2010年4月5日配信のメルマガで「記憶より記録」と言うタイトルでコラムを書いた。行動主義で部下を評価する、そのためには記憶より記録が重要だ、と言う論旨だった。
今回は別の切り口で「記憶より記録」について考えてみたい。
QCC活動などで問題解決のテーマに取り組む場合、正しく課題を設定する事、原因分析により真の原因を発見する事が重要となる。
原因分析には色々な手法があるが、QC七つ道具の「特性要因図(魚骨図)」を描いて安心してしまうサークルが多い様に思う。確かに特性要因図は、問題の原因となる要因を沢山挙げるための有効なツールだ。その要因が真の原因である事を確かめる。今回の原因ではないが、潜在的不具合要因に対策を検討しておく、などの様に活用する事が出来る。
QCC活動の指導をしている企業で、金属表面処理の不良改善に取り組んでいるサークルがある。何時間もかけて表面処理をした結果、不良となる。その間のコストだけではなく、再処理のために金属表面を化学処理で元の状態に戻す時間とコストが必要になる。彼らの目標は数%の改善だが、その年間費用改善効果は数100万元を越えている。(計算は直接損失コストしか含んでいないが、不良ロットの修復にかかるコストや、納期遅延による顧客信頼ロスを含めるともっと改善効果は高そうだ)
初めてQCC活動をする彼らも、特性要因図を描いた所で安心している(笑)
その結果、表面処理設備の真空ポンプと蒸着の陽極電源の故障が主原因と分析した。彼らは今までの経験(記憶)に従って,不具合発生の要因を挙げ、その中から主原因を選択している。やり方が間違っている訳ではないが、証拠を揃えながら原因分析をしなければならない。
彼らは、金属表面処理の専門家ではあるが、設備(真空ポンプや高圧電源)の専門家ではない。彼らが取るべきアプローチは、過去に発生した設備故障の原因と製品不良の因果関係を記録によって調べる事が最初だろう。その結果、何が主要因であるか絞り込む事が出来、更に真の原因を分析する事が出来るはずだ。真空ポンプや高圧電源は彼らに取って専門外の固有技術であっても、管理技術で分析した結果を元に、設備メーカと協力して原因分析、対策検討が出来るはずだ。
管理技術だけで問題解決をする事は出来ない。しかし「記憶」と言う不確かな状況証拠だけではなく、「記録」と言う客観的な証拠を元に管理技術を駆使し固有技術を持っている人の協力を求める。こういうアプローチで改善が出来るはずだ。
このコラムは、2017年6月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第534号に掲載した記事に加筆しました。
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