手に入る。
普通の技術では加工できない、機能を実現するメカニズムがブラックボックスになっている、などの工夫をしておかなければ真似をされてしまう。

中国で科学玩具を作っている友人は、部品ごとに違う工場に発注する、一つの部品でも工程ごとに工場を変える、組み立て工場には部品の発注をさせない、等徹底的にニセモノ対策をしていた。彼によると日本の国内企業にも裏切られた経験が有るそうだ。

いずれにせよ、日本も先進国の製品を模倣するところから始めている。
中国も同じ様な道を進んでいるだけかもしれない。日本と違うところが有るとすれば、ディジタル技術で模倣の閾値が下がっているところだろう。日本が模倣していた時代は、模倣する事で技術に磨きがかかった。


このコラムは、2015年2月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第412号に掲載した記事です。

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