チャンスに備える


 なかなかチャンスが回って来ない。チャンスは大手企業にばかりやって来る、中小企業にはチャンスなんて来ない。なんて考えている方は居ないだろうか?

チャンスは平等に来ている。違いはチャンスに気が付いているか、気が付いていないかの差だけだ。企業規模は関係ない。確かにチャンスを活かして業績を上げた事例は、大手企業の事例が多い。中小・零細企業の事例は余り見ない。しかしこれは、報道などの情報に載るのは、大手企業の事例の方が多い、と言うだけの話だ。

この様なからくりは、報道や情報伝達のメカニズムを考えれば、理解出来よう。報道する側も、情報を受け取る側も一定の価値観がある。その価値観に見合う情報が流通するのだ。例えば、倒産寸前だった零細企業が、チャンスを活かし100万円の利益を上げる、と言うニュースと、業界トップの○○公司が前年度の赤字を解消し、100億円の利益を計上、と言うニュースのどちらが多くの視聴者の興味を引くか、と言う道理だ。

まずはチャンスに気が付く事が重要だ。
一般紙、経済紙、業界紙に目を通すのは当たり前。一番良いのはお客様から「一次情報」を聞き出す事だ。新聞などに載る情報は、一次情報を集約・加工した情報だ。当然、集約・加工した人や組織の思惑が入る。そして、あなたがその情報を得た時点で、何百万人ものビジネスマンが同時にその情報を得ている。

「一次情報」を自分の頭で考え、人より先にチャンスに気が付く事だ。

そしてチャンスを活かす準備をしておく。チャンスと分かっても、それを活かせるかどうかは別な話だ。例えば、自動車業界向けの部品を生産するのがチャンスと気が付く。しかし設備稼働率を上げるために、事務機器業界向けの部品受注を沢山取り生産が手一杯になっていれば、引き合いが来ても応える事は出来ない。

自動車業界にチャンスが有ると分かれば、稼働率を下げてでも自動車業界の受注準備をする。
民生用同一規格大量生産品よりも、産業用多品種少量生産品にチャンスが有ると考えたら、多品種少量生産のための生産方式を磨き上げる。
以前指導したケーブルメーカは、電源コードを生産していた。同業者がどんどん増え、販売価格が下がる。「なんとかしなければ……」と言う経営者のために、多品種少量生産方式を指導した。その結果、利益率の高い産業用のケーブルの受注が取れる様になった。マンション建設ラッシュの時には、エレベータ用のケーブルを大量に受注した。今では産業用ケーブルが、業績の第二の柱になっている。

全ての変化はチャンスになりうる。
業界の景気後退により受注量が激減する。この様な変化に備え、別業界の顧客を開拓しておけば、景気後退と言うピンチさえチャンスになる。

色々な変化を想定し、チャンスがやって来た時のために準備をしておく。
こういう仕事が、経営者の仕事だ。

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