継続力


以前5Sの継続力についてコラム「継続力」を書いた。今回は少し違う視点で継続力について考えてみたい。

 事業を起業する事と、経営を継続する事は、異なる能力だと思う。
プロジェクトを起こす事と、プロジェクトで得たモノを継続する力も、異なる能力だ。

5Sを始めたけど継続出来ない。
改善提案を始めた時は皆提案書を書いてくれたが、最近は催促をしても集まらない。
お金をかけてCRMシステムを開発したけれど、営業職員がめんどくさがって使わない。
こんな状況の会社が多い様だ。よかれと思って始めたのに、従業員アンケートをとってみると、不満足要因になっている事すら有る。

うまくいっていない最大の理由は、経営者や経営幹部が率先垂範をしない事だろう。「5Sをやれー!」と経営者が号令をかけても、推進役の品証部長にまる投げでは上手く行くはずがない。経営者も経営幹部も一丸となって取り組まなければ上手く行かない。その上で推進役が機能する。

物理的な障害がある。
営業職員が定時後に帰社し、その上でCRMシステムを開いて報告書を入力する。従業員に頑張りを要求するシステムでは長続きしない。経営者や経営幹部がまず自分で使ってみて、不便な所を修正しなければ使われない。

従業員が、メリットを感じない。
こういう理由で、こうやらなければならない、と言う事を理解させるのは当たり前だ。更にココロで感じるメリットを理解させなければならない。
賞罰制度は効果はないとは言わないが、効果は継続しない。
自分の仕事が、誰かの役に立っている、自分の成長の役に立っていると実感出来る事が、継続のモチベーションとなる。

ある中国企業は、工場見学が有ると職場の班長が見学者に説明している。
見学者は皆経営者であり、自分の父親ほどの年齢だ。その見学者達が自分の説明を聞いて、しきりに感心して帰って行く。当然班長は、その気になり毎日5Sに励むことになる。この企業の経営者はそれが分かっている様で、積極的に工場見学を受け入れている。顧客だけでなく地方都市の役人まで来ると言う。

逆に、他の工場を見せる事も効果がある。
この時の秘訣は、相手の工場の良い所を探して報告する様に予め課題を与える事だ。ただ見学させても、課題が無ければ得られるモノはない。自分たちが優れていると言う思い込みで見学しても、相手のあら探ししかしなくなる。相手の良い点を探すことにより、自分たちは何が足りていないのか考えることになる。

なぜ継続出来ないのか、どうすれば継続意欲が上がるかが理解出来れば、継続は容易になる。


このコラムは、2015年2月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第410号に掲載した記事に加筆しました。

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