小さな利権


 多くの中国人は自分の職務上の権限を利用して自分自身・親族・友人の便宜を図るのは当たり前のことだと考えているように思える。

贈収賄は罪になるが、ちょっとした便宜を図るくらいは罪の意識はない。
公務員の人気が高いのは、安定した職業であるということのほかにこのような便宜を図る力をもてるからだろう。
親族に公務員がいれば、営業許可の申請はいとも簡単に取れると聞く。

このような大きな便宜ばかりではない。
たとえば銀行の保安係が知人だと、長い列の横から窓口に通してもらえる。列に正直に並んでいる人は文句も言えない。「没方法」と諦めるしかない。

工場でも同じように小さな利権がまかり通っている。
たとえば総務の女の子が出張者やお客さんのお昼の弁当の注文を聞いて回る。お昼に日本食レストランから弁当が届く。
現地食になれない出張者にはありがたいサービスだが、実はこれも一食につきバックマージンが日本食レストランから戻ってくる仕組みになっている。

この程度だと、目を瞑ってもどうということはないかもしれない。

しかしコンテナを一本手配するとバックマージンが入ってくる。
生産の補助材料を親戚が経営しているペーパー商社経由で発注する。
作業員の採用面接に10元ずつ手数料を徴収していたという例まである。

これらを放置すると、本来会社の利益となるものが一個人の財布に入ってしまうことになる。中国での商習慣だからとうやむやにしておいてはだめだ。

会社の上から下まで、こういう利権に一切関与しない、させないという企業風土を築く必要がある。

中には日本人経営者・経営幹部までが中国式に染まってしまっているところがあると聞く。自分の親しい知り合いが経営しているレストランで業者との会食をするというのまであるそうだ。

まずは経営者・経営幹部から襟を正すしかない。
これから月餅の季節になる。もらった月餅はすべてみんなが見えるところにプールして、中秋の食事会で全員に配布するくらいのことから始めてはどうだろうか。

PS.メルマガ配信当時(2009年)の話です。念のため。


このコラムは、2009年8月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第114号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】