友人の紹介で、日本から出張で来られた工具メーカの方のご相談を受けた。
「中国の生の声を聞きたい」と言う曖昧なご要求での面談だった。
この会社は、工場で使用する工具の専業メーカであり、それなりのシェアを持っている。海外販売は、全て商社を経由したチャネル販売だ。中国向けの受注が3月から急増しており、中国で代理販売をしている会社から呼ばれて、展示会に参加する事になった。
社内には、中国市場への展開に反対する幹部も有り、市場実態調査のため出張に来られた。現地代理販売会社からの情報で、シェアトップ企業が中国撤退を決め顧客に撤退を内示をしたため、受注が急増している事が判明した。
中国からアセアン地区への日系企業転出など色々質問を受けた。私にはそんな事は重要ではないと思えた。
彼らには、二つのアドバイスをさし上げた。
一つ目は、エンドユーザの工場に行くこと。
商社に任せきりで、顧客接点を持たないと、顧客情報、市場情報が分からなくなる。
「私の話など聞いている場合ではない。あなた達の知りたい事は全てお客様が知っている」と檄を飛ばした(笑)
二つ目は、修理センターを現地に作る。
修理センターが近くに有れば、顧客は安心して製品を使ってくれる。しかし修理センターを立ち上げる目的はそれだけではない。
どのような不良が返って来るのかを知れば、顧客がどのように使っているのか分かる。修理センターに集まる修理品の声に耳を澄ませる。それが新製品開発や現行品改良のアイディアにつながるはずだ。
商社や代理店にマージンを支払って販売をしてもらっている。余分な販売経費をかけたくない、と言うのは理解出来る。しかし市場や顧客から遠ざかっては、チャンスは見えなくなる。
例えば3月から受注が急増していると言うのは、ビッグチャンスだ。もし現地の情報を事前に知っていれば、増産体制は既に完成しており、業績に結びついているはずだ。
チャンスを業績に変えるためには準備が必要となる。そのためには顧客・市場を知らなくては行けない。
経営・営業も「現場主義」が重要だ。会議室で商社や代理店の注文台数を検討するよりも、顧客の所に話を聞きに行く。
研究開発も同様だ。頭の中であれこれ新商品を考えるよりは、顧客工場や修理センターに行く。
そこには新製品のアイディアが多くあるはずだ。
投資が不可能ならば、方法を考えれば良い。
お客様の所に行くのが目的ではない。お客様の情報が集まれば良い。
修理センターを作るのが目的ではない。現地修理でお客様に喜ばれ、故障情報が集まれば良い。
本来の目的を達成するためにどうすれば良いか考える。
このコラムは、2014年6月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第367号に掲載した記事を加筆修正したものです。
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