笹子トンネル天井崩落事故


写真はイメージです。

 先週のメルマガ「ボルト、引き抜ける状態 笹子トンネル、6割が強度不足」に,読者様からメッセージをいただいた.

※Z様からのメッセージ
 私は土木工事のプロではありませんが、有資格者(一級土木施工管理技士)なので、ちょっとばかり知っている範囲で、書きます。

問題のアンカーボルトは、多分一般にケミカルアンカーと呼ばれているものではないかと思います。37年前の状況は?ですが、20年ほど前は、すでに一般的に使用されていました。

当初からアンカーボルトの下穴1個に対し、薬剤(ガラス製のカプセルやチューブ)は1個です。またアンカーボルトの太さで、穴の径、深さとカプセルのサイズも決まっています。

薬剤をケチって規定より小さいサイズのものを使えば、若干の節約になるかもしれませんが、その場合すべてが薬剤不足になります。

また穴にカプセルを落とし込み、そこに先端を鋭角にしたアンカーボルトを打ちこみ、カプセルを割って使用するので、二つの穴で薬剤1個といった使い方はできないはずです。

私の推測する原因は、施工不良です。
ケミカルアンカーは、下向き、横向きに打ち込むのであれば容易ですが、天井に下から上向きに打ち込むのは、難しいと推察されます。もちろん、薬剤は急速に硬化しますが、カプセルを割った直後に流れ落ちる可能性もあります。天井へのアンカー打設の経験が、私はありませんので、断定できません。半分素人の私の推測です。

アンカーボルト1本に対し,カプセル1個使用する,ということであれば,先のカプセル使用数量の間違い,という不適合原因推定は外れとなる.

Z様の推定の様に,施工不良の可能性が高い.
抜けてしまったアンカーボルトの写真から,接着剤が付いていた痕跡がほんの少ししかないのが分かる.天井に開けた下穴に,カプセルを埋め込み,そこへアンカーボルトを打ち込む訳だ.何らかの方法で,接着剤が流出しない様にしなければならない.多分工法上で何らかの工夫があるのだろう.

この施工作業時に何らかのミスが有ったと推定するのが合理的の様に思える.

やはり新聞記事,写真だけで原因分析をするのは,限界がある.
原因分析は,あくまでも三現主義でなければならない.


このコラムは、2013年2月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第296号に掲載した記事に加筆したものです。

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