生産用設備や測定装置を設計生産している中国企業の経営者から、相談を受けた。
経営者の不満は以下の2点が大きいようだ。
新製品のリリースが遅れるため機会損失が大きい。
新製品を出荷した後に、不具合が見つかり品質損失が発生する。
経営者との面談で、この会社に足りていないのは設計品質を保証する仕組みと仕掛けだと判断した。
生産に関して言えば、まとめ生産をやめればより業績が向上するはずだ。基本的には多品種少量生産の企業であるが、生産現場では同じ製品が複数並んでいた。顧客の受注で生産するが、まとめて生産し一部は完成品倉庫で次の受注を待つ事になるそうだ。
私は前職時代に計測制御システム製品の開発設計に携わっていた時期がある。
開発設計は製品の基本機能を設計するが、販売する時はエンジニアリング部門がお客様の要求に合わせて一品一様で設計する事になる。
従って生産現場では、1台ずつ違う製品が生産ラインに並ぶ事になる。
多品種少量生産を通り越して多品種微量生産だ。
工場の生産に使う設備なので、高信頼性が要求される。従って製品リリース後に欠陥が見つかるような事は許されない。その上、競合との競争もあるので、開発納期に対する営業からのプレッシャーも高い。
そんな中で試行錯誤を繰り返し、設計品質の向上を計って来た。
一つは、次工程に完璧なモノを渡すための審査制度。
もう一つは、自工程の品質を完璧にするためのチェック手法。
この二つで相当なレベルになったと自負している。
一つ目は、一般的な品質保証システムやTSが推奨しているAPQPと基本的には同じだ。その運用を確かにする仕掛けにノウハウがある。
二つ目は、過去の経験から作り上げた「ベカラズ集」の様なチェックリストとコンピュータ支援によるDRC(デザインルールチェック)だ。
チェックリストとDRCにより、設計手直しは激減した。
これらがうまく行くためには「失敗を責めない」組織風土が必要だ。
この二つの仕組みと仕掛けがうまく運用されると、今まで個人に帰属していたノウハウが、組織に蓄積される様になる。
このコラムは、メールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】2015年10月19日号に掲載した物です。
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