手段と目的


 コラム「トイレそうじの効能」「そうじ資本主義」という書籍を紹介した。

この書籍の中で著者の大森氏は、日本の経営者は「手段志向型」欧米の経営者は「目的志向型」だと指摘をされている。

手段志向型の組織は、同じ手段(例えばそうじ)を共有することにより、全員の一体感を高め、組織に対する貢献意欲の高い組織になる可能性がある、と私は考えている。

しかしマイナスの側面もある。
例えば、製品開発時にシーズ優先で商品企画を進めてしまう。
製品実現技術という手段ありきで商品企画をすることにより、技術者の独りよがりになってしまう。その結果、機能も品質も一流なのに売れない。
日本の企業が業績不振に陥っている原因が、ここいらにありそうな気がする。

例えば日本の家電製品は、こんな技術もあんな技術も盛り込んで、すばらしい機能と品質を実現している。しかし開発途上国の人々にとっては、米を炊く、衣服を洗濯する、という目的に対して高機能は必要ない。

中国人の日本製炊飯器の爆買いが話題になっているが、残念ながらそれは「マスマーケット」ではない。米食市場におけるシェアは、韓国、中国の企業にとられているのではないだろうか?
(中国では美的が50%、アジア全体では中国企業が80%というデータがあった)

日本人にとって「おいしく米を炊く」は目的になりうるが、中国や東南アジアの国々の人にとっては「手軽に米を炊く」が目的になっているのだろう。
私が中国で使っている炊飯器は10分もあれば炊きあがる(笑)

手軽に米を炊くことを目的にしている人々にとっては、米を炊くのに30分以上かけ、しかも二桁値段が高い炊飯器は必要ない。

目的と手段の混同は製品開発ばかりではない。生産現場の改善活動にも、目的と手段の混同が見られる。

多くの中国人経営者が「日本的生産システム」を教えてほしいという。
彼らが言う日本的生産システムとは、コンピュータシステムのことではない。
具体的に何がしたいのかを問うと『精益生産系統』(トヨタ生産システム)を導入したいのだと言う。

本来何らかの「目的」があって「手段」としてトヨタ生産システムを導入する、というのならば理解できるが、いきなりトヨタ生産システムだ。

目的を達成するために、解決課題を設定し、そのために必要な手段を選択する。
これが正しいプロセスだと思う。

以前指導した台資企業は、『精益生産系統』を教えてほしいと言われ工場を訪問した。工場内を案内してもらいながら、具体的に何に困っているか質問した。倉庫が狭くて困っている、という。社内では足りずに社外に倉庫を借りており、その支払いが5万元/月だという。

この企業の改善目的を精益生産系統導入ではなく、倉庫経費の削減と定義すれば、より具体的かつ実現可能な手段がいくらも出てくるはずだ。


このコラムは、メールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】に掲載した物です。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】