20年以上前の製品保証について


 ソニーが1968~1990年に生産したテレビで発煙・発火の可能性があるので,使用を中止して欲しいと社告を出した.

詳しい内容は分からないが,
「長期間の使用で、内部の部品が劣化し、色むらを抑える回路の周辺から発火したという。」
という記述から見ると,デガウス用コイルの絶縁劣化でも発生したのかもしれない.

この報道で2チャンネルの書き込みがどっと増えている.
トリニトロンCRTが燃えるとか,全く理解していない人たちの書き込みが,大部分を占める.
しかし発煙・発火の可能性があるのに「使用中止」のお願いだけとは何事だ,という書き込みは正論だろう.

42年前に製造した製品の品質保証をしなければならない,というのは同じく品質保証の仕事をしてきた人間にとって,同情したくなる一面はある.

無償修理といっても,トリニトロンCRTを交換となると,不可能だろう.20年以上前に生産された製品の修理部品を再生産するのは,相当な労力だ.しかも20年以上前の製品を修理する意味はあるだろうか.修理しても来年地デジ移行により,使えなくなる製品だ.

この様なロジックが,品質保証担当者の脳裏に浮かんだとしても当然だろう.
「新しい物に買い換えよう」たぶん一般的な消費者はこう考えただろう.

しかし故障モードが問題だ.おとなしく機能停止になる故障モードであれば,ソニーのテレビは42年間使えたと,故障したにもかかわらず,よい印象を持つことになる.だが発煙・発火となると話は別だ.消費者の不安は「ブランド力」の低下になる.
ソニーはモノ造りから離れようとしている.自らモノ造りをしていないソニー製品の販売は「ブランド力」に頼ることになるはずだ.
自らモノ造りをしなくなったがために,よりいっそう「品質保証」に注力しなければならないはずだ.
品質保証とは,顧客の満足と安心を保証することだ.


このコラムは、2010年6月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第157号に掲載した記事に加筆しました。

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