予防保全


 以前このメルマガで,今住んでいるアパートのエレベータに閉じ込められた事故を,書かせていただいた.
「エレベーターのワイヤ3本切れ、女性がけが」
引っ越して来て5年経ったが,この5年間で5回エレベータに閉じ込められている.最後の一回は,エレベータのかごを吊っているワイヤーが切れて,10階から7階まで落下した.
アパートの管理事務所の職員は,5本あるワイヤーのうち1本が切れただけだから,大したことはない.と言う認識だ.

アパートには4機のエレベータがあり,落下したエレベータには,なるべく乗らない様にしている.最近別のエレベータが長期間運転を停止している.掲示板の貼り紙を見たら,このエレベータも牽引ワイヤーが切れた様だ.

今回の事故で4機のエレベータの牽引ワイヤーを再点検した.その結果が貼り紙に書かれていた.なんとすべてのエレベータの牽引ワイヤーに問題がある.今停まっているエレベータは5本のワイヤーのうち3本に問題がある.その他の3台は,各々3本,2本,1本のワイヤーに問題が見つかった.

ワイヤーは切れている訳ではないが,点検により問題ありと分かっていながら,普通に運転をしている.

ワイヤーが1本切れても,あと4本あるから大丈夫.
ワイヤーが切れても,ブレーキシステムが作動し停まるから大丈夫.
と言うロジックは,他に故障がない場合にだけ適用可能だ.

例えば,1本のワイヤーが切れた時に,その衝撃により問題のあるワイヤーが一気に切れる.残った2本のワイヤーだけでかごを吊ることになる.その時にブレーキシステムが正しく動作すると言う保証があるとは思えない.

エレベータは,オーチス製である.
安全に関しては,何重にも冗長化設計がしてあると,信じたい.しかし,設計にも製造にも問題がなくとも,運用に問題があれば,事故は発生する.

エレベータは,国家基準により年1回の定期点検が実施されている.点検の機会は年に1回だけではないはずだ.エレベータはしょっちゅう故障している.その度にメンテナンス会社が来ている.

今回の落下事故で改めてワイヤーの点検をして,20本あるワイヤーの内9本のワイヤーに問題が見つかっている.今までノーチェックだったとしか思えない.

今住んでいるアパートは築7年だそうだ.
まともなメンテナンスをしていれば,エレベータがたった7年で,こんなに故障が多発するとは思えない.

メンテナンスとか,予防保全は故障した所を修理することではない.
故障が発生しない様にすることだ.


このコラムは、2013年4月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第304号に掲載した記事に加筆修正しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】