ところで、中国人エンジニアで統計数学を駆使出来る人をご存知でしょうか?
私が知る限り、ほとんどいません。
日本人でも、統計確率理論を勉強するのは、高校で「数3B」を選択した人だけです。ゆとり教育になって、こういう勉強をした人はもっと減っているでしょう。
私は理系の大学に進学しましたが、統計的品質管理を勉強したのは、夏期の集中講座でした。正直に言うと、単位欲しさに受講しただけで、当時は何の役に立つのかさえ分かりませんでした(笑)
そんな私が、品質保証部門の仕事をする様になり,先輩に手ほどきを受け、通信教育で勉強しました。この時は実務に直結していたので、ちゃんと勉強出来ました。
その後中国で若い人達を指導することになり、統計確率理論の素養がない人に統計的品質管理を教えることになりました。
難しい数式を教えても眠くなるだけ。色々試行錯誤の結果到達した方法が、ビジュアルで統計の意味を教え、Excelのツールを使って計算する方法です。
実際に統計的品質管理を活用する人ばかりでなく、統計的品質管理を指導する方にも参考になると思います。
品質道場第四回「統計的品質管理(1)」では、今回生産したロットが正常なバラツキ範囲に入っているかどうか?と言うコトを確認する工程管理図、工程能力指数(Cpk)を中心に勉強しました。
「統計的品質管理(2)」では、今回生産したロットのサンプルからロット全体の平均値やバラツキがどの範囲にあるのか?改善前後のサンプルを比較することにより、改善出来たのかどうか?を判定する方法を中心に勉強します。
例えば以下の様な事例に応用出来ます。
以前指導した工場では、半田付け工程の後に検査治具を使用し、高さが仕様規格に入っている事を全数検査していました。半田フィレットの高さを均一に制御する事が難しく、ばらついてしまいます。そのため工程内不良が多く、最終の製品検査で見つかった不良は、前工程に戻して修理する必要が発生します。
半田付けフィレットの高さのバラツキを小さくするのは難しいので、別の部品の高さを変更しました。設計変更後20個のサンプルで高さを測定し、設計変更による高さのバラツキを推定しました。
その結果、半田付け後の高さチェックは不要となりました。最終検査での不良もゼロです。高さチェックの作業が不要となったため、作業員3人が必要だった半田付け工程を2人で作業出来る様になりました。
その他の事例
- 抜き取り出荷検査のデータから、その生産ロット全体のバラツキを推定し、規格範囲に入っているか判定する。
- 工程能力を上げるために、加工方法を変える。設計を変更する。
そして試作をしてみて、特性のバラツキが小さくなったかどうかを確認する。 - 工程不良を減らすために、改善をした。
試しに1ロット生産して、不良率が下がったかどうか確認する。 - 作業員Aさんの作業時間を15回繰り返し測定した。
Aさんの作業時間のバラツキは、どの範囲にあるか推定する。
こういうことが出来るのが、統計的品質管理の応用です。
しかし統計確率理論の公式を覚えるのは、結構骨が折れます。
正直に告白をすると、私は公式を覚えていません(笑)
Excelの関数や、分析ツールを使えば簡単に出来るからです。
公式は必要な時に教科書を見れば良いのです。
大切なことは、考え方を理解し正しい関数や分析ツールを選択できることです。
■受講対象者
品質管理、品質保証を行う品質部門の責任者、リーダ
生産改善、品質改善を行う技術部門、品質部門の責任者、リーダ
■プログラム詳細
- 母集団とサンプル
- 計量値の検定と推定
- カイ二乗分布の応用
- t分布の応用
- F分布の応用
- 計数値の検定と推定
- 二項分布の応用
- ポアソン分布の応用