「最大ではなく最適を目標とする」は,ドラッカーの言葉だ.
人は目的意識を失うと,最大,最小,最速,最長,最短を目指してしまう.
昔電卓付きのライターがあった.ライターの大きさで電卓も付いているので,電卓としては最小サイズだろう.しかしテンキーが小さすぎて指では押せない.
テンキーを押すためにマッチも一緒に携帯することになる.
こんな笑話のような事例は,すぐにおかしいと気が付く.
しかし工場の中で改善をしていると,最適を忘れて最○を目指してるのに気が付いていない事がしばしばある.
ある工場で,半自動設備を最速で動かすために,半自動設備操作員の他に作業員2人が準備作業をしていた.3人で1時間800個生産出来る.
最速を目指すのを止め,1人で準備作業と半自動設備操作をすることにした.その結果1人で1時間500個生産出来た.2人で作業をすれば1時間で1,000個生産出来る。作業員が1人減り生産量は25%アップ、生産効率は87.5%アップとなった。
これが最速を止めて、最適を目指した改善だ.
別の事例は,一つの製品を組み立てるのに16人×3班で生産していた.
このラインを,12人×4班で生産する様に変更した.班長は,生産が間に合わないと反対するが,人数が減った分生産台数が75%になっても大丈夫だと説得してやらせてみる.
1班の人数を16人から12人に減らしても,全体では48人いる訳だから,1班の生産量が75%に落ちても全体では変わらないことになる.ところが12人×4班で生産すると,16人×3班て生産した時より20%生産量が上がった.
作業員の数が減った分だけ、作業員間の取り置きのロスが減っている。また、1工程の作業量が増えることにより、1人当たりの作業時間が長くなった。持ち時間が長い方が作業改善がし易くなる。
これにより、1班16人を12人に減らしても、生産量は75%とはならず、80%となり、4班全体で20%の生産量が上がった訳だ。
これら二つの改善事例の成果は、生産量の向上だけではない。少人数で生産出来ることになったため、生産量の増減に柔軟に対応出来る様になった。
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