知識より経験


 10年ほど前までは、日系企業と言えども中国人従業員に教育訓練を施すのはムダだと考えている経営者がいた。せっかく教えても転職してしまう。そんな徒労感から、ムダだと考える経営者がいたのだろう。

台湾企業は、初めから割り切っている様に感じていた。朝採用試験に合格した作業者は、午後には生産現場に上がって来る。導入教育をしていると言っているが、2時間ほどでは社内や寮生活の決まりを説明しただけで終わりだろう。
工程を細分して作業を単純にしているので、生産現場でも短期間の訓練で作業が出来る様になる。一見問題は無い様に思えるが、仕事に対する意欲や、問題発生時に対応する能力はおぼつかない。問題が発生すれば班長が対応するが、班長も作業者として雇用され、ろくな教育訓練も受けずに昇格しているので、同じ事だ。

さすがに最近は、教育訓練がムダだと言う経営者に会う事は無くなった。
しかし教育訓練の成果が見えないと嘆いている経営者は相変わらず多い。

私なりに分析してみると、「知識偏重の研修」に問題が有りそうだ。
教育訓練の目的は、対象者の好ましい行動の強化だ。
知識を与えても行動には結びつかない。
知識を能力に変換し、行動を促す。そして行動が習慣になればゴールだ。

このプロセスで重要なのは、知識の習得ではない。知識の習得は初めの一歩だ。その後の能力、行動、習慣のプロセスは「経験」により達成される。

稲盛和夫氏は「知識より体得を重視する」と言っておられる。

「京セラフィロソフィ」

私の仮説だが、中国人はこの「体得」が苦手なのではなかろうか?
仮説というより、妄想といったほうがいいかもしれないが、「漢字」が学校教育を記憶偏重型にしているように思う。日本も同じように漢字を使うが、日本の子供たちは最初に「さいた、さいた、さくらがさいた」とひらがなで習う。しかし中国の子供はいきなり漢字だ。しかも覚える数は、日本の当用漢字の数を、はるかに上回っている。

記憶偏重の学校教育を受けた人達が、教育訓練をすれば知識偏重にならざるを得ないだろう。教育訓練を受ける側も、記憶偏重型の学校教育で育っている。
その結果、以下のような課題を持ったリーダが多くなる。

教えた事は出来るが、応用が出来ない。
知識はあり評論できるが、自ら課題解決が出来ない。
自ら問題を発見し、解決課題を設定出来ない。

そんな課題を抱えたリーダも、経験を通して体得させることにより、成長するはずだ。


このコラムは、2014年10月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第382号に掲載した記事に加筆したものです。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】