指示待ち社員


 指示された仕事は、残業してでもやり遂げる。しかし床に落ちているゴミは拾わない。縦の物を横にもしない、と言うと言い過ぎかも知れないが、それは指示されてません、と言う態度の部下に心当たりは無いだろうか?

例えば、月曜日午後に東京の本社で会議だから、航空券を予約してくれ、と指示をしたとする。

部下1:金曜になっても報告が無い。航空券は?と聞くと、月曜朝の香港・東京便は全て満席でした、と答える。
部下2:月曜朝の香港・東京便が満席と分かった時点で、相談しに来る。

当然部下1は論外(笑)しかも飛行機が満席なのは自分の責任ではないと考えている。
部下2も指示待ち社員と言わざるを得ない。前日深夜の香港発、広州発の便を調べた上で、相談をするべきだろう。

実は日経トップリーダの記事に、元トリンプ社長吉越浩一郎氏のコラムが紹介されていた。タイトルはズバリ、

「情報を徹底的に共有すれば、指示待ち社員はいなくなる」

Q.指示待ち社員ばかりで困っています
 「どうして、こっちがあれこれ具体的に指示しないと動けないんだ!」と、質問者の方が憤る気持ちはよく分かります。「どうすれば指示待ち社員が自発的に行動するようになるか」は、多くのリーダーに共通する悩みでしょう。

吉越氏は、指示待ち社員は以下の3タイプが有ると言う。

タイプ1:本人にやる気が無い。
対処方法:期限を決めて仕事を任せる。

タイプ2:リーダが過保護。
対処方法:勇気を出して仕事を任せる。

タイプ3:情報の共有化が出来ていない。
対処方法:情報を共有する。

仕事を任せることにより本人のやる気を引き出す。
手取り足取り教えることにより部下の依存体質が出来てしまう。依存体質とならない様に自分で考えさせる。
指示を受けなくても、自分で判断出来る様に部下と情報を共有する。

おっしゃる意味は良く分かるが、この対処方法が効果を発揮するのはある程度レベルの高い部下の場合だろう。これだけじゃ上手く行かないだろうなぁと、中国で中国人部下を指導している方々は思われたのではないだろうか?

しかし吉越氏はコラム後段で「部下が動かない原因は、部下が動かないと嘆くリーダー自身にあると考えたほうがいいでしょう。」と指摘しておられる。
この認識は、私たちも同じでなければならない。
自分に責任があると考えるから改善が可能となる。部下の能力が足りないと考えれば、不満と愚痴が出るだけだ。

まずは指示をする相手の能力を把握していなければならない。
作業を理解していない人に仕事を指示しても、ムリだ。まずは手取り足取りをしてでも作業のやり方を教えなければならない。例えば、上記の航空券予約の事例で言えば、どこに電話をすればいいのかすら分からない人もいるはずだ。
そういう人には手取り足取り教えなければならない(さもなくば永遠に自分でやることになる)そして、教えたやり方をマニュアルにする所までやらせる。
マニュアルを作っておけば、手取り足取りは1回で済むはずだ。

一方で、作業が分かっている人に作業を指示するのは、吉越氏が指摘している過保護だ。仕事を指示しなければならない。

航空券予約の事例に戻れば、「香港発成田行きのJL○○○便のチケットを予約して」と言うのは作業指示だ。こういう指示の仕方をしていると、いつまで経っても自分は楽にならない。
「○日○○時に東京本社で会議が有るからフライトを予約して」と言えば仕事の指示になり、部下は自分で検討・判断をする範囲が広がる。

この検討・判断には「情報の公開・共有」が必要だ。
例えばフライトを予約しチケットを発行してもらうためには、パスポート番号が必要となる。本来私が言いたい情報の共有とは若干違うが、部分的な情報で判断をされては、間違った判断をしかねない。これは公開情報、これはマル秘情報などとやっていると必ず齟齬を来すことになる。秘密は一切なし、というのがベストだ。(顧客情報など、守秘義務がある情報は別だが)

ここまでしても、吉越氏の言う様に指示待ち社員は絶滅しない。
なぜならば、指示を受けることにより責任を上司に転嫁したいと言う本能的な欲求が有るからだ。指示通りに仕事を実施して失敗したのならば、それは指示をした人間の責任だ。と考えている人が中国の組織には多い様に思う。

この考えを払拭しなければならない。
挑戦的な仕事をして失敗しても評価される。失敗が無くても挑戦的な仕事をしなければ評価されない。この様な組織文化を育てなくては、人の行動は変わらないだろう。逆にこの様な組織文化が場のエネルギーを発生させるので、指示待ち社員も行動を起こす、行動が起こせない指示待ち社員は居心地が悪くなり出て行くと言う好循環となる。

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