ある社長の悩み・離職率


 仕事柄経営者の方とお話をさせていただく事が多い.
この方の悩みは作業員の離職である.作業員の離職率は年率で50%ほどに達している.

離職率対策として,近隣の工場より高額の給与を出している.また福利厚生も格段に良い.宿舎は広く一部屋に4人,二段ベットではない.食事はトレーに乗せたぶっ掛け飯ではなく,丸テーブルに座ってちょっとしたレストラン並の食事が出る.年に一回従業員を慰安旅行に連れて行っている.

ここまでしても離職率が下がらない.自分にはもう打つ手が無いというのだ.離職する作業員の理由は「仕事がつまらない」ということらしい.

いくら給与や福利を良くしても仕事に対するモチベーションが上がらなければ,辞めてしまう作業者はいるだろう.ひところのように,お金を稼いで田舎の弟,妹を学校に通わせなければならない,家族の生活を支えなければならないという状況が少なくなってきている.最近は工員さんでも立派な携帯電話を持っている時代だ.

仕事のモチベーションは仕事で上げなければならない.
仕事が楽しくなるのは,仕事を達成し上司や仲間から認められる,仕事を通して自己成長の実感がある,という状況になったときだろう.

既に中国は豊かになってきており,給与をたくさん出して「安全・安定の欲求」を満たしただけでは不十分になってきている.
「人から認められる」「自己実現」というより高度な欲求を満たしてあげなければ仕事に対するモチベーションは維持できないだろう.

従業員の離職に関してはこちらもご参照ください。
高離職率
離職率と多能工化のジレンマ
作業員の離職率


このコラムは、2008年4月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第31号に掲載した記事に加筆しました。

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