禅脳思考


 タイトル「禅脳思考」は全脳思考(ホール・ブレイン)の誤変換ではない。心理学者チクセントミハイの「フロー理論」を辻秀一氏が発展させたのが禅脳思考だ。
人が熱中している状態を「フロー」と言い、最もパフォーマンスが高くなる。
これを応用して、スポーツ選手や企業人のパフォーマンスを上げる仕事をしておられるのが辻先生だ。

独立以来、どのようにしたら中国人従業員のモチベーションを上げられるかを考え続けて来た。2013年に広東省の人事関係のフォーラムに参加した。その時一人の講師がフロー理論の講演をした。中国でも人のパフォーマンスを上げるためにフロー理論を応用しようと考えている人が居るのを知り、椅子から転げ落ちる程驚いた。中国国内にもフロー理論に関する学会が有ると言う。
ネットで検索し、辻先生の「フロー・カンパニー」と言う書籍を知り、即注文した。

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書籍名:フロー・カンパニー
著者:辻秀一
出版社:ビジネス社

その辻先生が香港和僑会で講演されると聞き、香港まで出かけて来た。
講演のあとも、ずっと辻先生のお話を聞き、気が付いたら10時を回っていた。
多くの啓発を受けた。

人間の脳は、五感を通して得た情報を認知する機能が有る。これは人間が生存するために必須の機能だ。例えばライオンと出会ったら危険だと認知し逃げると言う行動を起こす。

認知脳はあらゆる事に意味付けをしようとする。
例えば、朝起きた時に雨が降っていると「雨かぁ。サイテー」と考える。本来雨そのものには、サイテーと言う意味はない。今までの経験から、認知脳がサイテーと判断する。出社途上の満員電車で、塗れた傘を押し付けられズボンが濡れる。ここでも認知脳は「サイテー」と認知する。会社に到着して苦手なボスと最初に遭ってしまった。自分のデスクについた頃はサイテーのどん底となる。この様な心理状態で最高の仕事ができるはずはない。

自分の心が外界の事象や人に支配されることにより、左右されてしまう。その結果、自分のパフォーマンスが落ちてしまう。自分の心を自分でコントロールすることが出来れば、より自由となりパフォーマンスを上げられる。

一般的には「ポジティブ・シンキング」と言う方法で解決しようとする。
「雨が降れば緑が奇麗になり気持ちがよい」「イヤな上司もいい所がある」と言い聞かせる訳だ。こういう考え方をしている人は多いだろう。しかし言ってみれば、自分の心を騙すことになる。これでは疲れてしまう。

自分の心が認知脳に捕われず、揺らがない状態にするために、ライフスキル脳を鍛えよう、と言うのが禅脳思考の考え方だ。

例えば、タイガー・ウッズは、マッチプレーで相手のパットが入れば負けると言う場面で、相手がパットを打つ時に「入れ!」と念じるそうだ。相手を応援する行為は、心をフローにする。念じたからと言って、相手のパットが入るはずはない。相手のパットが外れた時に、自分の心がフローになっていれば、必ず自分のパットが入り逆転出来ると知っているから、そう念じるのだそうだ。

普通のゴルファーは、前のホールで3パットしてしまった事に捕われ、次のホールでドライバーがスライスしOBとなる。これは心がフローになっていないからだ。禅脳思考体得者は、一瞬にして心をリセットし、今この瞬間に集中することができる。

認知脳が重要と判断しているにも関わらず、実行に移せない。上手くやろうと緊張するあまり、失敗してしまう。こういう状況は心がフローになっていないために発生する。心の状態をコントロールするライフスキル脳力と認知脳のバランスが取れている状態を作り出す事が重要だ。

中小企業が、技術や資本だけで競争優位に立つ事は難しい。あなたの会社をフロー・カンパニーとすれば、従業員のパフォーマンスを上げ、業績を上げる事が出来るはずだ。

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