改善と改革


 先週のメルマガで、ワインバーグの言葉を紹介した。
今週ももう一つ別の言葉を紹介したい。

「複雑なシステムは選択的に改造するより、破壊する方が楽だ」

参考:「ワインバーグの文章読本」

ワインバーグはシステムエンジニアなので、彼のこの言葉はシステム開発・メンテナンスに当てはめて考えるとすんなり理解できる。

膨大なシステムソフトを小改造することは困難だ。その改造が全体にどのように影響を与えるか、全て洗い出し、悪影響を与えないように改造しなければならない。ならばいっそ捨ててしまえ。というのが本日紹介した言葉の真意だろう(笑)

さすがに破壊したり、捨ててしまうことはできないだろうが、この思いは素人の私にも理解できる。サーバ・クライアント型やアプレト型のシステムが基幹ソフトにも入り込んできたのは、システムソフト業界のジレンマから来るのだろう。

同じことが生産現場の改善にも言えるだろうか?
選択的に改善がうまくゆかないから破壊する、というのは同様に無理だろう。
「選択的改善」がうまくゆかないのは、ソフトウェアの世界と比較すれば、単純だ。全体を見ずに部分を選択的に改善するからうまくいかない。
例えば10人で1時間に100台のサブユニットを生産しているラインの生産能力を10人で1時間120台に改善する。これが改善かどうかは、後工程の生産能力と需要に依存する。

後工程が1時間に100台しか生産できないのならば、10人で1時間に120個生産するのは改善ではない。8人で1時間に100個生産できるようにした方が良い。

改善はどこまで行っても改善であり、改革には至らない。生産改善でよく耳にする言葉だ。改善で20%、30%の効率を上げるより、どんと設備投資をして20倍、30倍の改革を目指したい。そんな要求は理解できるが、需要がないのに生産量を上げても意味はない。

コストを下げるためにたくさん造る。
大量生産により貧乏も大量に生産してしまった。20世紀に犯した我々の蹉跌はここにあるのではなかろうか?

いきなり設備投資で改革を目指すのではなく。金をかけずに改善を繰り返す。
改善をすることにより、見える世界が変わるはずだ。改善を繰り返し成長した視点で設備を検討すれば、より効率の良い設備が設計できるはずだ。


このコラムは、2018年6月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第675号に掲載した記事に加筆しました。

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