教え方の教え方


 製造業に限らず、どのような業種であっても新人社員に仕事を教えなければならない。新人社員ばかりではない。社内異動をした従業員も同様だ。市場の変化を考えると、仕事を教える機会はますます増えて来るだろう。

第一線の監督職にとって仕事を教える能力は、非常に重要なスキルだ。
しかし、現場の班長・組長にその様な教育をしている企業は多くはない。
以前生産委託をしていた工場では、班長・組長への教育訓練を真っ先にした。研修後、彼らから貰ったアンケートの中に、今までこういう研修を受けた事が無かった、と言う感想がいくつも有った。
最近は、班長・組長への研修指導を依頼される事が増えて来ている。単発のご依頼では難しいが、長期でお手伝いしている工場では、班長・組長研修の講師を育成するところまでやっている。

この様な指導は、教える人の能力に依存してしまうと考えていた。
つまり「教える」と言う技能は、個人的なスキルに依存するアートだと感じていたのだ。しかし日本産業訓練協会のTWIーJIの内容を詳しく知り、相当なレベルまで、教える技能を教える事が出来ると確信している。

私たちが育成しなければならないのは、福島正伸の様なカリスマセミナー講師ではない。作業員に正確に作業方法を教えられる監督者だ。

例えば、公認トレーナー(監督職に教え方を教える人)は、この言葉を黒板に板書する、この文章は1字1句同じに言う、ここは現場に合わせてアレンジ、といった具合に指導方法まで、研修で叩き込まれる。

現場の監督者は、教え方の台本にそって教えれば良いのだ。
この様な教え方であれば、監督者のレベルのバラツキを気にする必要はない。

以前生産委託先工場で、掲示板に「私は注意して作業します」と何度も何度も書いたA4紙が貼り出されているのを見たことがある。聞けば、何度注意してもミスが減らない作業者が、班長に言われて書いた物だと言う。この班長はどう作業者を指導して良いか分からずに、子供の頃漢字を書き間違えると、教師に何度も同じ漢字を書かされた事を思い出して、作業員の指導をしたのだろう。
漢字ならば何度も書けば、次から間違わないだろう。しかし作業ミスに対し、「注意します」と何度書いても改善は期待出来ない。
この紙を見た時に、何も教えてもらっていない班長が不憫に思えた。

作業のバラツキが無くなれば、品質、生産、コストのバラツキは無くなる。
そのためには、教え方のバラツキをなくせば良いのだ。

TWI-JIについてはこちらもご参照ください。