疑問力


 工場でモノ造りを見ているとなぜこんなことをやっているのだろうか?と疑問に思う事がたびたびある。

ある工場では製品に銘版ラベルを6種類も貼っていた。
作業者も製造管理者もメンドクサイと不満は持っているが、ナゼ6種類も貼らなければならないかという疑問を持たない。不条理でも図面の指示通りにモノ造りをする。

ラベルの内容を見てみると、同じような内容が重複しているモノ、安全規格のファイル番号だけのラベルなどを狭い場所にいくつも貼っている。当然ラベルのコストが上がる。複数枚のラベルの同じ内容を表示するのだから同じ合計面積のラベルが必要、従ってラベルのコストは同じ。と考えるのはモノ造りを知らないからだ。更に何枚も貼り付けるという作業コストが必要だ。

「ナゼ」を考える疑問力があれば、ナゼ何枚もラベルが必要かラベルの内容を見るであろう。
 重複している内容をナゼ1枚にできないのか?
 安全規格の番号だけがナゼ独立したラベルになっているのだろうか?

こういう疑問を持てば、この製品が量産開始以来仕向け地が徐々に増えていきそのたびにラベルを追加したのだろう、という新たな疑問が生まれる。
その内容を1枚のラベルに集約する事ができるのではないだろうか?という疑問を製品設計者にぶつける事ができる。

製品設計者は次々を新製品をリリースしなければならず、古い製品に対する興味を持たない人種だ。しかも設計管理者がそれを許す風潮がある。しかし設計者がほんの少しの時間を使って図面を変更すれば、それ以降生産現場では生産台数分の作業コスト、材料コストが節約できる。生産数量が多ければそのレバレッジ効果も大きいはずだ。

事例の6枚のラベルは、設計者にナゼ6枚必要かという疑問を投げたら4枚に減った。製造管理者はこれで喜んでいるが、私にはナゼ4枚も必要かという疑問がわいている。

生産部門がナゼの理由を簡単に考えて勝手に変えてしまうと、大変なことになるのは目に見えている。しかし製造現場のリーダ、管理者は常に「ナゼそうなのか」という原因に対する疑問力、「どうしたら良いか」という対策に対する疑問力を磨き続けなければならない。


このコラムは、2009年6月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第104号に掲載した記事です。

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