改善の着眼点


時々友人の工場に出かけ、打ち合わせをしている。この工場に訪問するたびに、毎回新しい変化を発見している。廊下に従業員の改善提案がびっしり貼り出してあるが、今回はその他に「サンキューカード」が貼り出してあった。
上司が部下に、部下が上司に、同僚同士それぞれが感謝を伝え合う為のカードだ。カードに書くことにより、照れや恥じらいなく感謝を伝えられる。当り前と思っていた事が、感謝に値する事だと気が付く。こういう活動を継続することにより、感謝し合い協力し合う組織風土が出来上がる。

以前、他の工場にも同じアドバイスをして『3Q卡』と言う制度を作った事がある。
3Qは「Thank you」の語呂合わせだ。
実はこちらの工場は、余りうまくいっていない。アドバイスを受けた幹部が、まず自部署で展開しうまくいったら、全社に展開します、と言っていた。こういう仕掛けの狙いには、部門間の風通しを良くする事も入っている。全社一斉に取り組むことにより効果が何倍にもなる。

本日のコラムは、「サンキューカード」ではない、改善提案だ。
友人の工場では、改善提案を「気付き提案」と「改善提案」に分けている。
「気付き提案」とは、ここが不便だからなんとかして欲しい、と言う提案。
「改善提案」は、こうしたら良くなる、と言う提案。
改善が実施してなくても「気付き」「提案」だけで報奨金がもらえる制度だ。

友人は作業員を含む全従業員に改善を考える習慣を植え付ける為に、まず質より量を狙った。ある程度「量」が集まらないと「質」への転化は起こらない。
そろそろ「質」への転化時期に来たと判断した友人は「気付き」を「提案」に「提案」を「行動」に進化させることにした。

放っておいても進化はしない。彼は「改善委員会」を設置して、気付きや提案を評価し、気付きを具体的な改善方法に、改善提案を具体的な改善行動になる様に提案者にアドバイス(赤ペン指導)する事とした。

すばらしい展開だが、彼の悩みは改善委員会メンバーにどうやってアドバイス能力を付けるかだ。

こういう能力は、まず事例を沢山見る事だ。シャワーを浴びる様に沢山見る。これは自社内の事例に限らない、あらゆる工夫を発見する。
そしてそれに名前を付ける。

例えば広州の地下鉄に乗って、乗降扉の可動部分を固定するボルトに黄色い線が引いてあるのを見つける。これがネジ緩み点検の為の線だと気が付けば事例となる。これに「ネジ緩み点検I(アイ)マーク」と名前を付ける。

こういう事例の引出しを沢山持てば、改善の着眼点はどんどん広がる。ネジ締め検査時にアイマークを付ける。設備の調整ダイアルにアイマークを付ける。電子部品の極性点検をアイマークにする。等など一瞬にして改善方法が思い浮かぶ様になる。

そして事例を個人の頭の中だけでなく、文書にする。文書にすれば、事例の蓄積が組織の能力蓄積となる。

私自身は、自分がどうやって発想しているのかを考えて、フレームワーク化している。この方法ならば、経験がなくてもチョットした訓練で改善の着眼点を見つける事が出来る様になる。


このコラムは、2014年1月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第345号に掲載した記事です。

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