記憶より記録


 先週のメルマガでは,従業員が学習したことを記録することにより,組織の知恵を蓄積する企業文化について書いた.

今週は,上司,指導者の記録について触れる.

従業員のモチベーションに大きな影響を持つ因子に,公平な評価がある.
自分に対する評価に不公平感を感じると,モチベーションが下がり,逆に自分が正しく評価されていると感じると,モチベーションは上がる.

そのため評価を公平にする,公平感があるようにしておくことは重要である.
例えば,達成した業績が数値で計測可能な場合は,公平感を持たすのは簡単だ.また能力も数値計測が可能ならば,公平に評価が出来る.

しかし数値評価が出来ない場合の方が多いだろう.
例えば,「協調性」という能力をどのように公平に測定したらよいだろうか.
あいつは協調性がある;◎
あいつはちょっと協調性に欠ける;△
などという評価をしていたら,評価者ごとに違う結果が出てしまう.なおかつその結果の説明性が,非常に乏しい.これでは公平な評価とは言えない.

つまり公平な評価とは,

  1. 評価者が変わっても,評価結果の誤差が納得できる範囲にある.
  2. 評価結果に対する説明が可能.

評価の再現性と説明性が保証されていれば,公平な評価と感じるだろう.

では実際に「協調性」に対してどう評価したらよいか.
協調性を発揮した場合とられる行動をリストアップする.逆に協調性が不足している場合にとられる行動をリストアップする.

そして普段の行動から,プラス行動,マイナス行動を評価すれば,評価者に依存しない評価の再現性が保てるであろう.そして記憶による評価ではなく,評価対象者の行動を記録しておくことにより,説明性が確保できる.

つまり,上司は部下の行動を記憶で評価するのではなく記録で評価しなければならない.
これは言葉で言うほど簡単なことではない.しかし上司の評価により,部下の収入・生活が変わる.部下に対する評価は真剣勝負でなければならない.


このコラムは、2010年4月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第147号に掲載した記事に加筆しました。

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